224弾 この塔ちょっと調べよう
(あの3姉妹は、前の盗賊、アサシンスタイルで特訓に挑んでいるのはなぜかしら。)
先行偵察しながらメムが俺に念話術で問いかける。
(まだ、ご両親から教えてもらったスタイルがまだ使えるかどうか不明なのかもしれません。ところでどうですか。)
(この先は異常なさそうね。ヘルバティアたちのところに戻りましょ。)
今は、けもの道のような所をゆっくり進みながら偵察しておく。運よく他パーティの者たちとは遭遇していない。ただ用心のため、メムには念話術での会話を中心にするように言ってある。
(しかし、ダンも一気に他パーティを倒そうとは思わなかったのかしら。)
(そんな単純な戦い方ならいいのですが、まとめて他の5パーティを相手にするとなると、他パーティの人数を最大9人と仮定すれば、45人対4人と一匹ですからね。45人を運良く倒せたとしてもあとあと大変なことになるでしょうね、疲労度とかを考えれば。それに残ったのは一人だけなんてオチにもなりかねないでしょう。うまく立ち回るのも戦略の一つですから。)
(でもダンのように全部のパーティがそう考えていたら、睨み合いのままになるのじゃないかしら。そうなると終わらないまま日が過ぎちゃうのじゃない。)
(そうですね、でもそれを防ぐための塔でのボーナスポイントじゃないですか。)
念話術でそう会話しているうちに、ヘルバティアたちのところに戻る。
「ああ、今のところ何もなさそうですね。このまま塔の方に進みましょう。」
「ダンの言う通りよ。安心して進んでね。」
俺とメムでヘルバティアに報告して、パーティメンバー総員で再び塔に向けて進んでいく。
「ニシキさん、何か思うところがあれば教えてくれませんか。」
ミアンが歩きながら俺に言ってくる。
「思うところですか、それはまたどうして。」
「多分、私もニシキさんと同じようなことを考えているからです。」
「他パーティの動向ですか。」
「そうです。どのパーティも全部他パーティを倒せばいいとは考えていないと思います。いかに戦いを少なくして勝ち残るか、かなあと思っています。」
「へえ、ダンとミアンが似たようなことを考えていたのね。」
メムが俺とミアンの会話に口を挟んでくる。
「メム様も気付いているのじゃないですか。一番最悪なのは、他の5パーティみんなで共闘して俺たちのパーティを襲ってくること。一番楽なのは他の5パーティが互いに潰し合ってくれること。勝ち残るためにそこで残った1パーティを倒すことに専念するだけですから。」
俺がそう言うと、ヘルバティアとミヤンが納得した表情でうなずいている。
「さっき偵察中心とニシキさんが言ってたのは、他パーティの動きを分析して一番楽な方法を取れるかどうか様子を見てみるのですね。」
ミアンがそう言ってくるが、俺は首をゆっくり左右に振る。
「一番楽な方法を取れるかどうかは全くわからないです。むしろその可能性は一番低いでしょうし、どのパーティも楽に勝ち残ろうと考えるでしょう。そうなると状況の変化が激しくなると思われますし、他パーティと共闘して、同様に共闘して敵対した他パーティとやり合うかもしれません。」
「まあどっちにしても、襲って来た敵は叩きのめす、単純に考えたほうがいいのじゃない。」
ミヤンらしいといえばミヤンらしい意見である。
「このまま行くと、もうすぐエリアの中央の塔に間も無く接近するわよ。」
ヘルバティアが地図を見ながらそう言ってくる。
「メム様、どうですか。」
「……他パーティの者らしき気配はないわね。うーん。……異常も感じない。」
メムが鼻をクンクンさせながら探知してみる。
「じゃあ、私たちが一番最初にあの塔にたどり着いたというわけなのね。」
ミヤンが半ば喜ぶが、
「用心しないといけないわね。まだボーナスポイントのついての情報はどうなのかわからないのだから。」
ヘルバティアが浮かれ気味のミヤンに釘を刺す。
「ここがその塔ね。どうしてかしら、なんの気配もないのだけど。」
塔に着いて出入り口付近に何も異常かないかメムを中心にしていろいろ調べ嗅ぎ回る。
(どうやら隠し扉らしきものはあるけど、しっかり閉まっているようね。ここは私たちは入れないのかしら。)
(無理に入れないようなら、堂々と正面から入りましょう。)
塔の外側に別の隠し扉はあるみたいだが、それはスルーしておく。ヘルバティアらにも報告するがやはり正面から入ったほうがいいのだろうと言う結論になる。
