194弾 特訓のための課題をあげよう
昼食をとりながら、ヘルバティアが、
「特訓所に行くからには、各自課題を持って能力の向上に取り組まなくてはならないのよ。」
と言い出す。
「分かっているわ。私自身の課題は、食い意地を張りすぎないことよ。前にダンには宣言したのだけどね。」
メムがそう答えるとは思わなかった俺は思わず椅子からずっこける。
「偉いわ、メムちゃん。グランドキャットなのにそんな意識を持つなんて。欲望に打ち勝つのね。」
おい、リーダー、それでいいのか。
「私もメムちゃんにモフモフしたい欲望を抑える努力をするわ。」
そう続けるヘルバティアに、俺と双子妹はゲンナリとして呆れ果てた視線をヘルバティアへ注ぐ。
「まあ、ティア姉さんの冗談は置いといて……。」
「俺もメムのジョークは横に置いて……。」
「ミ、ミアン、そんな邪険にしなくても。」
「そうよ、ダン。私はシリアスよ。前からの決意宣言をバカにしてるの?。」
ミアンと俺で方向性の修正を図る。
「あくまでも、試験を受けるにあたっての課題を挙げるのだからねえ。」
ミヤンがため息を混ぜながらそう言って冷静にメムとヘルバティアにツッコミを入れる。1匹と1人は黙り込む。
「では俺から。俺の課題は戦闘時における魔法の発動と運用ですね。今回のヘビースネークについての戦い方を考えて、魔術研究に勤しみたいですね。後メムには、打たれ強さの向上ですね。」
「ち、ちょっと、ダン。私はそっちより攻撃をかわす技術も必要と思うから。」
「じゃあ、両方とも追及しますか。華麗に攻撃をかわしつつ、いざ2発くらい攻撃を喰らってもなんともないくらいの頑丈さも身につけるということで。」
「むー、まあ両方とも必要か……そうね。」
俺がメムの課題込みで発言したが、メムも全否定はしない。
「私はミヤンとのコンビネーションの向上、魔術も武術もね。」
「ミアン姉さんの言う通りね。そこにティア姉さんとの3人でのコンビーネーションも含んで考えましょう。」
「ミアン、ミヤン。それに基礎体力の向上を図りましょう。」
ということで特訓所での向上すべき目標もある程度決めておくことになる。
昼食後は各自がそれぞれ準備にかかっているが、
「……うーん、どうするか……。」
「ちょっと、ダン。何考え込んでのよ。……ねえ、ちょっと、ああ、これは重症ね。あなたは穴にはまった、なんて。ちょっと、本当に無視しないでよ。」
昼食後、自部屋に戻った途端に考えにふける俺へ話しかけるメムだが、俺も考え込んでしまっていて全く相手する余裕がないのだ。
考えをまとめてメモ紙を用意して書き出していく。
「え、何を書いていくの。まっさか、私のことでも、ちゃんと真実を書いてね。」
メムが横でそうささやくが、真実はいつも残酷なものだからな、元女神猫のいないところで真実は書くとして、
「うーん、まずはこれか。」
俺がそう呟き、漢字を書いていく。
『爆焔弾、火炎弾、水刃弾、氷結弾、風刃弾、剛岩弾、閃光弾、闇黒弾』
「何を書いているのかしら、え、これって。」
「うーん、他にあるだろうか……。」
漢字で書いてみて、この他に何か三文字の漢字で魔弾のいわゆる魔法式として成立しそうな漢字の組み合わせはあるだろうか、と考えてしまう。
「ダン、新たな魔弾の開発ということね。さっき考え込んでいたのは、この漢字の魔法式で発動か可能かどうか考え込んでいたのね。まあ私もこの前ダンに考えてもらった自主トレーニング方法で筋トレをしているからね。」
メムがメモ紙に書き込んでいる字を読んで、嬉しそうに俺に言う。
「あまり、あれこれ手を広げるのも難があるかもな。」
俺は書いた文字を見ながらそう呟く。
「もっと出てきそうな感じがあるのだけどね、漢字だけに。」
メムの思いついても誰も言わなさそうな下らない駄洒落を無視して、次のことも考える。
