226弾 ゲットしたもの捨ててみよう
思わぬアクシデントに少し唖然としながらもボーナスポイントを獲得できたが、
「こうなると、すべての他パーティに狙われることになると考えた方がいいでしょうね。」
俺は皆にそう言い聞かせる。
「じゃあ、塔の外には出ることは難しいわね。」
しかめっ面をしてミアンがうめく。
「2階にいる時に塔を攻撃したパーティとまず戦うことになりそうね。塔の外に出ながら戦うのかしら。」
ミヤンが少し緊張と興奮の入り混じった様子でそう言い出す。
「ここで迎撃してみるのも手かもしれません。リーダー。」
俺はここまでの塔内の構造を思い出しながらヘルバティアにそう言ってみる。
「え、さっき他パーティとやり合わないで、楽に勝ち残ると言ってなかったかしら。」
ミヤンがすかさずそうツッコミを入れる。
「今のこの状態なら、各個撃破でやり合ってみるのはどうでしょうか。」
ミヤンの発言を無視して再び俺がヘルバティアにそう言ってみる。
「だから、どうやってそんなことができるのよ。」
「ミヤン、少し口を閉じなさい。」
ミアンがそう言ってミヤンを威圧気味に黙らせると、続けて、
「ニシキさんは、この塔を拠点にして他パーティを各個撃破できると思っているのでしょうけど、どこでどうやって撃破するつもりですか?。」
努めて静かな口調で俺に尋ねる。
「多分今この塔に侵入しているパーティは、この3階の階段の出入り口で一人ずつ潰していく、というのは十分可能かと思います。階段はどこも狭かったですから、2人が並んで立つとかなり動きは狭められるでしょう。出口付近で一人ずつ、もしくは俺が奇襲攻撃で階段を縦列で登ってきてるであろうパーティをまとめて討つのも可能かと思っています。ま、言い出しっぺの俺が先頭を切ってやってみたいのですが。」
俺も努めて淡々と答える。
「……迎撃準備はできそうなの。」
ヘルバティアが沈思黙考していたようだが、そう口を開き俺を見つめる。
「やらせてください。俺を突破してきたら、それをミヤンさん、ミアンさん、ヘルバティアさんの順で対応していけば負担もかなり減らせるでしょう。それに他パーティも一斉に突入するとは思えないですし、そのための手も考えていますので。」
「そのための手、ですか。一体何をしようと考えているのですか、ニシキさん。」
ヘルバティアが怪訝な表情で尋ねる。
「ええ、ボーナスポイントをここから捨ててみようかと。」
「「はあ!?」」
俺の話を聞いてミアンとミヤンが一斉に大声を上げる。
ヘルバティアも驚きの表情で、
「ボーナスポイントを捨てるのですか?、そんなことをしても。」
と取り乱さないようにしながら声を上げる。
「ええ、あの高いところにある窓からメムにボーナスポイントの証を放り捨ててもらいます。塔の外でボーナスポイントを巡って他パーティ同士がにらみ合ってくれたら儲け物ですし、互いに戦ってくれたらもっと儲け物です。そしてこっちは他パーティの各個撃破がやりやすくなる。」
「……ニシキさん、本当に性格が悪いですね。私より一歳年下のはずなんですが、何かど汚ないところはそう思わせないのが、まあいいでしょう。なら、メムちゃん。お願いね。」
ヘルバティアは何やかんや言いながらも俺の策に乗ってくれる。
「塔の外の他パーティがそうニシキさんの思惑通りに動くでしょうか。」
ミアンがそう疑問を示し、ミヤンは傍でうんうんとうなずく。
「ボーナスポイントの証を見たら、どうするか考えることにはなるでしょうから時間稼ぎにはなるでしょう。それにこの手は他パーティも一斉に突入させなくするための手ですから。」
俺がそう答えると、
「まあ、やってみるしかないですか……。」
「ええ、いいのかなあ。」
ミアンの納得にミヤンが少し不満を漏らすが、
「じゃあメムちゃん、あの窓から行けるかしら。」
メムはうなずいて証を口にくわえて、高窓にさっと向かって跳躍して窓枠に乗り、顔を外に出してくわえてる証を口を開けて放す。証は落下していく。
その直後に、
カンカンカンカンカンカン
けたたましく塔の上から鐘の音が聞こえて、ボーナスポイントに変化があったことを知らせているようだ。
トレガーマさんが空いた天井の穴から縄梯子で颯爽と降りてきて、
