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魔龍皇将士団の紋章  作者: 尾岐多聞
第4章 新国王の試練

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第64話 地下要塞、異変勃発!

 命懸けの戦いを前に黄昏れている?人型獣兵とは対照的に、他の2種は何ら気負った様子を示してはいなかった──尤も軟体(ユゼルガ)と筒状(キーラート)という通称からも察せられるように、そもそも彼らの外貌は一般的な有機生命の範疇を大きく逸脱していたからである。


 特に薄桃色のユゼルガにおいては、基本的に静止状態では直径1.3ヤーン(約2m)・全高0.5ヤーン(約80cm)の半球状であることが多いが活動時には常に不定形となり、しかも全身に埋め込まれた百個近い発光眼球が十数種もの色彩に煌めくのであるからもはや魔物以外の何物でもなく、片や直径0.5ヤーン・全高2.2ヤーン(約3.5m)のメタリックな光沢の青い円筒形ボディの側面に15本ずつの伸縮自在のワイヤーを彷彿させる強靭な触手を生やしたキーラートに至っては、その電球に酷似した白光する両眼以外はのっぺらぼうという外貌とジャンピングという奇矯な移動手段から、要塞勤務の王国軍人も完全な自律的機械兵器と信じる者が大半であった。


 さて、事実上の統率者である真紅の魔人の登場を受けたオーガンたちは奮い立つどころか一層萎縮した模様で、更に巨体を折り曲げてまるで今にも頭を抱えんばかりのありさま。


『う〜む、これは重症だな……。

 彼らを創造した聖獣秘密研究所によればオーガンたちは個々の頭脳よりもそれらをネットワークとして接合したいわば〈集合知〉によって動くということであり、それもあって私との戦闘訓練も基本3体一組であたらせたわけだが、たしかにその動きは個々というより一つの意思の顕現といった様相を呈していたものだ……。

 ということは、これから臨む初陣がとてつもなく苛烈なものとなることをそ(・)れ(・)がキャッチしたということなのか?

 ま、その臆病さの裏返しで6種中最強力な防衛本能を備えた連中のことだからイザ実戦となれば死に物狂いで立ち向かうことだろうが、ここまで怯えてしまっていてはそもそも戦場に立つことすらおぼつかん……かくなる上はやむを得んな……』


 意を決した守護隊長は、とりあえず両掌を打ち合わせると(彼らに指示を与える前に常に用いる仕草)、静かながらも重厚な口調で語りかける。


「時間もないから要点だけ述べさせてもらうが、諸君が目下感じている不安と恐怖はまことに正当なものではあるが、ゼトゥス様の現時点における居城ともいうべき地下要塞における護りの中核を担う君らにはそれを超克する義務というものがあるのだ。

 さあ、まずは顔を上げたまえ──そして君たちをその崇高な使命にふさわしい戦士に鍛え上げた私の目をしっかりと見据えるのだ……!」


 師ともいうべきダゴードの肉声はオーガンたちにとって抗い難いものがあるのか、あれほど頑なに俯いていた獣兵たちが1体、また1体と面(おもて)を上げてゆき……そこで彼らは守護隊長の通常の十倍近くも神々しく輝く金色(こんじき)の双眸に釘付けとなったのである!

           ✦

 3メッツ(約5分)後、非常手段の深層催眠によってオーガンたちをいわば強制起動させたダゴードは、格納庫に満ちた妖光によって少なからぬ影響を受けた他の2種と共に満を持して要塞内に解き放った──もとより〈担当エリア〉は日頃の訓練によって彼らの脳中に刻印されているため、一々その場所に引率する必要はなかったのである。

 したがって真紅の魔人は連中を見送ってからその足でパレルを司令室に導くべく彼女が待機中のゼトゥスの居室に向かったのであるが、入室した瞬間に衝撃を味わわされた──何と新国王にその業前を絶賛された若き戦景眺映士は意識を失い、分厚い純白の絨毯が敷き詰められた床に倒れ伏していたのである!


「や、やられたッ!奴らの動きがこれほど急とはッ!」


 駆け寄って少女聖獣師の華奢な躰をそっと仰向けにし、その卓越した透視(スキャン)能力によって体調を窺うダゴード……結果、幸いにも内臓その他に深刻なダメージは負っていないようであったが、原因不明の深い昏睡状態に陥っている以上一刻も早く医務室に搬送する必要があった。


『響鳴石で救急隊を呼ぶより私が急送した方が早いのは確かだが、一応責任者であるジュラル医師の指示を仰いでおくべきだろう……』


 しかしながらあたかも左手に装着した籠手《ガントレット》を口許に寄せたタイミングを見計らっていたかのように嵌め込まれた黒い響鳴石が注意音を発し、豪胆にして沈着冷静な真紅の魔人を動転させる衝撃の事実がもたらされたのだ!


“…うぅぐッ……ダ、ダゴード…き、聴こえるか……?”


 声の主は紛うかたなき主君ゼトゥス・マナレック──されどその気品と生命力に漲る美声が苦悶の響きに震えているのはいかなる理由によるのか!?


“こ、国王様ッ、お声はしかと聴こえておりますが、一体いかがなされましたッ!?”


 六角形の石の表面に映し出されているのはどうやら白大理石の壁の一部であることからゼトゥスは未だ専用浴室内にあるようであったが、その苦しげな呼吸からも王の美しい肉体がただならぬ窮地に追い込まれているのは明白であった!


『お、おのれ星覇獣国めッ!だ、だが文字通り水も漏らさぬ堅牢な密室に、いかなる手管を弄して侵入してのけたというのかッ!?

 私の見る限り、それは絶対に不可能なはずなのだッ!…い、いや待てよ…たしか敵軍には超人的な念力殺法を駆使する異能者が所属しているということだが……しかしそれはあくまでも噂レベルにすぎず、今まで王国(こちら)側に顕著な被害を及ぼした事例は無かったはずだが……それがついに牙を剥いてきたというのかッ、事もあろうにゼトゥス様のご尊体を標的にしてッッ!?』

 




 


 



           



 



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