252弾 みんなで楽しく買い物しよう?
翌日、
「さあ、私がバンナちゃんに似合う、いい飾り物を探し出してあげるわよ。」
ミヤンがそう言いながら、気合満々でバンナをしっかりと胸に抱いて下宿先の玄関を出てくる。結局、体型が変わって通常モード体型になったとしてもなんとかなりそうな物が俺とメムとでは思いつかなかった。仕方がないので、3姉妹に相談をしてみるとミヤンが気合満々となり、こうなってしまったのである。
「いやー、バンナちゃんのための買い物、チョー楽しいな。」
ミヤンは俺が今まで見たことがないくらいハイテンションである。
「まあ、今日はバンナ用の装飾品を探し出すのが主眼ですからね。」
俺はそう忠告するがミヤンは全く聞いちゃいない。バンナを左肩に乗せた状態で、
「ああ、自分の貯金を全てぶっ込んでもいいから好きなものを選んでちょうだいね。」
「いや、あの、そこまでは、お気持ちだけで十分で……。」
「いいのよ、遠慮なんてしなくてはいいわ。」
ここにメムやヘルバティアやミアンがいればよかったが。
昨夜の夕食時、
「ふーん、バンナちゃんと一緒に買い物、え、ニシキさんに着いていくだけなの。いいわよ、この準備で忙しい時にね……。」
「ティア姉さん、その代わりと言っては何ですがメムちゃんをティア姉さんに預けるから。」
「いや、飼い主の俺の意見は……。」
「まあそれなら許してもいいわね。」
「ニシキはん、ええんでっか。こんな話の進め方で。」
バンナがツッコミを入れるが、
「バンナの買い物費用は全額私が負担します。ですから、ですから、ニシキ様、私も買い物に連れて行ってください。ティア姉さんにメムをあてがう許可も下さい。そうすれば私はなんでもニシキ様の言うことを聞きますので。」
ミヤンが食事中に俺に土下座して頼み込んできたため、ものすごく困惑してしまったのは事実である。しばらくスルーしていると、
「バンナの買い物費用は全額私が負担します。ですから、ですから、ニシキ様、私も買い物に連れて行ってください。ティア姉さんにメムをあてがう許可も下さい。そうすれば私はなんでもニシキ様の言うことを聞きますので。」
と土下座のまま、早口になって呪文を唱えるかの如く同じセリフを繰り返し繰り返し言うものだから、
「も、もうわかりましたから。でしたら、メムにも聞いてみましょうか。」
俺がうんざり気味にメムに振ると、
「別にいいわよ、ええ、ええ、いいわよ。最近、ダンの私に対する扱いも悪くなってきている気がするし、ヘルバティアと一緒に準備の手伝いしてあげるから、ねー、ヘルバティア。」
「もう、メムちゃんったらー、いいわよ。今からでもさっさと行って来なさい。メムちゃんと一緒に遊んでいる、いや、準備しているから。」
メムの返答にヘルバティアも欣喜雀躍する。
「ティア姉さんもミヤンも、もういい加減にしてよ!。夕食が終わらないじゃないの!!。」
ミアンが呆れ返った様子で2人をそう叱咜する。
「飼い主の立場はどうなってるのでしょうか……。」
「ニシキはん、苦労しまんな。」
ため息をついた俺をバンナが慰めてくれた。
「うーん、メムの時もそうだけど、なかなかいい物が見つからないな……。」
「すんません。ニシキはん、ミヤンはん。体型が変わると、首輪だと危険になるかもやし、……しかし、ミヤンはん、そんな買い込まんでもいいんとちゃいまっか?。」
「いや、節約モード体型の時に付けて、通常モードの時は壊れてもいいかなって思って、買ったみたんだけど……。」
ミヤンが済まなそうに呟く。節約モード体型用の首輪とかで考えたのかもしれないが、多分無駄な買い物だろう。
「うーん、そないに言われても……。」
バンナもちょっと引いている。
しかし、体型が変化するのならそれに合った物って、うーん。ミヤンの買い物は今の状態のバンナに飾りつけたいと言う欲望を感じるというか……。ミヤンの買ったものを見ながら脈略なくそんな考えになっていると、
「あんまり、そないに考え込まんでも……。」
