236弾 魔術について情報もらおう
「まず、他人の魔法について詮索しないとか立ち入らないという理由ですが、諸説いろいろありますが、……はっきりいえば、あの戦争が原因といわれています。」
ヘルバティアがそういって説明を始める。
「あの戦争、というと、『喪失戦争』とかいうことですか。」
俺が念入りに確認する。
「ええ、ですが喪失戦争については今は話がいっぱいあって、これだと断言できる話があまり少なかったりするのが現状です。」
「まあ、この戦争について書かれた記録は散逸してばっかりだし、時間が立つにつれて正確な話が伝えられなくなってきたのだからかなあ、私たちもこの戦争についての教本が三冊ぐらいあってそれで学んだんだけど。」
ミアンとミヤンのこの話を聞く限りだと、大変難しそうな話だろうな。
「ああ、ここで喪失戦争についての歴史話は省かせてもらうわよ。とてつもなく長くてね。」
ヘルバティアがそう言ってくる。まあ1000年前の始まりから500年目のロストエリアの誕生まででもかなり長いからなあ。俺もメムもこの戦争についてある程度の知識はあるから、長い歴史話だというのは理解できる。
「他人の魔法について詮索しないとか立ち入らないとなった理由には、まず、一説には生存のためにという理由。もう一説は、魔術の体系がバラバラになってしまって複雑になったからという理由、最後のもう一説は、精霊神の定めという理由。この3つが主に言われています。」
ミアンがそう説明してくれる。
「でもミアン姉さん、今言った3つが主な説であって他にもいろんな説が出てきては消えてでしょう。」
「ミヤン、それを言ったら終わらなくなるわよ。」
「ああ、十分ですよ。俺もある程度は調べてきましたから。でも情報が制限されていましたからね。図書館でも閲覧できなかった方が多いのですよね。」
まあそれだけ聞けば十分だろう。
「でも、意味がわからないのは、生存のために他人の魔法について詮索しないという説なのが疑問なのよね。生存のためには詮索したほうがいいのじゃないのかしら。」
メムが疑問を示す。
「俺は何となくですが分かります。多分、他人の魔法を詮索しすぎて、かえって命を狙われたりしちゃった。そんなことがあったからじゃないですか。知りすぎたものは消すみたいなことでしょう。」
「なんか物騒すぎる理由なのね。」
「それに、相手の魔法を分析して対策を練って相手の弱点の魔法や攻撃をするということでしょう。この3姉妹の話を聞いた限りですが、戦闘に入れば相手の実力を見極めて、攻撃を読みあって戦うような感じですよね、そう思いませんか。メム様。」
俺とメムの会話に感心しながら聞き入る3姉妹だったが、
「まあ、それもいいのですが、こちらも私たちが使う魔法について話しましょう。」
とヘルバティアが話題を変えてくる。
「ああ、そうですね。」
「とは言っても、一度、トテポの滝で私たちの魔法の発動を見ていますからね。」
とミアンがにっこりしながらそう言ってくる。
「双子のコンビネーション魔法にヘルバティアさんの光属性魔法の組み合わせですね。」
「まあ、あれを使うにはね。」
とミヤン。
「あんな大魔法はそうそう使えるものじゃないし、あんなに大人数を相手にすることもないからね。それにあの魔法は魔法式の展開とかで発動に時間がかかるものだから。発動のための条件を整えて初めて使えるものだから。」
ヘルバティアが説明してくれる。
「確かに俺の魔法の発動が早いからか、他の者の魔法の発動が遅く見えますが、それはやっぱり魔法式の展開、杖への魔力の注入、というプロセスがあるからそうなるのですかね。」
「あら、話が早いわね。まさにニシキさんが言った通り魔法の発動についてはその流れで認識していいと思うわ。高速発動のできる者はそれらのプロセスが速いのよ。」
「大魔法を発動するには、魔法式の展開も、杖への魔力の注入も時間をかける必要がある。それは、魔法式も膨大な量の式や図を展開するし、魔力の量も多くなるから時間がかかるためですね。」
「……異世界人ってこんな把握力あったのかしら、驚くわ。ほぼその通りだから。」