ヘビースネークとやらの狂獣とどう対処するか、得た情報だけで対策を考えるのはちょっと危ないのだが、いきなり遭遇してから考えるよりはマシであろう。
『メムの嗅覚、敵感知能力を最大にする方法。メムの能力向上について。』
メモ紙にそう書き込むと、
「まさか、断食して嗅覚をあげるとか考えているのじゃないわよね。」
メムが書き込んだ一文を読みながら俺を睨みつつ聞いてくる。
「え、そんなことができるのですか。」
俺が冗談半分でそう答える。
「そんなわけないでしょう!。断食なんてしたら、力が入らなくて戦闘どころじゃないでしょうが。」
メムは結構真面目に言い返す。
「でも食い意地を張りすぎないと言っていたのですから、この際、特訓所で断食も体験してみれば何か覚醒するかもしれませんね。」
「ええ、そうでしょうね。断食後に暴食王として覚醒するでしょうね。」
あまりこの話はしないほうがいいか。
「しかし、メム様と俺でこのヘビースネークは対策を練ったほうがいいでしょうね。一番の肝はメム様の早めの探知と俺の先制攻撃になるでしょうから。」
「それと私が囮役として、初撃をやり過ごすことも。」
「いや、話を聞いている限りではさっき昼食時に言ったようにかわしきれないことも考えたほうがいいかもしれません。このヘビースネークは多分蛇の大型版、アナコンダみたいな感じじゃないかとは思うのですが、それより大きいのでしょう。それに絞められてメム様が耐え切れるか、俺の攻撃がいや魔弾の攻撃が通じるかどうかもあります。」
「まあ新たな魔弾を開発して、魔法属性がわからない状態で魔弾により魔法を発動させてもいかに効力を確認して効果のある魔弾を装填するか。」
「それこそ、あなたのタイムマネジメント能力で装填とぶっ放す速度をあげて、撃って撃って撃ちまくるしかないのじゃないかしら。」
弾幕でなんとかするということか。
まあメムの敵探知能力は優秀だと思うしいい勘しているからなあ。今度行く特訓所でその課題を中心に特訓か。あとは3姉妹と魔法発動も込みの実戦訓練もあるか……。俺単騎とメム、3姉妹を相手の実戦訓練も考えて……。
あれこれ課題と特訓内容をメムとすり合わせて準備をしていると、ドアがノックされる。ああもうすぐ夕食の時刻か。
ドアを開けるとヘルバティアがいる。
「夕食を作る手伝いですか?。」
俺がヘルバティアにそう聞くと首を横に振って、
「師匠が夕食を持ってくるから一緒に食べようとのことです。」
と言ってきたのだった。
一体何をしにきたのか、ヘルバティアら3姉妹のとっての師匠で俺にとっての大師匠兼組合本部長は、リビングダイニングにて自分が持ち込んだ食べ物をミアンとミヤンと一緒に並べている。
「ああ、急に押しかけてすまないな。おごりだからな、あたいの。存分に食べてくれたまえ。」
妙に機嫌と気前がいいのは何か裏があるのだろうか。
「師匠、いいのですか。こんなにたくさん、私たちのために。」
ヘルバティアが少し不安そうに師匠に問いかける。
「まあ、いいのさ。それに、組合本部からの伝言もあるからな。組合本部長とし、いやいや、ちと噛んだな、組合本部長から伝言を頼まれてな、それで時間的にも夕食の頃合いだからな、夕食を持ち込んで直弟子と孫弟子と一緒に食おうと思ったのさ。」
本当にもう直弟子に教えてやればいいのに、師匠兼組合本部長であることを……。話の端端に隠している設定が綻びそうなものがちょこちょこと出ている。
「なるほど、弟子、孫弟子による一門会みたいなものですね。」
「さすが孫弟子、いいこと言うなあ。」
本音のところは一体何を腹に隠してここにきたのか、よくわからないのですがというところである。
「ああ、最初に伝言だ。特訓所の使用のための紹介状、用意できたからな。明日にでも取りに行くといい。」
大師匠はそう言ってニヤリとする。




