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魔龍皇将士団の紋章  作者: 尾岐多聞
第4章 新国王の試練

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第67話 鎧刃部隊、要塞侵入!

 真紅の魔人が新国王を地下要塞最深部の専用治療室に運び込んだ直後、第一通用門で巨大な爆発音が轟いた!

 実行したのはむろんガデラズ・バドオ率いる魔龍皇将士団鎧刃部隊の破壊工作班である。

 150人の隊員から厳選された18名の〈トップチーム〉の面々は、あくまでも戦場を地下要塞内と見定めているため王家の森に到着するまで行を共にした愛馬たちには既に跨っていなかったが、れっきとした部隊の一員たる彼らはメアロックに居を構える星覇獣国屈指の〈創獣師〉ヂャベドの館へ直(・)帰(・)するはずであった。

 というのもガデラズらは森への途上で一旦そこへ寄り、かねて注文していた要塞攻略の秘密兵器──【鉄狼群団】を拝領していたからである!


 パヅァルア屈指の観光地という地の利を活かした宿泊施設及び飲食店の運営といった〈正業〉のみならず、闇酒場経営や各種違法魔薬の密売といった〈裏ビジネス〉にも深く手を染めて莫大な資産を築き上げた兄の全面的な支援を受けて、今やゾルゲシタスの〈公式研究所〉に次ぐ規模の凶魔獣製造拠点となるに至った“メアロック・ラボ”の会心作である20頭の鉄狼たちを一瞥した瞬間、漆黒の甲冑武者は満足の吐息を漏らしたのであった。


「全く期待以上の出来栄えですなヂャベド師。

 いかなる人間の勇者にも見劣りせぬ獰猛にして精悍なる面構え、荒野の王たる黒獅子に匹敵する体躯、そしてこの世で切り裂けぬものはあるまいと確信させる爪牙──まさに鉄狼の名にふさわしい最高の凶魔獣です。

 しかも彼らの能力にはまだまだ底知れぬ秘密が隠されている……その一端は先刻頂いた書面によって一応認識はしておりますが、もはや圧倒的な体格差を超えて聖獣どもと互角の勝負ができようとすら思わせてくれますな……!」


 あながち世辞とも思われぬ真情溢れるコメントを賜った創獣師であったが、満面の笑みを湛えながらもその目は決して笑わずに応じる。


「ありがとうございます、ガデラズ隊長。

 まさにわたくしが目指しております所を余すところなく代弁して頂きましたが、苦節6年目にしてようやく納得のゆく〈作品〉を仕上げることができたようです──むろんその真価は戦果のみによって測られるわけですが、幸い力猿連合総帥の拠点がリュシアーク内にあるものですから、過日実戦テストがてら3頭ばかり送り込んでみましたところ……」


 質素な墨染めの行者服に痩身を包んだ、腰近くまで達する白髪の創獣師は胸元まで覆い隠す白髭を揺らめかせながら嗄れた声で誇らしげに報告する──未だ40代半ばという年齢ながら老修行者めいた風体に成り果ててしまっているのも、彼が生涯懸けて打ち込んだ魔道の苛烈さを感得させるに充分であった。


「ほう、それは興味深い……たしかキーナス・ベガモとやらは世知に長けた防衛隊きっての権勢家で、子飼いの力猿どもの訓練所と称して王家の森とはいかぬもののかなり広大な敷地を国王から下賜されていたはず……するとそこに放し飼いされた個体を標的に……!?」


「そういうことです。それで結果を申し上げますと、真夜中から黎明までの時間内にて2体の成体を仕留めることに成功致しました──我々としましても実に望外の成果でありまして、盤石の自信を以て今回の遠征に送り出せることと相成りました次第です……!」


 ここで鋼の籠手を装着した鎧刃部隊長の右手が差し出され、おそるおそる伸ばされた骨ばった右手がそっと握られる。


「創獣師よ、感謝致しますぞ。

 これで我が部隊の勝利への確信がますます堅固となった──あとはこの私が宿願のダゴード狩りを果たしさえすれば、この燃ゆる慕情が炎の矢となってあ(・)の(・)お(・)方(・)の胸を貫いてくれることであろう……!!」

           ✦

 工作班きっての爆破技術の権威・ゴルドンの名人芸によって開いた大穴から鉄狼群団を先頭に雪崩込んだ漆黒の騎士団は、それぞれが部隊名物の飛び道具である【爆矢(ばくや)銃】を手にしていたが、平均身長1.4ヤーン(約220cm)の剛力を誇る彼らにとっては半ヤーン(約80cm)の銃身も決して扱いづらいものではないらしく、〈単銃〉の場合は例外なく両手に握られ、〈3連装式〉や〈多銃身回転式〉といったもはや重火器といってよいヴァージョンを手にする者も複数あり、強制したわけでもないのにその割合はきれいに3等分(6名ずつ)されていた。

 しかも特筆すべきは、隊員たちが本来の武器といえる刀剣類を振るう際には今回の任務用に紐付けされた鉄狼が装着した銃架にそれを託すことができ、しかも牙の一本に仕込まれたトリガーボタンによって凶魔獣の独自判断による発射が可能な点にあったのだ──むろんこれらはガデラズからの特別注文に応えたものであり、力猿に致命傷を与える際にも多大な貢献を果たしたのであった。

           ✦

「──な、何者だッ!?」


 国王の容態を気遣いつつ廊下で待機中に要塞内に響き渡る不吉な警報(サイレン)に聴覚器官を震わされたダゴードは、思わず響鳴石を凝視する──鏡晶珠操作の達人である戦景眺映士が倒れた今、状況把握は要塞と森の内部に設置された【監視鏡】によるしかないわけだが、それらを統合する司令室のオペレーターからもたらされた映像はかなり乱れており、それは侵入者の移動スピードがケタ外れに迅速であることを物語っていた。


「こ、これはッ!?……そ、そうかッ、星覇獣国の最強白兵戦団がついに要塞内に……されど我が針擊獣兵団が黙ってはおらんぞッ、まずは筒状(キーラート)が迎え撃ち、続いて人型(オーガン)が襲いかかり、最強火力を誇る軟体(ユゼルガ)が焼き尽くしてくれるであろうッ!──そしてこのダゴードの拳が聖域を侵した不埒者どもの長(おさ)を必ずや粉砕してくれるッッ!!」



  



 

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