257弾 試験のために情報漁ろう
(よかったわね。情報は得れそうね。)
(どんな情報かは気になるところですが。)
「ニシキはん、メムはん。次は買い出しでっか。」
メムと念話術で軽く会話した後、バンナの言うことに軽くうなずき市場へ買い物に向かう。途中、ふと、とある店の前で足を止める。
「ほー、この店って。」
「ええ、スカバツの店ですね。」
(何、素面じゃいられないとか、飲まずにはいられなくなったとか?。)
メムの念話術を無視して、店に入る。
「いらっしゃいませ。」
そう言ってくれる店員に軽く一礼して店の中にあるスカバツ、前世日本でいう酒類を眺める。ここでは酒、スカバツが色々あるのだな。
「持ち帰り用で土産になりそうなものはありますか?。」
「そうですね、こちらなどはいかがでしょうか。」
店員がすかさず答えてくれる。
「ああ、店のショーウインドーに展示していたものですか。」
この外形が目について足を止めたのである。酒瓶が綺麗に絵付けされた陶磁器でカラフルな色合いである。
「ええ。こちら、ラキーテというスカバツの一種になります。この国内の一部地域は少し寒いので、これをストレートで飲んで体を温めるという効果があるのでよく飲まれます。この地域の特産品でもあるのです。」
ラキーテと言っていたが、飲み方を聞くと地球でのウオッカみたいな感じなのかな。それにしてもこの酒瓶、いや陶磁器で出来ているから徳利というのか、本当にいい絵付けだ。朦朧とした感じの山と雪に包まれる小屋の絵か。日本の南画を彷彿とさせるな。
「このラキーテを入れる容器もなかなかいいですね。」
「これもこの地域の特産品ですので。」
誇らしげに店員が答える。
「よし、ここでの試験が終わったら買ってみたいのですがそれでもよろしいですか。」
「予約する形になりますがよろしいので。ところで試験とおっしゃいましたが、もしかするとヘビースネークを倒したりする試験ですか。」
「ええ、そうです。」
「……でしたら、一度実験というかやってほしいことがありまして……。」
急に声をひそめる店員。
「こっちでできることでしょうか。」
「ええ、ヘビースネークにこのラキーテが効くのかどうか調べてほしいのです。もちろん、ラキーテと入れ物はこちらで用意します。これは無料で結構です。首尾よく調べていただければ、このラキーテは実験依頼の成功報酬として差し上げますが、いかがですか。」
思わぬ話になってしまった。
「しかし、なぜまた急にそんな実験の依頼を俺みたいな者に。」
「実は、大昔にラキーテでヘビースネークを倒したという話がございまして。とある冒険者がヘビースネークにラキーテを飲ませてあっさりと倒してしまったというのです。でも大昔の話、実際にそれが可能かどうか、今では詳細な話も不明な点が多くて。ちょうどヘビースネークと戦うような冒険者が当店に来てくださったので、これはいい機会だと。」
「ふーん、この品物の予約はさせてもらいましょう。実験の依頼がダメだったらその商品は俺が支払って買います。うまくいけば支払いはなしということにしますか。」
「よろしゅうございます。ではお名前を。」
「ああ、姓はニシキ、名はダン、と申します。ちょうど10級のランクアップ試験でここまで来ていました。」
「ああ、そうですか。私はこのスカバツ屋イヨイ商店の主人、姓はハイシュ、名はフェカラと申します。では、こちらの引取り証に一筆書き足しますのでこれをお持ちになってください。」
そう言って何やら紙に一筆書き書きしていたが、
「では、こちらを持っていてくれれば。後は実験のためのラキーテを用意しておきますので、昼食後にでも取りに来ていただければ。」
「わかりました。」
俺はそう言って店主に一礼して店を出た。
「「いいの、そんなことして。」」
店を出てすぐに、メムとバンナに異口同音で、かつ小声でそう聞かれる。
「まあ、流れでこうなったのですが、面白そうですし。」
「でも、あの商品、お値段は結構しまっせ。見たら5万クレジットって、かなり高級な値段ですな。」
バンナは目ざとく値段をチェックしていたようだ。
「でもあんな高級なラキーテ買うて、みんなで飲むのでっか?。」
「いえ、お土産です。マーハ商店主のダホンさんへのね。」
「???」
バンナはまだ会った事はないからな、まあ疑問符だらけの表情になるな。
