第68話 巨鳥部隊訓練所の正体!?
心を鬼にして王家の森を火の海に化しつつあった巨鳥部隊長ミコーレ・ラワートであったが、突如として発生した震動によって彼女の意識は“肉体の所在地”であるアリョーカ丘陵の部隊訓練所へと引き戻された!
「──な、何が起きたッ!?もしかして地震なのッ!?」
この叫びに次々と同調する声が上がり、ミコーレは「クソッ!何もこんな時にッ!!」と唇を噛み締める。
「しかも揺れはますます強くなっているようだッ!
このままでは瞑闘館内に留まることは危険かもしれんッ、したがって聖獣師のみを残して部下たちは外へ避難させるべきだろうッ!!」
“副官”スレイツ・オルツァーの切迫した声音による提言がなされるとほぼ同時に指揮官が内心最も頼みとする“博士”ヨシュア・カナムが冷静な口調で割って入る。
「それはむしろ危険です──というのも凶霊龍には地底移動を得意とする種も存在するからであり、敵軍が王家の森と近距離にある我が訓練所を“第二の標的”に選んだ可能性は大いにありますから、少なくとも3体の巨鳥はこちらに差し戻した方が賢明かとッ……ああッ!?」
円形に配置された、各チームのシンボルカラーに彩られた七つの特殊硬化硝子製のドーム型の瞑闘館の壁はいわば〈マジックミラー方式〉で外部の様子を敷地侵入者に気付かれることなく把握することができるわけだが、丁度ヨシュアの正面20ヤーン(約32m)ほど先の地面がいきなり盛り上がると、出現した赤紫の柱がみるみる10ヤーン近くも伸びて、炯々たる金色の眼光で隊員たちが立て籠もる建屋を睨み下ろしてきたのである!
そして後続も次々と到着し、たちまち瞑闘館を包囲した7体とは別に円の中心からも殿の3体が出現するのであった!
「ち、ちきしょう囲まれたッ!
しかも連中の動きのせいで地盤がメチャクチャになっちまって、我がゴラノ隊の瞑闘館は完全に左斜めに傾いちまったぜッ!!」
“貴族聖獣師”ジェルマーが怒りの絶叫を発し、
「同じだッ!これじゃとても操獣に集中できんッ、何しろ建屋が半直角ほどせり上がっちまってんだからなッ!!」
と“主任教官”のアギム・ディークスが悲痛な叫びで応じる。
もちろん、最強龍氣師に駆動されるベジュネオスの猛威を前にミコーレによって帰還を命じられ、訓練所防衛のため上空を旋回していた60羽余りの巨鳥たちが急降下してはきたものの、肝心の相棒は風前の灯となった瞑闘館の虜囚であるわけだからその動きが大いに精彩を欠いているのも当然といえた。
『とはいえ、我々の聖獣が帰還するまで何とか踏み留まってもらわにゃいよいよ全滅だッ!
し、しかし今となっては後の祭りだが、もう少し訓練所のことも気にかけるべきだった…それに力猿連合との連携をしっかりと確立していれば起きうる様々な事態を想定して何段にも対策を立てられたはずッ…いくら向こうに非(度重なる会合拒否)があるとはいえ、あたしも若輩者としてもう少し柔軟に対応すべきだった……ああ、このままなす術もなく殺られちまったら、あの世でお師匠に合わせる顔がないッ……!
ヤバい、ヤバいよ……こうなったらパレルだけが頼みの綱だが、何個かの鏡晶珠は常に訓練所用にキープしてあるとか言ってたクセに何のアクションも起こしてくれないってどういうこと!?
そもそもさっきから響鳴石に向かって何度も呼びかけてるのに返事すら寄越してこないじゃないのッ……ハッ、まさか地下要塞内にも何らかの異変がッ!?
もしそうだとしたらあの娘を守ってやれるのは新国王様かダゴードちゃんしかいない……パレルッ、アンタの身に一体何が起きたっていうのよッ!?』
姉貴分が煩悶している間に熱閃煌破弾を乱れ撃ちしつつ急降下してきた巨鳥たちであったが、いかんせん相棒が第四〜第五段階使役者とあっては肝心の一体化自体が完璧とは程遠く、あまつさえ敵軍首領によって操龍されるグローメズ散躰と対峙できるはずもなかった。
事実10体の凶霊龍は降り注ぐ光弾をよけようともせず逆に天に向けて一斉発射した赤紫色の猛焔弾によって霧散させたばかりか、直ちに第二撃を放って聖獣師ならば難なくやってのける〈一撃離脱戦法〉などとてもこなせぬ巨鳥群を無残にも大量の焼き鳥と化してしまったのである!
「ふはははははッ!何と他愛のないことよッ!!
とはいえキサマらなど最初から眼中にはない──よいかッ、先ほど建屋の地下部分を確認したことで確信したわッ、つまりそれ自体が闘主軍の宇宙機だとなッッ!!
さあ遠く安全地帯より状況を窺っておるであろう怯懦にして穢らわしき外星人どもよ、いつまで勿体ぶっておるッ!?
一刻も早く機を虚空に舞い上がらせねば収容した聖獣師もろとも凶霊龍の餌食と成り果てるぞッ!
それとも凶霊龍ふぜいの猛焔弾など何発食らったところで掠り傷一つ刻まれることなどないと自惚れておるのかッッ!?
ならばその認識の誤りを骨の髄まで味わわせてやるわッッ!!」
ついに七つの聖獣瞑闘館に照準が合わされて10発の猛焔弾が発射された瞬間、殆ど瞬間移動といってもよい急上昇を敢行したドーム型宇宙機は既に地上100ヤーン(約150m)の高みにあったのである!




