205弾 この反省会は荒れるだろう?
ロッジに戻って、反省会の前に先に入浴を済ませることになる。まずは3姉妹が順々に入浴して後は俺とメムが入浴する。
この特訓で俺は勝利者となりこの特訓での第一位の成績となった。
「こんな単純な手で私たちの心を折るなんて……。」
「ううー、なんか悔しいし、空しいし。」
「なんでこんな目にあうのよー。」
「ダン、こんな手を使うなんて、ある意味サイテーよ。」
特訓終了後、3姉妹とメムにそう言われてしまう。ただ、メムの場合はそれは言って良いのかという気もするが。勝つには勝ったが、何か遺恨が残る特訓になってしまったようだ……。
とは言え、こっちもあっさり負けるわけにはいかないからな……。これこそ反省会で話しなければならないことだろうが。
反省会が始まる。
「では、反省会をします。」
とガーワンバーさんが宣言する。
ここはコテージの中の小さめの居間。6人と一匹が集結しての反省会である。
「まずはお疲れ様でした。みなさん。どうでしたか、この特訓をしてみて。」
またガーワンバーさんが仕切るようだ。
「追い詰めたのは良いけど、後何かが足りなかった、というところでしょうか。ニシキさんからみて何が足りなかったと思いますか。」
ミアンが口火を切り、俺に聞いてくる。
「……うーん、えげつなさ、かと。」
「えげつなさ、ですか。」
「まあ、道徳的に汚なく人情や同情心に欠けているという意味です。まあ言い方が悪いですが、この場合はなりふり構わずどんな手でも使って勝ち取りにいくと言えば良いのでしょうか。」
ミアンには思い当たる節があったようである。俺の発言に納得の表情をしている。
「だからって、最後に泥をひっかぶせるなんて、何か納得いかない……。ティア姉さんもだよ、なぜ泥をかぶった後で、降参の意思表示して終わらせるんだよ、終わりの時間までまだあっただろうに。」
ミヤンがミアンと俺とのやりとりに納得いかないといった様子で憤然と俺とヘルバティアに喰ってかかる。
「……いいですか、俺からまず言わせてもらっても。ミヤンさん、ヘルバティアさんは時間が迫っているこの状況と、泥をかぶったことの2つがあったから降参の意思表示をして終わる決断をしたのだと思いますよ。確かに俺は追い詰められていたかもしれませんが、あれで退く判断をしたのでしょうね、そうですよね。ヘルバティアさん。」
「…ほぼニシキさんのいう通りよ。あの追い詰めたところでも、あんなことされたら次に何をやるかわからないし、捕まえるまでに負うリスクと残り時間を考えれば退く判断をすることにしたのよ。悔しいけどね。」
ヘルバティアの言うことは至極もっともである、そう思っていると、
「でも、でもニシキさんは多分体力的にも能力的にも一杯一杯だったと思うのですが、その点はどうなのですか?。」
ミアンが聞いてくる。
「ふう、正直に言えば、最後悪あがきをするところでしかなかったでしょうね。時間いっぱいまで逃げ切るために手段を選ばず、使えるものはなんでも、反則まがいもありでとは思っていましたからね。」
「じゃあ、あのまま囲んで攻めていれば降参するか、ダメージを与えて倒せていたかもしれないじゃない。」
ミヤンが俺の回答に反応する。
「ミヤン、そうだとしてもニシキさんの悪あがきはこっちにも相当にダメージが大きいはずよ。泥をかけて、その後残っていた桶を武器がわりに殴打して、もしかすると、私たちのうち誰かが重傷を負ったはずよ。ミヤンが取られたショートソードを使ってね。」
ミアンにそう指摘されて、ミヤンが視線を下に落とす。
「そうね、あれは大失敗だったわね。私も用心してかかることを徹底すべきだったわね。」
ミヤンはヘルバティアにそう言われてさらにガックリと頭を垂れる。
「そういえば、もし真剣を使っている状態で怪我とかしたら緊急治療とかになるのですかね、審判役としては?。」
俺がふと思い審判役2人に尋ねると、
