251弾 高難度試験の前に何を買おう?
「で、試験のことはだいたい分かったんやけど、そんな難しい試験かいな?。」
バンナが俺とメムの間をフワフワ飛び回りながら俺に聞いてくる。
「まあ、試験が3つをやるようなもので。3ヶ月以内に、強獣ごうじゅう15体以上もしくは狂獣2体以上を退治すること、イダーゴンの葉を1人あたりで3カロガラム集めること、組合本部長及び警備隊総隊長の推薦する者と戦闘で勝つこと。これをクリアすれば10級のランクアップ試験に合格となります。」
「イダーゴンの葉って、あのクソ獣がおるとこやろ、棒みたいな。」
「バンナ、何か分かってるの、クソ獣って言うけど。」
「ヒューマーが言うところの、………確かヘビースネークとか言うとる獣のことでんな。」
「うーん、バンナ様はそのヘビースネークを見たことがあるとかですか。」
「ああ、オトン、オカンと一緒にいた時にですわ。何か陰険な感じで、ウチを狙ってきやがって。まあ警戒しとったから、サクッとかわしたったのですが。」
「へえ、で、親御さんと一緒に逃げ出した、ということですか。」
「せやけど、こっちもただ逃げただけやないから。オトンとオカンが交互にそいつしっかり狙って上から奴頭しばき倒したけどな、まあウチも参加したけど、そうやって攻撃となるとあいつ、トグロまいて奴頭隠しよって、結局どっか逃げていきよった。」
バンナの説明で、俺はヘビースネークの情報と一致してることに納得する。
「しかし、何か癖の強い訛りね。」
メムがそう言い出す。
「メム様、そんなこと言ったら、メム様が女神として世界のあちこちからの死者を迎えていた時って、いろんな言語で会話してたのですから、訛りのことはあまり言えないのじゃないですか。」
「う、まあ、そうね。」
「もしかすると、そのうち訛りが変わるかもしれませんから。」
メムを納得させると、
「一つ思ったのですが、戦闘の時は、バンナ様は節約モード体型から通常モード体型に変わったりするのですか。」
「まあ、危ない時とかは通常モード体型に変わるわな……。それで戦うけど、その後、腹が空きまくりになるのがな……。」
「へえ、そうですか。」
「まあ、今のウチの通常モード体型やったら、ニシキはんとメムはんを乗せて飛び回るのは余裕やな。あんたら背中に乗っけてヒュンヒュン飛び回れる。」
「じゃあ、さっき話に出ていたヘビースネークは、その前足の爪で掴んでとかは。」
「あれは……流石にゴツすぎて無理やな。」
俺はそれを聞き、節約モード体型のバンナを見ながらヘビースネークとの戦闘について考える。というか頭の中でシミュレーションしてみる。
「ねえ、ダン。ダンってば。あら、何か考えに耽ってるわね。」
「ああ、今考えることもなかったか、失礼。」
一旦思考に耽るのを止める。
「まあ、ニシキはんならヘビースネーク相手にやってくれはるかもしれへんなあ。ウチも手を貸しまっせ。」
「よく言うわよ。そんな手と足で。」
「メムはん、言葉の綾や。」
メムとバンナが角突き合わせそうになるので、
「メム様、バンナ様、ちょっと。バンナ様は預かりの立場なので、戦闘には参加しない方がいいでしょう。偵察役くらいならお願いするかもしれませんが。」
2匹を抑え宥めながら、バンナを戦闘に参加させない方針を示す。
「うーん、そりゃ殺生やで。預かりの立場やからってそんな遠慮せんでもウチはじゃんじゃんやったりますんで。」
「私もそう思うわ。そんな弱いとも思えないし。」
バンナとメムがそう言って俺の方針に異を唱える。
「いや、戦いになると節約モード体型から通常モードになるのですよね。で、その後の空腹を満たすために食事の量がということを考えると、というのがまず一つ。それに。」
「それに、何でしょうか?。」
「まだ、バンナのご両親に挨拶も話もしていない状態で、いきなり戦闘で怪我を負わせたら、ということもありますので。」
「ああ、そう言われれば……。」
バンナが納得はする。続けて、
