256弾 高難度試験の作戦立てよう?
「まずは、この街の警備隊とかで話を聞くなどして情報を得てみましょうか。」
翌朝、宿の食堂でミアンがそう提案する。
「そう言えば、王都の警備隊で話の出てたパーティはどうなんでしょうかね。まあ大怪我で話ができないのなら無理には聞き出すことはないでしょうけど。」
俺はミアンの提案に同意する形で意見を出してみる。
その日は一日情報収集に励んでみた。
「確かに情報として確実なものはなかったけどね……。」
ヘルバティアが少しぐったりして呟く。
丸一日を情報収集にあててみたところ、噂程度の話でヘビースネークの情報が流れてはいるようだった。だが、大型で頑健なヘビースネークの確実な情報は無きに等しかった。
「こうなったら、ロトトロ山地に行ってみるしかないわね。採集をしなくちゃならないし。」
ミヤンがそう言い出す。
「うーん、迷うわね……。」
ヘルバティアが苦悩の表情を見せる。
「もう一日情報収集してみてはいかがでしょうか。例のパーティをまだ見つけていないですし。」
俺がそう提案するが、
「もうこうなったら、イダーゴンの葉だけでも回収しても良いかもしれませんね。」
ミアンはそう言い出す。
「メム様的にはどっちが良いですか。」
「じゃあ、ダンとバンナと私で警戒して、そのヘビースネークが来たら一番にダンが対処するということにすればいいんじゃない。」
メムはそう言って俺を見る。
「うーん、それはそうとしても……。」
俺には不安材料があって少し言い淀む感じになる。
「何、怖いの、ダンでもビビるのね。」
メムが俺を挑発するように言ってくるが、
「まあ、メム様がどういう言い方で言おうとビビっているのは事実ですからね。」
「あら、またずいぶん弱気ね。」
「メムはん、ずいぶんニシキはんに当たり強いんとちゃいまっか。」
メムの言い方があまり良くないとバンナは思ったのか、メムをたしなめるが、
「いえね、俺が時間を稼ぐとして、採集中の3姉妹にメム様が知らせに行くのがいいか、それともバンナ様が行くのがいいのか。ちょっと迷ってまして。」
バンナは預かりの立場と俺は考えているので、戦闘は期待していないし参加させないようにしたいしな。かといって囮役の効果を持ったままメムに呼びに行かせると、ヘビースネークについてこられてそのまま3姉妹を巻き込むのもな。
「そんなの決まっているじゃない。」
メムが俺の迷いを吹き飛ばすように言ってくる。
「バンナよ。」
「ウチや。」
メムがバンナを指名して、バンナも同時に自分自身が立候補する。
「しかし、バンナが、うーん。」
俺がまだそう言っていると、
「ニシキはん、そんな水臭いこと言わんでください。そんなもんウチが通常モード体型でひとっ走りヘルバティアはんらに知らせてしまえばええだけですわ。」
バンナがそう言って俺を見る。そして続けて、
「預かりやからって遠慮せんと、こんな状況なら、うちの力も使ってくんなはれ。」
そう言われても……。
「ヘビースネークには圧倒的な防御の強さと弱点のなさがあるからなあ。」
「そんな今から迷っててもあきまへん、ここはズバッといきましょう。」
「いいじゃない、私が囮、ダンが主攻撃、バンナが連絡役。バンナも分かっているじゃない。」
俺のいまだ燻る迷いを断ち切るようにメムとバンナが交互に言ってくる。
「あー、あの時の、協働戦で、ニシキさんがやってのけた、オラオライオンをメムちゃんと一緒に、時間稼ぎの戦闘しながらほとんど倒したような感じになるのね。」
ミヤンが思い出してそう言ってくる。あんまり思い出して欲しくはなかったが。
「あー、それね。私も思い出しかけてたところだったわ。」
それが本当かどうかわからないが、ヘルバティアがそう言ってミヤンに相槌を打つ。
「じゃあ、ニシキさん。メムちゃんの言うような形で採集しましょう。合計で12カログラムになるから。ニシキさんの分も取っておきますから。」
ミアンはそう言って、もうこの手でいくことを前提に話を進め出す。
「ふう、俺が戦闘に巻き込まれたら、結構俺の負担が大きいのですが……。」