「どうやら私たちは最初にこの塔に着いたパーティということになるのかしら?。」
ミヤンは少し嬉しそうに言うが、
「ミヤン、気を引き締めなさい。まだ何も情報はないのよ。で、ニシキさん、メムちゃん、最初に塔の中に入ってくれるかしら。」
ヘルバティアが俺とメムに先行して入ってくれるようお願いする。
「もちろんです。」
俺は拳銃を抜きながらそう答える。この塔に何があるかわかったものじゃないからな。
「じゃあ、ダン。しっかり偵察しましょう。私とダンで斥候役ね。」
メムも気合十分である。
(メム様、ここからは用心のため。)
(ええ、わかってるわ。念話術のみのやり取りにしましょう。)
俺は左手に燃水の手灯を右手に拳銃を持ちゆっくりと塔の中、一階部分を捜索していく。部屋の扉らしき物が5箇所見つかったので、メムと一緒に一旦出入り口に戻り、
「異常何もありません。入っても大丈夫かと。」
ヘルバティアにそう報告する。
「罠とか落とし穴とかはなかったのですか。」
「今のところは見当たらなかったです。部屋の扉らしきものを5つ見つけています。」
俺は小声で報告する。
「じゃあ私たちも入ってみましょうか。扉を5箇所みてみましょう。」
ヘルバティアがリーダーとしてそう指示を出す。
「扉の配置はこうなっているのね。」
ミアンは俺がメモ書きした紙を見ながら何か考えているようである。
扉は塔の出入り口から入って直角に右に折れてしばらく歩くと、真正面に一つと左右に二つづつ扉が配置されている。
「まず左手側の塔出入り口に近い扉から開けて、次に右手側の塔出入り口に近い扉を開けて、最後に真正面の扉を開けましょうか。」
「そうね、ミアンの言うとおりにしますか。」
ミアンの進言にヘルバティアが同意して、
「メム様、じゃあ一つお願いします。」
「いいわよ、この扉の奥には多分食べ物があるわね。」
メムは最初に開ける扉の内側を把握しているようだ、食い意地は張ったままだから食べ物に関しての探知能力が発達しちゃっているのかもしれないが。
扉には鍵はかかっていなかった。そして開けた先には、携帯食糧が、
「90食、10人分とすると3日分といったところですかね、どうしますか。」
中は倉庫のようだ。でも携帯食糧だけで何か殺風景な感じだ。
「そうね、他の扉も見てみましょう。」
ヘルバティアがそう言って他の扉を開く。全て鍵はかかっておらず何の罠もなかった。
左右の4つの部屋は倉庫のようであった。
「やっぱり真正面の扉が上への階段ですね。」
俺が再度確認しながら真正面の扉を見る。その扉の先には階段があった。
「この、戦利品はどうするの。」
「全部残すこともないわよ。水と携帯食糧と回復ローションは持てる限り回収しましょう。」
ミヤンとヘルバティアがそんな会話をしている。
「回収終わったら先に階段の前にて待っていてください。回収より先に、用心のため塔の出入り口を見ておきたいのですが。メムと一緒に。」
俺がそう提案する。
「いいわよ、分かったわ。」
ヘルバティアがそう言ってミアンとミヤンに指示して、水と携帯食糧と回復ローションを各々回収にかかっていくのを見ながら、俺とメムは塔の出入り口に向かう。
「今の段階で、どうですか。他の者の気配とかは。」
「うーん、……他のパーティは何かやってるのかしら。ここにくる気配すらないのだけど。」
とメムが少し呆れたような口調で言ってくる。
「外の様子も見ておきますか。」
俺はそう言ってメムと一緒に塔の外に出てみる。塔の周りをくるりと一周していると、遠くに煙が上がっているのは見える。
「ねえ、何か見えるの、ダン、ねえ、ねえ。」
とメムが言い出すのでやむを得ずメムを肩車する。
「ああ、ありがとう。ああ、煙が上がってるわね……、塔の上からだとよく見えるのかしら。」
「それはいいのですが、他の者の気配はしないのですよね。」
「ええ、全くよ。」
「そうですか、では戻りますか。回収もしながら。」
メムにそう言って肩車から降ろして、塔の中へ。倉庫内の残っている水と携帯食糧と回復ローションをカバンに片付けて、階段の前に着く。
「塔の周りも今は異常ありません。誰の気配もないです。」
俺がヘルバティアにそう報告する。
「分かったわ。じゃあ上の階に行きましょう。」
皆が階段を登って行った。