バンナが俺の目の前をふわふわ飛びながらそう言ってくれるが、そのバンナの表情を見たあと、前足を見て爪を見て……。
「そういえば、その角は通常モード体型でも、変わらなかったのですよね。それに爪、その爪を。そうか、それもいいかもしれない。」
これならイケるかもしれない。
早速買い物を終えて、下宿先に戻ってくると、バンナとミヤンをリビングダイニングで何かしているメムとヘルバティアとミアンに合流させておき、俺は自部屋に戻る。すぐに荷物を置いて買って来たものを持ってリビングダイニングへ行き、それを使うことにする。
「え、ニシキさん。それは、カラーネイル兼補強剤、ですか。」
もしかするとこれならイケるかもと思ったのが、前世でいうマニキュア。この世界トゥーアールではカラーネイル兼補強剤という。色付きのものがあるので、爪の色を塗り替えることのできると同時に爪の補強もできる代物。
「確かにそういうのはあるけど、ニシキさんと私とで一緒に選んで買うなんてね。」
そう言いながら、ミヤンがそのカラーネイル兼補強剤を買ったことを思い出しているようだが、それを聞いたミアンが、
「ミヤン、それはどういうことかしら。」
ミヤンに詰め寄る。メムが、
「へー、ミヤンは、バンナとダンと一緒でとーっても楽しかったのね。」
と言ってきて、ミアンとヘルバティアの顔色が変わったようだ。
「ミヤン、なんかちゃっかりしていない。そう思うわよね、ミアン。」
「ええ、ティア姉さん。ミヤンに何か制裁を。」
「ちょ、ちょっと待ってよ。私はバンナの装飾するものを何か見て来ただけですからー。昨夜からそう言ってたじゃないのよ。」
「ははーん、それを大義名分にしてたのね。」
「ミヤン、最低ね。メムちゃんで私を買収したのね。」
「ダン、ダン。さあ、面白いことになってるわよ。ねえ、ダンってば。へ、何してるの?。」
そんな会話を無視して、バンナに頼んで、うまくふわりと浮いて飛行して空中停止してもらい、まずは角にカラーネイル兼補強剤を塗ってみる。角全部は塗らずに、上半分を白く塗る。そして卓上に降りてもらい、前足の爪にツノに塗ったものと同様の物を先っぽから半分塗ってみる。
「除去剤は買っていますから、一度庭に行きまして、通常モード体型になってもらえればありがたいです。バンナ様。」
「ふーん、こんな物があるんかー。まあ、行ってみましょう。」
俺は手鏡を持ってバンナと一緒に庭へ向かう。その後を追うようにミヤンとメムが、少し遅れてミアンとヘルバティアが続く。
庭に出て俺は、
「バンナ様、じゃあこの辺で、はい。通常モード体型になってみて下さい。」
ボワン
前に体型が変わった時のように白煙が上がり、ホードラくらいの大きさになる。
俺はその状態でのバンナの角を見て、前足の爪を見る。どうやら問題はなさそうだ。
「バンナ様、何か異常とか変な感じだとはみたいなことはありますか。」
「別に異常はないで。ああ、こういう風になってるのか。」
俺が手鏡でバンナの状態を映してあげる。
「試しに塗ってみたのですが、角と爪はどうですか。もう少し見栄えを変えるのなら塗り直すなりしますが。」
「いやいや、これで今は十分や。識別みたいになるしな。首輪とかよりずっといいし、体型変化で壊れたりを気にせんでいいしな。」
バンナはご満悦なようである。
「じゃあ、節約モード体型に戻って下さい。」
「ほいな。」
ボワン
白煙が上がって小さくなって節約モード体型に戻る。
「どうですか、異常はありませんね。」
「ああ、おおきに。塗ることで飾りと識別になるとは思いもしませんでした。また今度、別の色も塗ってみたいな。ダンはん、ほんまにありがとう。」
「はい、じゃあ爪や角に塗るその役は私が。」
ミヤンが手を挙げて立候補を表明した。すると、
「いえ、ミヤンだと公私混同しかねないので、私が。」
ミアンが対立候補として立候補を表明したのだった。
「いえ、ここは長姉として私が。」
「はい、もう結構です。俺がその役をしますから。また3姉妹喧嘩は懲り懲りですので。」
俺は全力で3姉妹の立候補を却下したのだった。




