235弾 魔術について情報出そう
「え、ファイヤーボールをイメージして何かおかしなところがあるのでしょうか?。」
俺が3姉妹の反応にかえって驚いてしまう。
「いや、ファイヤーボールって……。」
「最も初歩中の初歩の魔法の1種類ですよね。水属性だとウォーターボール、風属性だとウインドボール、というようにボール系魔法は初歩中の初歩だけに覚えるのも簡単ですが、威力もそうそうあるものではないはず……。」
「そんな初歩中の初歩な魔法からあんな威力の魔法が発動できるのは、まあ異世界人ということで片付けてもいいのだけど。」
3姉妹がざわつく。
ああ、こりゃ収拾がつかなくなってきたかな。
「ねえ、ダン。魔弾の話もするの?。」
「いや、この状態でそんな話しても、かえって混乱に拍車をかける気がします。」
ひそひそ声でメムと話するが、
「ねえ、やっぱりその短杖がその魔法発動の威力を生み出しているのかしら?。」
ヘルバティアが腰につった拳銃を見ながら尋ねてくる。
「まあ、威力を生み出しているのは、多分……、俺とメムが異世界人だからでしょう。」
「え、ずいぶん乱暴な答えね。」
ずっこけるミヤン。
「まあ、ダンも最初はファイヤーボールの魔法式を読み込んで図書館とかから書き写して魔法発動をさせようとしたのだけどね。うまくいかなかったのよね。」
「ええ、それで俺のいた世界で使われていた言語を活用しました。」
「それってどんなものなのかしら、見せてもらってもいいのかしら。」
メムと俺の話にミアンが興味を示す。
「うーん、まあ紙に書けばこんな感じです。」
そう言って俺は縦書きで『火球』と書いた漢字を3姉妹に見せるが、
「何これ……。」
「へえー………。」
「よくわかんないものね……。」
まあ、日本の漢字をこんな異世界でお披露目することもないから、初見の者にはちょっとわからないものかもしれない。
「まあ威力の元はこれだというのはわかったけど。」
「何かスッキリしない感じね。」
ヘルバティアとミアンがいまいち理解しきれないといった感じでいるが、
「こうか、こう書くのか。」
ミヤンはその文字を見ながら必死に別の紙に書き写してみようとする。だけど残念ながら、
「あー、もうっ、うまくいかないっ。」
あっさり諦めることになる。
「まあ、初見でそう上手には書き移せないと思いますよ。それに俺がこの形で魔法式を形成して魔法が発動できるということは、やはり俺が異世界人だからという結論になってしまうのです。」
「まあ、そう言われるとね……。」
「確かに筋は通っているし。」
ヘルバティアとミヤンはそう言って納得する。
「でも、異世界人が独自の魔法式とはいえ、この世界でこんなふうに魔法を発動するなんてすごいですね。」
ミアンは感心してくれる。
「やっぱりじっくりと見てもいいかしら。その腰にある短杖を。」
ヘルバティアがそうせがむ。
「うーん、じゃあちょっとだけ待って下さい。」
俺はそう言って弾倉が空なのを確認をしてからヘルバティアに渡す。
「人の短杖とかなんてあまりじっくり見ることもないし、父さんと母さんの杖を見て以来ね。」
ヘルバティアはそう言いながら手に取ってまじまじと眺める。
「これは、もしかして、教本で読んだり話で聞いただけなのですが、あのリルンコムなのですかね、武具にも魔道具にも使われるという最高級金属の。」
ヘルバティアの右側から覗き見ながらミアンが少し興奮気味に語る。
「しかし、金属製の杖なんて聞いたことも見たこともないわね。いや、伝説の杖はそうだったけ……。」
同様に左側から覗き見ながらミヤンが己の知識を掘り起こしながら呟く。
「ねえ、さっきこの杖の出っ張った筒に空いた穴を見てから渡していたけど、この穴がニシキさんの魔法に何か関係するのかしら。」
ヘルバティアは何か気がついたようである。
「もしかしてこれで魔法を発動させることになるのかしら、あれ、でもこれは動かないわね。」
「ああそこは触らないでください。」