(でも、実験に協力できれば、そして上手くいけば5万クレジットの儲けか。ダンがうまく行く方に賭けたいわね。)
(まあ、試験のためにやれる事はやっておきましょう。)
人目を気にしながらメムとは念話術で会話する。
途中、運良く買い物中の3姉妹と合流して、買い出しを手伝い、宿に戻って昼食となる。
「じゃあ、ヘビースネークの情報が手に入れられそうなのですね。」
昼食後、食後の緋茶を飲みながら、ヘルバティアが明るく声を上げる。
「ええ、この後組合本部に行って写しを受け取ってきます。」
「わかったわ。私たちはドラキャを借りる手筈を整えるから、また別行動になるけど、情報を持って帰ってきたら後は宿で作戦会議ね。」
「はい、で、後もう一つ。スカバツ店で実験の依頼を受けたのでその道具も受け取ってきます。」
それを聞いた3姉妹が怪訝な表情になる。
「なんでまた。」
「実験依頼って何ですか。」
「変なもの持ち込んでくるなあ。」
ヘルバティア、ミアン、ミヤンが次々にツッコミを入れる。
「ヘビースネークにラキーテを飲ませてあっさりと倒してしまったという大昔の話があり、実際にそれが可能かどうか、ちょうどヘビースネークと戦うような冒険者、つまり俺が当店に来たので、これはいい機会だと頼まれまして。」
「へえ、報酬は?。」
俺の説明にヘルバティアが問いかける。
「土産用に高級なラキーテをタダでもらえます。5万クレジットのものです。もちろんダメな場合は俺の負担になります。」
「……ふう、呆れたわ。でもしょうがないか。」
ヘルバティアはなんとか了承してくれる。
「「土産って誰へのですか?。」」
双子妹が同時に声を揃えて俺に更問いしてくる。
「マーハ商店主のダホンさんへです。情報提供とかでお世話になっているので。」
「ああ、なるほど。」
「ふーん、よかった……。」
ミヤンとミアンがそれぞれ異なる反応をするが、納得はしてくれたようである。
そうして、スカバツ屋ヨイヨイ商店へ向かい、店主のハイシュさんから実験用ということで小型の樽に入ったラキーテを受け取る。だいたい1リットルぐらいの量であった。その足で組合本部に行って、普通のヘビースネークより大型だったとかの話もある報告の写しを受け取る。そして一目散に宿の方に戻る。
宿の一室を借りて、報告の写しをみんなで見ることになる。
「うーん、これは……。」
「かなりデカイですね。」
「打たれ強さが半端ない、ということか……。」
ヘルバティア、ミアン、ミヤンが次々にその報告の写しを見て声を上げる。
「これはこのロトトロ山地にいるヘビースネークの群れのボスとか。」
「ヘビースネークが群れを作るとは聞いたことがないわよ。」
俺の推測をミヤンがあっさりと否定する。
「この報告からすると、2匹目が出現したのは1匹目を倒した直後のようですね。」
ミアンが何かメモをしながら言う。
「かなり長期戦だったようね。1匹目でも結構苦戦していたところに2匹目が出て、回復がうまくいかなかったようね。」
これは、ラキーテを飲ませるなんて実験はできそうにないか。
報告を読みながら俺はそんなことを考えていた。
「ダン、何か考えているのかしら。」
メムが何かに気がついたのか俺を見ながら聞いてくる。
「まあ、ラキーテの実験はできるかどうか厳しいかなって思ってはいますが。」
「あら、それ以外にもあるでしょう。さあ、キリキリ唄いなさい。」
躱しきれなかったようで、さらにメムが聞いてくる。
「総力戦になりそうな気がしてまして……。」
俺がそう言うと
「まあ、この報告書からはそう考えておかないとダメね。前に話した警戒役はニシキさんとメムちゃんとバンナちゃんでやってもらうとしても、立て続けにヘビースネークが来た場合も考えないとね。」
ヘルバティアの話を聞きながら最初に聞いたり情報を収集してまとめた、俺なりのヘビースネークについてのメモに目をやりながら思考をめぐらす。
大きさは20マータル以上のものがいると考えるしかない、あの報告書から30マータルちかい大きさとみるべきか、で後は奇襲対策か。メムとバンナにしっかりレーダーのように感知してもらうしかないが、奇襲攻撃の想定をすべきか。それとも出たとこ勝負で感覚的に戦うか。だとしたら、今のうちに試作中の魔弾を使ってみるか、まだ未完成な部分があるが。
自分のメモを見ながら、俺は迷った考えのままで一旦作戦会議は終わる。