「あとは杖の材質でも違いが出てくる。いい材質な杖は威力の高い大魔法を使えるようになる、ということですね。あとは、魔法の体系がバラバラになって複雑になったいう説から思ったのですが、ある程度魔法の属性や力や効果、威力を分析すれば体系化できるものもあるのではないですかね。」
「まあ、それはいろんな魔法使いや学者が研究していることね。それまで知っているなんて。」
「いや、調べていた知識とか情報を分析してみたからでしょう。」
「ふーん、……ニシキさんって、本当に何者なのかしら。この人の頭の中を見てみたくなるわ。」
俺とヘルバティアがそんな会話をしていると、ミアンから、
「あのー、ミヤンが会話についていけなくなってきてます。」
と言われて、ミヤンを見ると、
「あー、ごめん。私には今のティア姉さんとニシキさんの会話が何をどうしたのかよくわからなくなってきた。」
そう言って頭を両手でかきむしったのだった。
「ところで話が横にそれた気もするけど、ヘルバティアらがどんな属性の魔法を発動できるのか教えてもらっても。」
メムがそう尋ねてくる。
「ああ、そうね。私は光属性と風属性魔法よ。」
とヘルバティア。
「私は火属性と土属性ね。」
とミアン。
「水属性と闇属性。」
とミヤン。
へー、3姉妹で全属性使えるってことか。
「でも、そんな話をしてもいいのですか。立ち入りすぎたような気もしますが。」
俺がそう懸念を示すと、
「いいわよ、ニシキさんの全属性使える話を聞いたのだから。それにパーティメンバーとして知っておけば今後戦闘とかに役に立つから。」
「分かりました。あともう一つ聞いてみたいのですが。」
「「まず昼食にしましょう。」」
俺とヘルバティアの会話にメムとミヤンが同時にそう言ってハモりながら割って入る。
そろそろそんな時間になったのか……。
昼食を終えて、話を続けることになる。
「さっきはちょっと止まったけど、じゃあ魔道具についての話をするわね。まあ、あまり流通しているものばかりではないけどね。」
「ああ、まあ、俺は魔道具に魔力を流して壊してばっかりでしたので……あまりいい印象というか、何というか。でも以前、侵入者の感知用に使っていたのがありませんでしたっけ。」
「ああ、そうね。まあ魔道具は基本、魔法の発動というより、流し込んだ魔力を増幅させたり、低威力の魔法を発動させ続けたり、というような形で使われることが多いわね。」
「以前、魔道具の試作品、確か腕輪か何かを、魔力の流しすぎて壊してしまったことがあったのですが、それも魔道具なのですか。」
「装飾品でそういう物はあるけど、ニシキさんが言った魔力の量が一気に流れ込むような状態の者だと壊しちゃうかもしれないわね。少しずつ魔力を流すことで魔道具は動くから。」
「ふーん、なるほど。やっぱり合わないということか。」
「まあもっといい魔道具もあるというから、ニシキさんに合う魔道具も出てくるかもしれないわね。」
俺は首を捻り、会話を止める。
「ああ、そうでした。ロストエリア喪失域には古代のレア魔法とかレア魔道具が埋もれていて発見されればものすごい大金持ちになれることも。」
とミヤンが話してくれる。
「ロストエリア喪失域から無事にレア級発見物を持ち帰るのも難しいのだけどね。」
ミアンがそう補足する。
「なるほど、だから冒険者ランク10級のランクアップ試験を、こんな特訓までして受験することになるのですね。」
俺がそう言うと、ヘルバティアら3姉妹がうなずく。
「まあ、私とダンの理由は、ロストエリアに行って、元の世界に戻る手がかりを得て戻るためなのが一番の理由だけど……。」
とメムが口を開く。
「まあ、魔道具にもピンからキリまであるものですから、個人の能力値を少し上昇させたりできる魔道具から、魔石と一緒に組まれたものまで、ああ、ちなみに組合本部で最初に本人登録証を作った時のあの装置も魔道具ですけどね。」
ヘルバティアがそう教えてくれる。
「ええっ!!、そうだったのか……。」
俺が驚くと、
「どうだ、すごいだろう。」
とミヤン。
「別にミヤンが自慢気に言う話でもないでしょうに……。」
と呟くミアン。
俺は思わず吹き出した。