俺はそうボヤくが、大勢は決したようなものである。
「まあまあ、ニシキはん、そう言わんと。ウチとメムはんを信用してよろしゅうおまっせ。」
「そうよ、バンナもいいこと言うじゃない。」
まあここにきて、メムとバンナが仲良くなりつつあるのはいい事なのかもしれないが。
「ふー、じゃあそれでやってみますか。」
俺も諦め半分でそう了解する。まあ、時間稼ぎ戦法がどういう結果をもたらすかなあ。
「じゃあ、明日から早速採集しに行くのね。」
「ミヤン、気が早いわよ。」
気忙しくミヤンがそう言うのをミアンがたしなめる。
「ニシキさんの言うように、明日も情報収集、と併せて装備等の確認、携帯食糧、回復ポーションなどの資材の買い足しはした方がいいでしょうね。」
ヘルバティアがそう言って、俺の意見も取り入れてくれたのだった。
「じゃあ明後日に出発して採集と退治に向かうと言うことね。」
寝室に戻って開口一番、メムがそう言って俺の右太ももに両前足を乗せる。
「あまり入れ込まないでくださいよ、メム様。」
「分かっているわよ。もし、ヘビースネークと戦うのなら、私の必殺技ラッシュコンボ・テンペストをお見舞いしてやるから。」
「はーっ、なんやごっつすごそうな必殺技でんな。そりゃ是非お目にかかりたい。」
「そう、じゃあ今ここで。」
「ダメですよ。メム様、宿を壊すつもりですか。それにバンナ様もそんな煽らないでください。」
慌ててメムとバンナを抑えにかかる。仲良き事は美しき哉、という先人の名言はあるが、今の状態は、仲良き事は危うき哉、といったところであろう。
「バンナ様はさっき話したように、メムと一緒に偵察行動して、そのヘビースネークと遭遇したら通常モード体型に戻って、急ぎ採集中の3姉妹に通報して戦闘に加勢してもらうことになるのですから。」
「じゃあ、メムはんの必殺技は見れへん……。」
「そんなすぐに必殺技を使う事はないでしょうし、まあ状況によるとは思います。必殺技を見ることよりバンナ様の任務、仕事を完遂してください。」
「じゃあ、やっぱりここでダンを相手に必殺技を発動させてバンナに見せてやるのが。」
「いい加減にしてください。ここで俺を倒したらなんの意味もなくなるでしょうが!。」
メムは計算してボケたのか天然物のボケなのかよくわからないが、ツッコミは入れておく。
「まあまあ、見る機会があればと言うことで。ほなウチはうちの仕事をきっちりしまっさ。」
「……よろしくお願いします。メム様、バンナ様。」
俺はゲンナリしながらそう言っておくしかなかった。
もしメムとバンナが意気投合したら、いろいろとツッコミに忙殺されそうな気がして暗澹とした気分になりかける。
「はい、さあ、じゃあそろそろ寝ましょうか。」
「はーい。」
「はいな。」
翌日、買い足しに行く前に、宿で運よく話の出てたヘビースネークと戦ったという他パーティの情報を得ることができたので、俺とメムとバンナは3姉妹と別行動をとって療養所に行ってみる。しかし怪我の回復具合が思わしくないため、話は聞けないままであった。ただ、このラムノシティの街の組合本部に情報が入っているらしいのでそっちへ向かう。
「いらっしゃいませ。組合本部へようこそ。依頼を探しているのですか。」
受付に立つ20歳くらいの男がそう言って俺に声をかける。
「いえ、その、害獣の情報を探してまして。」
俺はそう言いながら試験従事証明書を見せる。
「ああ、なるほど。となると、昨日仕上がったあの報告か。戦闘交響楽団のパーティが苦闘したあの情報かな。」
「普通のヘビースネークより大型だったとかの話を、王都の警備隊本部で聞きましたものですから、詳細な情報があればと。」
「かしこまりました。閲覧しますか。それとも写しを持ち帰りますか。写しの持ち帰りは時間と料金の5000クレジットが必要になりますが。」
「写しの持ち帰りを。」
そう言って料金を先に支払う。
「では、昼食後に再度来ていただければ。」
そう言って、引き渡し証と書かれた小さめの紙を俺に渡す。
「ではまた伺います。」
俺はそう言って組合本部の受付から離れた。




