198弾 特訓メニューの反省会しよう
「では、早いですが、前倒しで反省会をします。」
とガーワンバーさんが宣言する。
ここはコテージの中の小さめの居間。6人と一匹が集結しての反省会である。
「まずはお疲れ様でした。みなさん。どうでしたか、この特訓をしてみて。」
ガーワンバーさんが仕切るようだ。
「ニシキさんは私とミアンが組んでくることは気づいていたのかしら。」
そう俺に質問してヘルバティアが口火をきる。
「うーん、3人で組んでやってくるのかなあと思ってはいました。」
俺がそう答える。
「えっ、じゃあ、気付いていたのね。ティア姉さんと私がコンビで戦おうとすることは。」
ミアンがそう言って悔しげな表情を見せる。
「えっと、……私は蚊帳の外みたいになっていますが……。」
とミヤンが寂しそうに言ってくるが、ヘルバティアにジロリと見られて、何も言えなくなったのか沈黙する。
「じゃあ、あの時ミヤンに対して罵倒していたのがフェイクだとどこで気付いたのですか。」
「……あくまでもそうじゃないかと思ったのは罵倒を始めてしばらくしてからです。罵倒を始めた時は一瞬そっちに引き込まれそうになりましたが、普通は、この場で罵倒するメリットよりデメリットの方が大きいのに、わざわざ俺の目の前でそんなことをすることに対して違和感がありましたから、もしかしてと思ったのです。」
ミアンの問いに俺が答える。
「え、あの罵倒がフェイクだとしても結構キツかったわよ、ミアン姉さん……。」
どんよりとした表情で凹み気味にミヤンが呟く。
「でも、ミヤンさんが時間を稼いで3対1になっていたら俺は不利だったかもしれません。」
「この結果を見たら、3対1でもニシキさんの方が勝っていたと思うわ。」
俺の感想にヘルバティアが反対意見を述べる。
「もしかすると、この展開をニシキ様は予測していたのではないですか?。」
トレガーマさんがそう言って俺に問いただす。
「最初にルールを聞いてこの状況に置かれた時、もしかすると3人が暗黙の了解で俺を真っ先にターゲットにして一斉攻撃する気ではないかという可能性は考えてました。まず強敵を排除することを優先にするのではないかと。その上で、予測というより考えられる状況を何個か想定してその状況になればこの手を打とうと。」
「そこまで考えていたのね……。」
俺の説明にミアンがため息をつく。
「じゃあ、私と最初にやり合うのは予測の範囲内だったというの。」
ミヤンが身を乗り出して俺に聞いてくる。
「まさか。どんな並びになっているかは全くわからない状態ですから。最初に俺と戦うのが誰かまでは予想がつかなかったです。」
俺がそう答えると、
「ニシキ様は、この訓練での反省点は何かありますか。」
「そうですね、ちょっと相手の様子を見過ぎたかもしれませんね。特に、ミアンの演技に早く気付いたのなら先に手を打っても良かったですね。」
ガーワンバーさんの反省点についての質問に俺はそう答える。
「そうですね、審判役から見ていても、少し戸惑いながら戦っていたようには見受けられます。しかし状況を読んでうまく不利にならないように戦っていた印象です。」
ガーワンバーさんがそう言ってくれる。まあ褒めてもらうのは悪い気はしない。
「ヘルバティア様はいかがですか。」
トレガーマさんが今度はヘルバティアに問いかける。
「この結果は私の判断ミスが大きな結果になった感じですね。最後2対1で戦った時に、背後を取ったつもりだったけど、あんな乱暴に掴まれて投げられるとは思わなかったし、背後を取る役をミアンにさせればこんなことにならなかったわね。」
「ヘルバティア様は情報収集を上手くして相手の状況を見抜いていましたが、少し焦ってしまったのが敗因と見受けられます。次はミアンさんですがどうですか。」