「当然戦闘の状況を見て、危なくなればそこで止めて、怪我したりやられたりの想定にして退場してもらったかもしれません。1日目のニシキ様とミヤン様の戦闘時はそういう用心はしていました。しかし、まさかグリーンヒルダイルの死体を投げつけて戦闘不能にしてしまうとは思いませんでしたが。」
とガーワンバーさん。
「まあ、あの時はうまく戦闘不能にできて地図と武器を取れてよかったです。あのまま3人に追われていたら、俺は捕まるか降参するかだったかもしれません。」
「つまり、あの時戦ったのは偶然ではなく私は誘われた、ということなの、ニシキさん?。」
ミヤンがそう確認するが、
「ミヤンは戦闘に思考が行きすぎているのよ。だからニシキさんに良いようにされちゃうのよ、弄ばれるのよ。誘いにしても偶然にしてもというところは確認するところじゃないわよ。」
ミアンがきついことを言う。
「ミアン姉さん、それどう言うこと?。」
「私たちに言えるのかもしれないわね。単純に叩きのめす、倒すだけじゃダメな場合を見極める目が足りないのよ。多分戦闘、魔術の能力的には互角だとしても、洞察、推測、分析に劣っていたのよ、このニシキさんに。」
ヘルバティアがミアンに替わってミヤンにそう説明する。
「あと戦闘の際の発想力も足りないのかもしれません。ミヤンはそれで意表をつかれた。」
ミアンがそう言って長姉の説明を補足する。
「まあ、そう言われると何ともはや、……武器もなく魔術もなかったからそういう発想になっちゃったのかもしれませんが。うーん、3人とも、何というか、主目的をしっかり見極めることが大事だと思いますが。」
俺がそう言うと、
「今回の特訓で見えたのですが、予想以上にニシキ様の勝負への執着心が強いなというところです。それが今回のこの差に出たとは思いますね。まさに勝つために何でもやる、そこにタブーはないといったところでしょうか。」
と、トレガーマさん。
「そうですね、あそこまで徹底して逃げて、捕まりそうになり追い詰められても、何か考えて何かしらやろう、とするこのニシキ様の姿勢が、このチャティーア様3姉妹たちを逆に追い詰めたのでしょう。これほどの意地汚い、いや、いい意味でですよ、戦い方はそうそう見れないスタイルですね。」
と、ガーワンバーさん。
一応褒めているのだろうけど、俺的には結構傷つく。
「でも、この結果は、……魔術も武器も使用できた私たちが有利だったはずなのに、武器もなく魔術も使用できないニシキさんを仕留めきれなかった、ということですよね。」
とミアンが険しい顔になる。
「そうね、そう言われると私の判断も軽率だったのね。姉さんたちを待って追うか、ニシキさんと戦いながら、うまく時間を稼いで姉さんが合流するようにすればよかったのよね。」
ミアンと同様の険しい顔をするミヤン。何か気づいたようである。
「戦闘については私たちはもっと判断力を上げていく必要があるわね。この3日間ででた反省点と課題をどうにかしないと……。」
そう言ってまとめるヘルバティア。
審判役2人が互いに顔を見合わせてうなずく。
「このパーティが優秀だと思うのは、こうやって話をしっかりして課題を見つけ出そうというところですね。反省会でずっと沈黙したままとか、特訓の影響で内輪で喧嘩みたいになって反省会でもそれを引きずるというパーティも多々あるのですが……。」
とガーワンバーさん。
「もしかすると、チャティーア様たち3人姉妹の能力向上の鍵は、このニシキ様にあるかもしれません。」
と言って俺を指差しニヤリとするトレガーマさん。
「このパーティならこの特訓所でかなりの成長が見込めるかもしれませんね。あと、一つ聞きたいのですが、ニシキ様、一人で何かぶつぶつ呟きながらいるのは何か理由があるのでも。」
そう言って一人うなずくガーワンバーさん。
「ああ、呟きながら考えると考えがまとまることもあるのです。」
俺はそう言ってごまかして、メムとの会話が聞かれていないことを確認し内心安堵する。
そうして反省会は終わり夕食になる。
前回同様、最優秀な成績ということなので、俺とメムが共に豪勢なメニューで、冷え冷えとした3姉妹たちの視線を浴びながらの夕食になるのだった……。




