第82話 さらば紅蓮の森よ①
「──こっ、これはッ!?
今まで出現した中では間違いなく最大の宇宙機ですが、武装の方も突出しているようですねッ!
ああッ、渦呪螺の体勢を取ったグローメズたちの躰が無残にズタズタにッ……少なくとも3体が龍魂素界に戻されてしまったようですッッ!!」
顔を引き攣らせながら悲痛な叫びを上げる魔少年に対し、微塵の動揺も見せぬ仮面の絶対者は右肘をついたまま「ほほう、なかなかやりおるな」と嘯く。
強烈な先制攻撃を受けた群龍は一旦合体解除して大きく散開し、お返しとばかりに猛焔弾を一斉発射する──されど円盤も真紅の稲妻としか表現しようのない高速ジグザグ飛行を敢行しつつ、負けじと破壊光線の乱れ撃ちで応戦し、結果は、またしても闘主軍の超兵器に軍配が上がった!
「うぬッ、またしても2体が犠牲に……お、おそらく先ほどの大爆発によって地下要塞に乗り込んだ10体も惨憺たるありさまであろうから、このままではグローメズが全滅してしまう……」
切歯扼腕する念殺士としては、おそらく紫の凶霊龍と同じ轍を踏むであろうべジュネオスよりも、今こそ上空の超凶霊龍に降臨願いたい心境であったが、まるでそれを見透かしたかのように首領からの指令が飛ぶ。
「……ヴァルナーガはいつでも呼べる。
しかし余としてはたかが人工生命体ふぜいに我が〈切り札〉を投入するのはいささか業腹なのだ。
そこでシェリスよ、ここでおまえの力を借りたい──ダゴードと戦ってくれ。余は12体のべジュネオスを総動員してあの宇宙機を撃墜する」
「はいッ、畏まりましたッ!!」
無二の盟友から全てを奪った怨敵への殺意に燃えるシェリス・エルアーは即応し、その鋼柱のごとき頸部を一気に寸断すべく再び旋煌刃波の発射ポーズを取る。
『直接相対しているならいざ知らず、闘示盤越しに攻撃するとなるととても一撃じゃ済まない……しかもさっきのネウェスじゃないが、コイツも最強戦士を気取るからにはそれなりの念撃能力を備えているのは間違いない、したがって先手必勝でカタをつける必要があるなッッ!!」
かくてエメラルドグリーンの眩い輝きに全身を包まれた最強念殺士は、垂直に立てた右腕に漲るサイコエネルギーを、腰を回転させつつ思いっきり薙ぎ払う所作によって一気に解放するが、それはあたかも手刀によって獲物の首を刎ね飛ばさんとするかのようであった!
そして初弾が命中するのを待たずにすかさず第二撃の発射準備に着手する。
一方のダゴードが念撃殺法の脅威を目の当たりにしたのは先ほどの新国王と少女聖獣師への攻撃が事実上初めてといってよかったが、突如として喉元に炸裂した鮮緑色の破壊波動によって、今度は自分がその標的となったことを覚った──しかも見えざる相手からの卑劣な奇襲は間髪入れず続行される!
むろん自動的に内蔵された全身防衛システムを発動し、瞬時に命中個所を硬化させることで強靭極まる筋繊維が断ち切られるこそなかったものの、痛みを知らぬ魔性の存在としでもこれらの連続斬撃は左腕の消失に次ぐ過去一強烈なダメージといってよかった。
『うぬッ、所詮生身の存在による、それも想念由来の攻撃がこの無敵の体躯をかくも脅かすとは……しかしどうやら、心眼によって戦況を把握する能力は持ち合わせておらんようだなッ!?』
真紅の狂魔人の超高性能センサーはおよそ5ヤーン余りの後方・7ヤーンほどの高みに滞空する1個の漆黒の鏡晶珠の存在を克明にキャッチしており、これさえ除去すれば攻撃者がたちまち窮することを悟ってニンマリとほくそ笑む。
「いずれキサマとの決着はこちらからゾルゲシタスに乗り込むことでつけてやるッ!
だが今現在の優先順位はあくまでも超凶霊龍が先であり、オマエごとき小物の相手はしておられんッ、せいぜい首を洗って待っているがいいッッ!!」
かくて神速で振り向いたダゴードはガデラズとの手合わせでは温存していた両眼からの金色光線を放つ──反射的に鏡晶珠からも穿孔光線が発射されるが直後に溶解されてしまうのであった。
「──くっ、逃がすかあッッ!!」
絶叫した最強念殺士の右手にはいつの間にか靴と同じモスグリーンの特殊繊維製手袋が装着されていたが、異様なのはその指先に長さ2チルス(約3cm)ほどのエメラルド色の鋭爪が光っていることであった!
「さあ受けてみろッッ!!ガデラズ隊長の怨念がたっぷりと込められた秘奥義【殲烈徹撃爪】をッッッ!!!」
凶々しい宣告と共に必殺の貫手が狂魔人の喉笛に炸裂した刹那に念殺士にあてがわれていた闘示盤の左半分がまたも暗転するが、もはや映像は必要なかった──既にそれが命中した以上、後はサイコパワーの全てを注ぎ込んで獲物の首を掻っ切るのみであるからだ!




