第57話 緑の処刑場③
“一族最強”の次男が猛焔弾の直撃を食らったのと殆ど同時に、長男と三男も八戦鬼による急襲を受けたが、飛来する毒爆矢は6:2の比率でルーナスに集中していた!
二人の相棒であるゾブチェとガメスもザヴァランに見劣りせぬ巨軀を誇り、装着したプロテクターも前者がグレー、後者がカーキに色分けされており、手にした得物はゾブチェが全長35ヤーン(約55m)の、最大45ヤーン(約70m)まで伸長可能な柔軟にして堅牢な鋼芯にビッシリと鋭利な棘を植え込んだ双鞭であり、ガメスは当主キーナス以来の主武器である柄の長さ7ヤーン(約11m)・刃渡り3ヤーン(約5m)の両刃の双斧を握りしめていたが、思いもよらぬ上空からの奇襲に対しては何らの防御策ともなりはしなかったのである。
そして、半年以上もの期間を費やして磨きに磨き抜いてきた八戦鬼の弓の腕前は素晴らしく、たちまちゾブチェの両眼を、そしてガメスの左眼を貫いてのけたのであった!
「ぐぎゃわあああああッッ!!」
「ぎげえええええッッ!!」
激痛に両目を押さえながらのけ反るルーナスと両手で左目を覆いながらへたり込むラーナスの仕草はそれぞれが一体化した相棒と同様の苦痛をダイレクトに味わった条件反射であったが、その直後に発生した矢軸の爆発によってそれは数倍に増幅された!
「ひっぎゃああああああッッ!!!」
「のごおおおおおッッ!!!」
さしもの巨猿たちも急所を射抜かれてはさすがに立っておられず、実に左右2本ずつの毒爆矢を浴びたゾブチェに至っては双鞭を放り出して仰向けにひっくり返り、ガメスも直撃は1本のみながら左手から大斧を取り落とし、膝から崩れ落ちた刹那に被爆して大地に突っ伏してしまうのであった。
「\(^o^)/!!」「\(-o-)/!!」「\(~o~)/!!」
「ヽ(´エ`)ノ!!」「ヽ(^o^)丿!!」「ヽ(^。^ノ!!」
「ヽ(=´▽`=)ノ!!」「(/・ω・)/!!」
不幸にも改造の過程で怪人たちからは発語能力が失われていたが、憎んでも憎み足りない怨敵にようやく一矢を報いたことで、一同は生涯最大の咆哮を迸らせながら背負った矢筒に手を伸ばして新たな毒爆矢を番えるのであった。
“よくやったッ!みごとに特訓の成果を見せたわねッ!!
メインターゲット(ゾブチェ)はもはや戦闘不能といっていいから私に任せて、全員で片割れの方にかかりなさいッ──でもアイツは前屈みになってるからムリして突っ込んではダメよッ!オマエたちには到着する鎧刃部隊をサポートするという次なる任務も控えてるんだからねッ!!”
天翔仙翅&毒爆矢の修練と同時に着手していた八戦鬼との精神感応(内実は龍氣師による指令のみの一方通行であったが)によって〈主人〉の意向を瞬時に察した彼らはガメスを深追いすることなく、とりあえず力猿たちの頭上高くに散開しながら様子を窺うのであった。
「あ、兄貴ッ、ラーナスッ、大丈夫かッ!?
い、一体何があったんだッ、両目を押さえてるってことは猛焔弾を顔面に食らったのかよッ!?」
傍らでのたうち回る肉親に自身の痛みを忘れて呼びかけるリーナスであったが、「目がッ!…目が見えねえッ!!」と口走るのが精一杯の長兄と床に突っ伏して「痛え……痛えよぉッ!」と訴えるだけの末弟を目の当たりにしてただただ動揺するのみであった。
『ワケ分かんねえ……二人の様子から見てどうやら目潰しを食らったようだが、一つ考えられるのは凶霊龍が猛焔弾とは別に裏技…おそらく毒噴射を使ったってことか?だとしたらまずいことになったが、幸いオレたちの相棒は全身を頑丈なプロテクターでガードしてるから全身に巻き付かれてもそうそうくたばるモンじゃねえ……となると当然顔面に至近距離から猛焔弾の連射を浴びせてくるだろう……しかし残念だったな、その前に兜のセンサーが作動して現れた鉄仮面がしっかり防いでくれるって寸法さッ!
そして凶霊龍のボディをしっかり押さえてさえいれば、二人が得意な爪攻撃かプロテクター内に隠し持った軍用ナイフでバラバラにしてやりゃあいいッッ!!」
むろん自身も戦闘中であるリーナスは、片膝立ちとなって投擲槍を右手で振りかぶりながら敵の出現を待ち構える──されど1メッツ近く経過しても樹木に閉ざされた前方に何の異変もないため、もしや全ての凶霊龍がルーナスらが陣取る【第二通用門】に向かったのではないかと疑いはじめた瞬間、左斜め上から側頭部に凄まじい打撃を食らったのだ!
「へぎゃげえぇッッ!!な、何だあぁッッ!?」
大きく後方に吹っ飛ばされ、大の字となったザヴァランを立ち上がらせる間もなく第二撃が頭上から振り下ろされるのを認めたリーナスであったが、それは目を疑う光景であった──何と2匹のべジュネオス散躰がそれぞれの尻尾をボーアッグの両足首に巻き付け、いわば巨大なハンマーと化して打ちかかってきたのである!




