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魔龍皇将士団の紋章  作者: 尾岐多聞
第3章 王家の森に果てし者よ……

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第56話 緑の処刑場②

 ベガモ三兄弟は星覇獣国の“異形の兵団”である怪人部隊から凄まじい恨みを買っていた。


 もとより撃退されることが自明であるにもかかわらず王国内に放たれ続ける最大の原因は余人には理解し難いズザ・ビラドの残酷趣味にあるというしかなかったが、“一分の虫にも五分の魂”の諺通り怪人どもにも改(・)造(・)以(・)前(・)よりはかなり希薄化したとはいえ感情というものが残存しており、むしろ任務遂行に必須の〈同志愛〉という一点に絞るなら人間時代よりはるかに強化されていたのである……。


 なお、魔龍皇が彼(・)ら(・)の(・)血(・)に(・)よ(・)っ(・)て(・)穢(・)す(・)派遣先として特に好んだのがマナレック家が神聖視する王家の森であり、当然ながら腕を撫して待ち構えている真紅の魔人や力猿たちにあえなく捻り潰されるという分かりきった結末を酒杯片手に鑑賞するというのが密かな愉しみであったのだが、ツワモノ揃いの“怪人ハンター勢”においてもベガモ家の嫡男・ルーナスの残虐ぶりは特筆されるものがあった。


 そもそも怪人たちのサイズはデカくてもせいぜい1.6ヤーン(約2.5m)余りであるから、1.3

ヤーン(約2m)のダゴードならまだしも十数ヤーンクラスの力猿が対処するならそれこそ一撃でケリがつくはず……なのだが、ルーナスと彼ほどではないにしても気質的に似通うラーナスもまた、怪人どもを徹底的に痛ぶるのを気晴らしの少ない当地におけるこの上ないレクリエーションと心得ていたのだ──とはいえせっかく第一発見者となって遊戯(ゲーム)に熱中していても、たちまち血の匂いを嗅ぎつけて飛んできた長兄によって獲物を横取りされるケースが大半であったが。


 なお、刀槍類を握りしめた怪人どもは無闇矢鱈に森の内部を走り回っては立ち塞がる番人たち相手に玉砕する、というパターンをひたすら繰り返していたが、ルコリト・ユドンに限ってはたとえ発見しようとも自身の手を汚すことなく毎回スルーしていたというのが偽りのない事実で、それはムダな殺生を厭うというよりも絵に描いたような捨て駒として扱われる彼らの哀れな姿に聖獣防衛隊における自身の立場を透かし見たやりきれなさによるものであった。


 されど怪人たちにしてみればいっそボーアッグの慈悲ある一撃によって昇天した方がはるかに有難かったろう──あくまでも昆虫の節足をむしり取るかのような全身関節のヘシ折りに始まって、大剣の刃先を彷彿させる指先の爪による内臓のほじくり出し(ルーナス最大のお楽しみ)に移り、四肢の切断(それも根元からスパッというのではなく必ず手首足首→肘膝という段階を踏むのだ)からのジワジワ斬首というもはや〈生体解剖〉同然の酷烈非道なベガモ方式と比較すればの話ではあるが。


 しかも魔龍皇がこの道(・)楽(・)にハマったキッカケがルーナスによるこの所業を目の当たりにしたことによるとあっては、もはやこれは敵対する狂人同士による卑劣な共同戦争犯罪と断じねばならぬ──そしてその糾弾?に立ち上がったのが意外にも“最強龍氣師”ウォセメル・ワノンであったのだ!


 もとより“星覇獣国一の美女”として(特に)怪人たちから偶像(アイドル)視される彼女(首領の厳重な監視下にあるテュセリーについて彼らは存在すら知らなかった)であったが、“冷徹さの化身”ともいえる彼女にしては珍しく幸薄い異形の兵士たちに少なからず心を痛めていたのであった──尤もそれはペットに対する飼い主の愛情にすぎぬともいえたが。

 一例を挙げれば沐浴を好む彼女は最低でも週に4回(霊法光星では9日)は広大な島内の一角を占める湖に全裸となって長時間浸ることを習慣にしていたのだが、その際には常に追(・)っ(・)か(・)け(・)のごとく最強龍氣師の動向に注意を払っている怪人たちが鈴なりとなって岸辺から賛美の視線を捧げるのであった──とはいえむろん彼らも最初からこれほど大胆であったワケではなく、湖を囲繞する樹木の隙間からオドオドと覗くだけであったのだが、「誇り高き星覇獣国の一員らしく、見たいのであれば堂々と近くに寄りなさい──でも調子に乗って水に入って来たら、可哀想だけどその瞬間に処刑するけどね」という鶴の一声によって〈特等席〉が解放されたのであるが。

 

 はたして魔龍皇将士団最高幹部による、首領の気まぐれによって過酷な運命を強いられる彼らへのせめてもの慰撫の想いの表れかそれとも単なる露出狂にすぎぬのかは定かではないが、長身スレンダーにして豊かなバスト&ヒップの所有者という輝くばかりの(悪の)女神の肉体を至近距離で拝むという眼福にあずかった彼らは勇躍(絶望的な)死地に乗り込んで行ったのである……。


 このような経緯もあって段々情が移ったか、当初は何とも思わなかったらしい怪人たちの末路を次第に気にかけはじめたウォセメルは、ある日思い切って魔龍皇に進言したのである──“せめて爆棒くらいは持たせてやってもらえまいか”と。

 とはいえ彼女としてはそもそも怪人の惨死自体を愉しんでいる首領が聞き容れるはずもないと悲観していたのだがさにあらず、丁度彼としても無限反復される一方的な展開にようやく飽きはじめていたこともあって、何と新開発の天翔仙翅も8機供与するという“大英断”を下したのであった。

 この僥倖を最大限に活かすためには、訓練中に貴重なハイテク兵器を絶対に壊すわけにはいかぬ──かくて女神の仮面をかなぐり捨て、素に近いキャラの鬼教官となった最強龍氣師は、持ち前のきびしい選択眼によってまずは最も頭脳明晰な面々を装着者として抜擢し、更に爆棒を長大化して時限点火装置を埋め込み、巨獣をも屠る猛毒矢の軸(シャフト)として用いるという新機軸に打って出たのであった。


 こうして誕生した〈復讐の八戦鬼〉(ウォセメル命名)であったが、これまでの運用法とは真逆の、完(・)全(・)に(・)勝(・)ち(・)に(・)行(・)っ(・)て(・)い(・)る(・)怪人たちを実戦投入することを魔龍皇はなぜか渋り、過酷な訓練のみを課して今日まで温存していたのであったが、それは今にして思えばこの王家の森攻略戦を期しての深謀遠慮であったのだ、と大いに納得するウォセメル・ワノンであった。


『さあ今こそ、無念の想いを抱いて散っていた同志たちの恨みを晴らすため、そして大恩あるこの私に報いるために磨き抜いてきた技を存分に振るって、あの醜悪な巨猿どもの両眼に【毒爆矢】を思いっきり浴びせてやりなさいッ!

 たとえトドメは刺せずとも、のたうち回るアイツらは我がべジュネオスが確実に葬ってあげるから安心おしッッ!!』

 

 











 


 






 


 




 


 

 

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