「まあ、気を使うてくれるのでしたら、今はそうしまっか。まあ、ウチが怪我したのを知って、オトンとオカンが暴走する可能性も無きにしもあらず、かもしれませんしな。」
やっぱりな、バンナの両親がえらく捲し立ててきそうな気もしたからな。
「暴走ね……。」
メムが渋面になり呟く。そして、
「ねえ、私は、早くこのバンナのご両親に会った方がいいのだと思うけど。ダン、どうなの。」
と聞いてくる。
「まあ、そうでしょうが、バンナ様はご両親に居場所を知らせる手段はあるのですか?。」
「……うーん、結構自由にあちこち飛び回っとるさかいになあ。……まあはぐれたのに気が付けばそのうち探し回るやろうけど……。」
こりゃ当分難しいか。
「まあ、うちの仲間とかが知らせてくれるかもしれへんし。仲間の匂いは分かるんで、その時に仲間に会って知らせることはあるけど、入れ違いもあるやもしれへんし。」
「まあ要は、バンナに両親とは連絡する手段はない、ということね。」
メムが渋面のままそう言い切る。
「メムはん、そんな言い方はちょっと。手段はないかもしれまへんが、伝手つてはおますさかいに。」
「そんな偉そうな顔で言われても。」
「まあ、こうなったら気長に待つしかないでしょう。メム様。」
また角突き合わせそうになるので、話をまとめておくことにする。
「それにフォグコリンを益獣として飼ってる話も広がれば、バンナのご両親の耳にも入るかもしれないわね。でも、このバンナを狙ってくる者どもも出現するかもしれないけど。」
メムの指摘には俺も、
「そうですねえ、あのファチオア商店みたいに……。」
そう言わざるを得なかった。
「そうよ、私を狙った時みたいな。私とバンナの両方を一気にさらおうって考える奴は絶対出てくるわよう。……そんな冷たい目で見ないで、ダンもバンナも。……まあ、私が先を考えず飼うとか言って、結果ダンに無理させたのは悪かったと思ってるから。……だから、そんな冷たい白い目で私を無言で見ないで。」
「……今更だ、と言うしかないでしょう。バンナをまた捨てるわけにもいかないですし。」
俺もメムの発言に呆れと驚きを含んだ目で見てあげたことで、メムも反省はしているようだと判断する。
「……ほんまにこれが女神だったとは……。パチモンやないやろか……。」
バンナは呆れ果てた目でメムを見ながらそう呟き、ため息をついた。
「ねえ、パチモンって、どう言う意味だっけ。」
「まあ、それよりも。」
「パチモンって、何。」
メムがしつこく聞いてくるが、本当の意味を教えると多分危ないので、
「何がともあれ、益獣として飼われるバンナ様に首輪みたいなものを探しますか。」
「ああ、私みたいに首輪をつけるのね。」
俺が今後のこともあるので、まずはバンナに首輪みたいなものを探すことを表明すると、メムも納得する。
「何か贈ってくれるのはありがたいのですが、首輪はちょっと………。」
当のバンナがやや不満げに言ってくる。
「何、バンナ、贅沢言っちゃって。せっかくのプレゼントよ。つべこべと文句言わずに受け取りなさいよ。」
メムは、バンナが言った『パチモン』の意味を知らないはずだが、いいことを言われてないのは直感的に理解したのか、妙に棘の含んだ言い方でバンナに対して厳しい口調で言う。
「ニシキはんの心遣いはホンマにありがたいです。メムはんにそないにキツう言われても、ただ、首輪とか身につけるものはちと問題が。」
「へえ?、問題って。」
メムが飛びかからんばかりにバンナをにらみながら詰め寄ると、
「いえね、ウチの体、節約モード体型から通常モード体型に変わると、節約モード体型の状態で首輪とかみたいなもんつけていると……ダメになりますんで。」
「あ。」
「ああっ。そうかー。」
メムも俺もそこに全くと言って良いほど気付いてなかったのである。
「だから、身に付けられるものは、なかなか無くて……。」
と実に申し訳なさそうにバンナが言ったのだった。




