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魔龍皇将士団の紋章  作者: 尾岐多聞
第4章 新国王の試練

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第66話 針擊獣兵、初陣を飾る!

 渾身の力を込めて突き出された右拳から放たれたエメラルドグリーンの必殺光弾は闘示盤の表面に吸い込まれると殆ど同時に棒立ち状態のゼトゥス・マナレックの左胸を直撃し、後方に大きく吹き飛ばされた新国王の肉体は高純度ミネラル含有の湯をなみなみと満たした全長4×最大幅2ヤーン(約6.5×3m)の楕円形の水晶製浴槽の中央付近に派手な水飛沫を上げて落下する!


 それに連動するかのように2個の鏡晶珠も位置を変え、画面には死者のように瞑目し、両腕を広げて湯面を漂う美青年の裸体が生々しく映し出されるのであった……。


『う、美しい……これで貴方は永遠にボクのものだ……!

 そしてこの戦いの大勢もまた決した──いうまでもなく星覇獣国(われわれ)の完勝だッ!!』


 性的絶頂に近い充足感に股間を熱く硬直させた魔少年を包みこんでいた妖光が徐々に弱まり、翡翠色の眼光も常態に帰するが、満足気に細められていた双眸が一瞬にして張り裂けんばかりに見開かれた!


 これまで〈撮影行為〉に徹していた漆黒の鏡晶珠たちが〈狙撃態勢〉に入ったことを最強念殺士…いや魔龍皇最側近としての嗅覚によって察知したからである!


「ま、魔龍皇様ッ、まさかゼトゥスを……!?」


 自分でも戸惑うほどの動揺を露わにして問いかけるシェリスを一瞥もせずにズザ・ビラドは冷やかに応じる。


「──詰問したいのはこちらの方だ。

 まさかおまえが敵軍の将に対し、それほどまでの邪恋、いや淫心を燃やしていたとはな……。

 ということは、一見ゼトゥスをみごと絶命させたかのごとき天裂穿弾にも無意識の手心が加えられた公算が大というもの。


 おまえも魔龍皇将士団屈指の戦闘者である以上、必殺の意志を欠いた一撃を放った時点で勝者の資格を喪失しておる論理を決して否定できまい……!


 したがって、ルヌラリア制覇の重要な足固めとなるパヅァルア国王誅戮に万全を期すため、とどめは余自らが刺す。

 つまり憧憬の美身が閃光に貫かれ、無残に焼け爛れることが正視に耐えぬというのであればしっかり目を背けているがいい……」


「……ッ!」


 痛恨の想いにギリッと奥歯を噛み締めながらも結局そうせざるを得ぬ魔少年であったが、次の刹那首領の「くくく、やはり現れおったか」という含み笑いを耳にして慌てて視線を正面に向ける。


「──ダ、ダゴードッ!どうやってここにッ!?

 そ、そうかッ、やはり万一に備えて入室のための〈隠し鍵〉が仕込まれてあったんだなッ!?」


 まさしく、浴室扉の方向である画面の左側から赤い突風のごとく出現した真紅の魔人は神速で浴槽に飛び込んで主君の上に覆い被さると、間髪入れず発射された二筋の黒い殺人光線を鋼の背中で受け止めるのであった!


「ふふん…別にガデラズに力添えするつもりもないが折角の機会だ、闘(・)主(・)の(・)自(・)信(・)作(・)であるキサマがいかほどの耐久力を有しているのかを見せてもらおうか……!」


 かくて鏡晶珠はゆっくりと標的の上方2ヤーン辺りまで降下しながら攻撃を続けるが、国王守護隊長は微かな呻き声すら発することなく、ひたすら微動だにせず死の光線を受け止め続ける──しかも巨体にのしかかられたゼトゥスが沈んでしまわぬのも不可解で、主君の溺死を防ぐために周囲に特殊な浮力を発生させているというのであれば、真紅の魔人の潜在能力は王国軍どころかその背後に控える闘主軍においても間違いなく最強クラスといえよう。


「なるほど、たしかに闘主はキサマを聖門王国に留まらぬ“ルヌラリアの最強戦士”として設計したようだな──厚さ1ヤーンの鋼板を2メッツもあれば貫通してしまう穿孔光線をこれだけ浴びても涼しい顔で凌ぎぬくとは……されどこの攻めにはどう対応する!?」


 1個の鏡晶珠は引き続き光線を撃ち続けるが、残りの1つがあろうことか湯の中に飛び込んだことで陰険極まる魔龍皇の意図が明らかとなる。


「うぬッ、キサマ水中から国王様を狙おうとッ!?」


 こう叫んだ真紅の魔人であったが、浴槽に潜む刺客を捕獲すべく少しでも躰をずらそうものなら直ちに上から降り注ぐ穿孔光線によって主君は死の危険に曝される……まさに進むも退くも地獄の状況下、圧倒的優位に立ったはずの魔龍皇が「一体何奴だ?」と半ば呆れたように言い放つ。


「?」傍らの魔少年が不思議そうに首領の横顔を窺うが、目の端に捉えた異様な物体の姿にたちまち釘付けとなってしまう。


 ポーンッ、ポーンッというどこか間の抜けた怪音と共にジャンピングしながら浴室に乱入し、そのままドッボーンッと浴槽に飛び込んでしまったのは出動したばかりの筒状獣兵(キーラート)であり、そのはるか後からモゾモゾと侵入してきたのは淡いピンクの半球型ボディに百個もの七色発光眼球を点滅させる軟体獣兵(ユゼルガ)であった!


「な、何と珍妙な怪物どもよ……ま、まさかコイツらが闘主軍を構成する外星人の正体なのでしょうかッ!?」


 ある意味尤もといえるこの疑問に仮面の絶対者は頭(かぶり)を振り、冷笑気味に推測してみせる。


「さすがにそれはなかろう……なぜならどちらも到底知的生命体には見えんからな。

 即ち此奴らもまた聖獣やネウェスによって証明済みの、闘主の悪趣味な遊び心によって生み出された慰み物に過ぎまい──国王の危機にノコノコと駆けつけてきたことからも、おそらくその用途は地下要塞(ここ)でのみ使われるペット的な番兵といったところだろうが……」


 しかし彼らは早速“小さな暗殺者”相手に結果を出した──つまりユゼルガは3つほどの眼球から青・朱・黄色のパルス状怪光線を発射して空中の鏡晶珠をドロドロに溶解させてのけ、一方無機質なキーラートの方もまた先端に鋭い針状の凶器が底光りする計30本のワイヤー状触手を駆使して湯の中を縦横無尽に疾駆する漆黒の珠を追い回し、頭上の脅威が去ると同時にダゴードに抱え上げられて浴槽から上がったゼトゥスを執拗に狙って湯面から飛び出したまさにその瞬間、あたかもキューがビリヤードの玉を突くように完璧に打ち砕いてのけたのである!

 



 



 


 


 


 


 

 

 

 


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