227弾 この混乱した戦いを鎮めてみよう
「やっぱりあの策がかなり効いているのでしょうか。」
誰ともなしにミアンがそう尋ねる。
「すみません、俺の思った以上に効果があり過ぎたようです。」
塔の出入り口で少し顔を出し外の様子を伺いながら俺がそう答える。
メムにボーナスポイントの証を塔の3階の窓から外に放り投げさせたが、その証を巡っての混戦状態になっているようだ。
「でもこのまま、この塔でじっと待つつもりですか?。」
ミヤンが俺と同様に塔の外を伺いながら俺とヘルバティアに聞いてくる。
「私としてはこのまましばらく様子を見ていてもいいようだと思いますが、ニシキさんの意見はいかがですか。」
ヘルバティアが俺に意見を求めてきた。
「俺としても、ヘルバティアさんの意見に同意します。用心のために、ここで俺とメムはしばらく見張っていますが、他の方はあの倉庫を休息場所にするのはどうでしょうか。」
俺はそう言って、曲がった先にある倉庫らしき部屋を別目的に使うことを提案してみる。
「いいのですか。」
とミヤン。
「簡易キャンプセットはあるのですよね。外でいるよりは少し安全でしょう。」
「そうね、この状況しばらく続くと私も見るわ。」
メムがそう言って俺の意見を支持してくれる。
「じゃ、しばらく休憩するわ。何かあったら知らせてね。あとニシキさんとメムちゃんにも、ちゃんと休憩をとってもらうから。」
ヘルバティアはそう言って、1階奥のかつて携帯食糧やらが入っていた倉庫を休憩場所にして休むことにする。
結局交代交代で、塔の出入り口で状況を見張っていたが、塔の周辺では夜を迎えて、どうやら一時休戦状態になったようである。
「ふぅ、みんな引き上げて行ったみたいね。」
とメムがため息まじりに呟く。
「私たちも夕食にしましょ。はいメムちゃーん。アーン。」
そう言うや否や、ヘルバティアが早速メムに携帯食糧を自分の手で食べさせてあげる。
「……ニ、ニシキさん、………アーン……。」
「ミアンさん、俺はグランドキャットじゃないので……。」
ミアンがいきなり俺の口元に携帯食糧を掲げてくるので、俺も困惑しながら首を左右に振って断って、自分の分を口に放り込む。
「ミアン姉さん、何してるの?……。」
ミヤンが俺とミアンを疑惑の目で眺めながらそう尋ねる。
ミアンが無言で俺の口元に掲げた携帯食糧を自分の口に放り込み、一気に水を飲みそしてむせこんでしまう。
「ミアン姉さん、落ち着いて。ちょっとニシキさん、ミアンに何かやらせるようにしたの。」
ミヤンがやや厳し目の口調で俺に詰問する。
「ミヤンさん、俺は何もしていませんが………。」
表情を変えずに俺がミヤンを睨みつけながらそう言い返す。
「もうー、メムちゃん、はい、アーン。」
その傍らで無邪気にヘルバティアがメムに携帯食糧を食べさせていた。
その夜は交代で見張りをしながら休息して、翌朝、朝食をとる。塔の中にいるとやはり安心感は違うような気はするが、
「ダン、またこれからおっ始めるみたいのようだわ。」
メムが朝食をとった後、早速他パーティの皆がやってくるのを感知する。
「優雅に朝食を取りたいのにいやーねー、無粋な奴らよ。」
メムはそう言い足したところで、いきなりの魔法の発動合戦による爆音がオープニングテーマの代わりとなる。
「おーおー、もうおっ始めてるのか。」
「油断大敵よ、ミヤン。」
ミヤンが気楽そうに言うのをミアンが戒める。
「でも、このまま見守り続けるだけになるわね。ニシキさんはどう見てるのかしら。」
「うーん、俺たちが放り投げたボーナスポイントの証を取って、自分たちのパーティのものにしたところが残るのでしょう。」
ヘルバティアに今後の展望を聞かれるが、当たり前のことしか言えない。
「でも、人数的には、………3パーティによるボーナスポイントの証、争奪戦ね。」
メムが会話に加わる。
「ということは、……1パーティがどこからか高みの見物をしているのかしら。」
ミアンがすかさずパーティ数を計算して状況を把握にかかる。
「ふーん、潰しあったところで最後に勝ち残ろうと考えているパーティが、もう一つあったようね。」
少し憎々しげにヘルバティアが言う。
「この付近でやり合っているのが3パーティということは、決着にはもうしばらく時間はかかるでしょうね。俺はそう思います。実際3すくみの戦いになっているようですから。」
「じゃあ、私たちもしばらく高みの見物ね。最終決戦に向けて体力の温存をしましょ。」