「ボーナスポイント失効になります。」
それだけ告げて、またさっと天井に戻っていく。
「では早速迎撃準備にかかりましょう。リーダー。」
俺がそう言うと、
「そうね、じゃあ具体的にはどうするの。」
ヘルバティアも迎撃策で腹を括ってくれたようだ。
「単純です。俺とメムでこの階の唯一の階段の上り口で敵を見張り、メムが敵を感知したら、魔法の発動で攻撃していきます。最大人数の9人ということを想定して攻撃していくつもりです。その間この部屋の中で扉付近にて待機して、状況を見て打って出てくれればありがたいです。」
「わかったわ。無茶なしないでね。」
俺の説明にヘルバティアは少し心配そうな声をさせながらそう言ってくれる。
「では、かかりましょうか。」
俺とメムはこの大部屋を出て階段前に陣取る。
(しかし、いいの。こんな手を考えるとは思わなかったけど。)
(どうですか、メム様。感知の方は何かありますか。)
(後ろの扉の影に3姉妹がいることは感知しているけど、今のところは何の感知もしないわ。)
(メム様が頼りですから。よろしくお願いします。)
念話術で会話しながら他パーティの来るのを待つ。【岩弾】を装填した弾倉を見ながら拳銃を構えていると、
(来たわね。………1、2、3、4、5、6人ね。ゆっくりと階段を昇ってきているわね。)
(じゃあ、敵の4人目が階段半ばくらいまできたら教えてください。)
(いいわよ、…………先頭が半ばね、……来たわ、4人目が階段半ばね。)
メムから念話術でそう伝えられて、俺は立ち上がり、拳銃を構えて薄暗い階段の下に向けて、
「集中。」
そう呟き、
ドシュ ドシュ ドシュ ドシュ ドシュ ドシュ
一気にぶっ放すのではなく、少し間隔を空けてぶっ放すことで、6人を一気に魔弾の【岩弾】を発動させて当てていくことを狙う。とはいえ、用心のため撃ち終えると空の弾倉に、再度魔弾【岩弾】を装填しておく。
(いいわね、見事じゃない。全員伸びているようね。階段から落ちたダメージもあるわね。)
メムと用心しながらゆっくりと階段を降りていく。2階の出入り口に近づくと、
「ううう……。」
「うーん………。」
「ぐぐぐ………。」
半数がうめき声を上げながら、全員動けなくなっているようである。このパーティは全員赤色の脛当てをつけていたのだった。
「それまでです。パーティ名シンガーズレッド総員、戦闘不能。この方達はこれから救護所に運ばれますので、そのままで結構です。」
このパーティの後からこっそりついて来たのか、審判役らしき者がそう言って俺とそのパーティ総員に向けて宣言した。
(一旦戻りますか。)
(3階ね。じゃあまずは1パーティを倒したのね。)
念話術でそう会話して階段を昇っていくと途中でヘルバティアたちに会う。彼女たちは、他の審判役のトレガーマさんから話を聞いたようだった。
「見事にうまくいきましたね。」
ヘルバティアが満面の笑みで俺とメムを迎えてくれる。
2階と3階を結ぶ階段の途中で会って、このまま2階に降りてくる。戦闘不能になってしまった
シンガーズレッドのパーティ名の皆さんはどこかに運ばれて行ったようだ。
「えーと、ティア姉さん、じゃあこれからどうするの。」
ミヤンがそう言って今後の方針をヘルバティアに尋ねる。
「このまま、塔から出ましょうか。ボーナスポイントも無くなっているのだから、他パーティを倒していくのがベストなのでしょうけど。」
「メム様、どうですかこの2階は何か感知しますか。」
俺は小声で尋ねる。
「うーん、……何にも感知しないわよ。」
「用心しながら、1階へ向かいますか。ティア姉さん。」
ミアンがそう言ってここから1階に向かうことを勧める。ヘルバティアがうなずいてそのまま2階の迷路を抜けて1階へ向かう。
「ここも、……異常なしね。」
1階でもメムは何も敵も感知しないことを知らせてくれる。塔から出るためにそのまま進んでいく。
「外はどうですか。メム様。」
「ちょっと待ってね。…………うーん、みんな敵が入り乱れているわね。」
塔の出入り口から外を伺うと、他のパーティが魔法を発動させたり、接近戦で斬り合ったりの、忙しそうな騒々しい状況であった。