ヘルバティアに代わって拳銃を触り出したミアンは引き金に手をかけて引いてみるが、俺からの注意を受けて、交代してミヤンに触らせる。
「ふーん、この部分はぶん殴るのに使えるなあ。」
ミヤンは銃把を触り、銃床を触ってから銃身を握り少し振り回してみる。
「まあ、触ってみたいのは分かるけど、あまり乱暴には……。」
「メムちゃんのいう通りね。あまりこれ以上、他者の杖を無遠慮に触るものじゃないわ。」
ヘルバティアがそう言って俺に拳銃を返す。俺は目視でチェックしてから腰のホルスターに収める。
「ふう、じゃあ俺の魔法については何かわかったのかどうかは知りませんが、他言無用に願います。あまり説明できるものでもないでしょうし。」
俺がそう言うと3姉妹は一斉にうなずく。
「前にニシキさんとメムちゃんを襲撃した時に、ニシキさんが私に向かって火属性魔法を発動させて撃っていたけど、もしかすると、魔法の発動は任意のタイミングでできると言うことなのかしら。」
「ティア姉さん、この短杖には高速発動の技術とかを含んでいるのかもしれませんね。でもそうなると、高速発動で魔力を使っていくと体力も持たないのでは。それにそんな上手い話もなさそうな気がしますね。」
「本当、私たちの教わったり学んできたり調べてきた魔術の知識を覆すというか全く違う概念な感じね。」
3姉妹が三者三様の推測と感想を述べる。しかし、ここまで分析されると怖いな。
「さっきも言いましたように俺の魔法については他言無用に。ああ、特にあの師匠にも喋っちゃダメですよ。」
ディマックの大師匠にバレたらもっとややこしくなりそうだしな……。3姉妹に釘は刺しておく。
「ダン、この際あなたの魔法発動の条件を話しちゃえば。」
メムがそう言い出す。
「そうですね。まあでも、よく分析してますね。ヘルバティアさんもミアンさんもミヤンさんも。条件といっても何ですが、俺の場合、基本六発の魔法を発動させるとしばらく続けて発動できない、ということですね。」
「じゃあ、六発の魔法を発動させたところを一気に接近戦にしてしまうか、こっちの魔法を発動させちゃえば、あ、でもその話をするということは……。」
俺の魔法発動の条件を聞いたミヤンがすかさずそう言い出すが、途中で何かに気がついて言い淀むことになる。
「ミヤン、ニシキさんがその話をしたということは、その対策も考えているということよ。ですよね、ニシキさん。」
とミアンがミヤンをたしなめつつ、俺にも確認をしてくる。
「いえ、まあ、試してみてもいいですが……。」
接近戦の対策はまあかなり考えているが、魔法を発動させてこっちの装填中に狙い撃たれると厳しいのは事実であるが、それなりのハッタリもかましながらそう言ってみる。
「やっぱりニシキさんの戦い方は一気の強襲による短期決着のような感じね。パーティのメンバーとして考えるならやっぱり先鋒役が一番ね。」
ヘルバティアがそういってこの話を結論づける。
「やっぱり俺とメムが先鋒役、次鋒役で、ミアンとミヤンがリーダーと俺を繋ぐような感じの役かつリーダーを守る役もということですね。」
「そうね、フォーメーションとしてはそれがやっぱりベストよね。」
俺とヘルバティアの会話に双子妹もメムも大きくうなずく。
「でも、ニシキさんはまだこの世界に慣れていないというかわかっていないことも多いですよね。どうですか。」
ミアンがそう言って俺の顔をじっと見つめる。
「まあ、それは否定できないですね。ロストエリアについての知識も少ないという感じですし、それに他人の魔法についてあまり詮索しないのは何故かなあというのもありますし。」
俺がそう言うと、
「まあこっちも私たちの使う魔法についての話も含めて、魔術について実際のところを話してみてもいいでしょうか。」
「ミアンの意見に同意するわ。」
「私もティア姉さんとミアン姉さんと一緒に話するわ。」
ということで、3姉妹によるこの世界トゥーアールでの魔術についての実情をまずレクチャーしてくれることになった。