「やっぱりあの小芝居はニシキさんに見抜かれていたのかしらね。もっと素早く相手の動きを抑えて有利な状態を作るべきだったかもしれないわ。」
「状況を考えて方針を立てるのはいいでしょうが、もう少し相手を分析する必要があるかもしれませんね。次はミヤン様ですがどうですか。」
「反省点だらけです。……何も言う事はありません。」
ミヤンはかなり凹んでいる。
「ミヤン様はもう少し平常心を保つことを考えて、後状況をしっかり読むことをすればいいかと思います。ポテンシャルはかなりあるようですので。」
なるほど、審判役が各個人が認識した反省点を言わせてそのあと審判役から見た反省点を示すようにしているのか。
「今回は皆で相互に戦ってもらいながら主に個人個人の状況判断力、素手での戦闘力を観察させてもらいました。素手での戦いは、ある意味戦闘における基本となります。その中でもニシキ様は優秀だったことがこれで証明された形になります。とはいっても、今後の特訓内容によって得手不得手なところや、自分の弱点や欠点、能力を発揮できる部分がはっきりしてくると思いますので今回の結果が全てではないことをしっかり理解しておいて下さい。それにしても決着がこうも早く着くとは少し予想外でした。もう少しこう着状態になるかとは思っていましたので。」
ガーワンバーさんがそう言って今回の特訓のタスキマッチについて総括的にまとめて述べてくれる。それを継いで、トレガーマさんが、
「明日の特訓から一位の成績を取ったニシキ様と、最下位のミヤン様にはハンデが付くことになります。」
え、ハンデがつくの、一位と最下位に、……えー。
トレガーマさんの発言に俺も思わず表情を曇らせる。
そして………、
ガーワンバーさんとトレガーマさんは互いに、
「では、これから夕食になります。」
「ニシキ様はこちらになります。」
なるほど、特訓の成績で食事に差をつけてしまうのか。
パオニスに一汁三菜の豪華な食事が用意される。俺とメムに食事が行き渡ったのを確認すると、ガーワンバーさんとトレガーマさんはこの場から離れる。しかしまあ、なんとステーキみたいなものが出てくるなんて、ここではそんないい食事が成績次第で用意されるのかと感心する。3姉妹は携帯食糧をかじりながら、うらめしそうに俺を見つめる。一応俺が飼い主ということで、メムにも俺の食事と同等に豪華な食事が振る舞われる。
(こりゃあ、ダン、頑張っていかないと、私の食事もかかっているわけね。)
3姉妹にうらめしげに見られながらの食事は、それはそれはもう最悪だった。
食事の味なんてわかるわけもなく、味わう余裕もなくただ淡々と食べ物を口に流し込むだけの作業のようなものになった。
一方でメムは満足げに食事をとり、まさに上から目線で3姉妹を眺めている。
俺も内心では、もうやめてほしいと思ってはいるのだが、何にも言えない。
食事、入浴を終えて寝室に戻り、
「ところで、メム様。トレーニングはどうでしたか。」
「前にダンに教えてもらった倒立に近い体勢での腕立て伏せと、後足で立ち気味になってのスクワットをずっと交互にやっていたわ。結構筋肉痛よ。」
「あまり根を詰めすぎないで下さいね。規則的にトレーニング、休養、回復、トレーニング、の流れが重要です。いざという時に動けなくなるといろいろ危険なことになりかねないですから、ほどほどにしておくのも大事ですよ。負荷のかけ過ぎが怪我を誘発しかねませんので。」
「なるほどね、休養と回復か。いいこと言うわね、ダン。」
「まあ休養と回復が大事だから不摂生してもいいとは言ってませんので、そこはご理解ください。」
俺が最後にそう言ってメムをにらむと、内心を見透かされたと思ったのか、メムは首をすくめて何か呟いていた。
「もう寝ますか。」
「そうね。」
言葉少なく寝床に入って眠りについた。