ヘルバティアはそう言ってゆっくりと水を飲む。
「飲み物と食べ物はこっちでここにある分は回収したわけですし。」
ミヤンが倉庫を見ながらそう言って、その後外の様子を伺う。
「しかし粘るわねー、こんなにこう着状態になるなんて。」
1時間ほど塔の外で戦闘が続き、メムがうんざり気味にそう呟く。
「まあ特訓所に来て、特訓後は10級のランクアップ試験を受けようとするパーティの方々ですから、実力は相当なものでしょうね。メム様、油断はできないですよ。」
「うーん、まあこんだけ体力があるから、魔法を発動させまくって、武器戦闘もするわけだものね。そろそろ体力も落ちてくるのじゃないかしら。あら……、新たな参戦者かしら。」
メムが何か感知したようだ。これは、もしかして……、
「高みの見物していたパーティですかね。」
「私たちも似たようなことしてたパーティなのよね……。でもダンの言う通りよ。人数は1、2、3、4、5、6、7、8人ね。」
「動きが出てきましたね。そのまま見張っててください。奥の方にいるリーダーたちに報告してきましょう。」
俺はそう言ってヘルバティアたちの所に向かおうとして、
「休憩終わって交代するタイミングだけど、……何か変化があったようね。」
「魔法の発動数も少なくなってきているようですね。爆音が減ってきています。」
「じゃあ、いよいよ……。」
途中でバッタリと会う形になるので、そのまま合流して塔の出入り口に向かう。
「あら、もう戻ってきたのね。」
メムが俺とヘルバティア、ミアン、ミヤンと合流したのを見て
「多分、私たちのように高みの見物していたパーティが今、他パーティを奇襲しているわ。」
「わかったわ。メムちゃん、ありがとう。」
ヘルバティアがメムにお礼を言って戦闘体制を整える。
「そろそろ打って出ましょうか、いいわね!、みんな!。」
ヘルバティアの檄が飛ぶ。
「先鋒役は俺がやりましょう。」
「じゃ、私は次鋒役ね。」
俺とメムが一番手と2番手を希望する。と同時に、装填している魔弾の種類を確認して拳銃を構える。
「で、どのパーティを狙うの?。」
「今、戦闘が止まっているパーティね。」
ミヤンの質問にミアンが淡々と答えて、
「ミアンの言うパーティなら、この出入り口真正面の方向にいるわね。」
メムがそう答えて俺と共に出入り口を飛び出していく。
(じゃここからは念話術で。)
(了ー解っと。)
互いにダッシュして、林に入り、俺はメムの後をついていくと、切り株のある開けた平地に出る。
「げっ、新手か。」
そう言って身構える他パーティのメンバーたち。メムが目の前にいる剣を持った男の鼻っ面に噛みつきにかかる。俺は銃を構えて魔法を使おうとして短杖や長杖を構えて、魔法を発動させようとする後方支援役っぽいもの4人に走りながら躊躇なく魔弾【剛岩弾】をぶっ放す。
ドシュ
ドシュ
ドシュ
ドゴッ
ドゴッ
ドゴッ
拳2つ分ぐらいの岩が現れて、3発が4人の足元で炸裂してその4人の下半身に岩つぶてがドゴドゴドゴドゴとヒットする。俺はそのまま、一気に相手パーティを突き抜けるように進み、少ししてから振り返る。
俺とメムが一気に強襲をして、相手パーティは5人が倒され2人が塔の方へ逃げていく。しかしその方向には、
「おりゃ、そりゃ。」
「ぎゃー。グエッ。」
「はい、それっ。」
「うーん、キュウ。」
相手パーティを全員戦闘不能にしたようだ。
茂みの影から審判役らしき者が出てきて
「パーティ名アルボナード、総員戦闘不能。」
と声高らかに宣言する。
そのまま塔の方向に向かいヘルバティアたちと合流する。
「まさか、あなたたちで5人も戦闘不能に追い込むなんてね。」
ヘルバティアは感嘆する。
「もうちょっとこっちにも戦わせてよ。」
「そうね、少し不足気味。」
ミヤンとミアンが少々の不満を俺とメムに漏らす。
カーン、カーン、カーン、カーン
塔から鐘が響き渡る。どうやら俺たちは放り投げたボーナスポイントの証は別のパーティがゲットしたようだ。
またもや審判役らしき者が茂みから現れて、
「パーティ名、天空刀剣がボーナスポイントを獲得しました。今残っているのは天空刀剣と華束舞踏の2パーティだけとなりました。」
それだけを俺たちに告げてまたサッとどこかに消えていく。
「じゃあ、高みの見物をしてたその天空刀剣を全員戦闘不能にしましょうか。よし、行くわよ!!。」
ヘルバティアが気合いをいれた。




