↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
魔龍皇将士団の紋章  作者: 尾岐多聞
第3章 王家の森に果てし者よ……

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

51/86

第51話 最強念殺士の回想

「ふふふッ、まさに“決死の突撃”というヤツだな……だがそれが可能だったということは、まさにヴァヅマが老齢ゆえに幻嵐闘術とやらを持続させることに耐えず、もはや突進してくるおまえたちに食らわせることが叶わなかったがゆえか……」


 どこか揶揄するような首領の口ぶりに、魔少年はいつものように何らの感情も混じえず淡々と応じる。


「ええ、空中にて粘っているうちに徐々に風の勢いが弱まってきたものですから隊長らと目で合図し合ってタイミングを計り、それから2メッツ後あたりに訪れた完全な凪の瞬間を逃さず一気に地上スレスレまで降下し、そのまま前方に聳える建造物まで飛ぼうとしたわけですが、当然ながら鬼兵団からの鋼銃(ケニッツ)(ライフル)の猛射を浴びせられまして、元々建物内部で使用するつもりのなかった爆棒を投げまくって応戦しながら突き進んだのです──むろん再び猛風攻撃を食らえばこっちに戻って来てドカン!となるワケですが(笑)、そのリスクはあえてグッと飲み込みまして……」


「なるほどな……だがガデラズらは堅牢な甲冑に身を固めておるが、念殺士(おまえたち)三人は戦闘服姿だったのだろう?……ということはさっきも発現させておったサイコバリヤーを使ったのだろうが、おまえはともかく弟子たちのそれは実戦に耐え得るレベルにあるのか?」


 ここでようやく普段のノ(・)リ(・)を取り戻したらしい最強念殺士は、声音にもその矜持を漲らせるのであった。 


「ははは、それはもう──攻撃力こそわたくしに一日の長があるとはいえ、身を守るための術は殆ど遜色がない段階まで到達しております。実際にアヴェスとモーランも何発か被弾したようですが、掠り傷一つ負うことはありませんでした……とはいえ最(・)上(・)階(・)で(・)は(・)そ(・)う(・)も(・)い(・)か(・)な(・)か(・)っ(・)た(・)の(・)で(・)あ(・)り(・)ま(・)す(・)が(・)……」


「くくく、さもあろう──そして無事穢らわしい黒鳳帝国の走狗どものアジトに侵入し、敵味方入り乱れての殺し合いがめ(・)で(・)た(・)く(・)勃発したというわけか……で、念殺士として立ち合った連中の手応えはどうであった?やはり頭領の愛情がたっぷりと注ぎ込まれた魔薬によってそれなりの強さはあったのか?」


「ええ、そもそも建物自体は3層構造になっておりまして、1階にて我々を歓(・)待(・)してくれたのは百人を超える筋骨隆々の面々でした──まさに鬼兵団の名にふさわしく、それこそ獣獄地帯(ゲドベイラ)に棲息する原魔獣どもをモチーフにしたかのような色とりどりのグロテスクなお面付きの軽金属製鉄兜を被って装甲戦闘服に身を固めた荒くれ紳士の集団が、槍・斧・剣とお好みの得物を手にしてまさに山津波のごとく押し寄せてきたわけです……まるで旧友との再会に狂喜したかのように」


「ふふふ、そうかそうか……で、老魔導士狩りを本任務とするおまえたちはソイツらをかい潜ってひたすら階上を目指したというわけか──尤もガデラズによればおまえ一人で目にも留まらぬ天裂穿弾によって確実に10人は殺ってくれたと感嘆混じりに振り返っておったが」


 この裏話を聞かされた魔少年は、一瞬怪訝な表情となってこう宣った。


「あれ?そんなに少なかったですかね?

 もうちょっと血祭りに上げた気がするんですけれども……まあ隊長が仰るんならそんなもんだったんでしょう。

 しかも親切なことにあの方は自らの班ごと我々に同行して下さいましてね、おかげで2階で待ち受けていたより強力な敵勢を何とか蹴散らすことができました……ああそうだ、その時はじめて気付いたのですが、隊長の右腕のリギャス氏、彼は少なくとも膂力と剣技に関(・)す(・)る(・)限(・)り(・)はガデラズさんに比肩するものを持っているようです……」


「ふむ、よく分かった。そもそもが副隊長であるのだから“候補者筆頭”であるべきだが、改めてそれにふさわしい器量の主であることを自ら証明したわけだな」


「はい…で、むろん我々も引き続き渾身の念擊殺法にて奮闘した次第なのですが、今さらながら接近戦における鎧刃部隊の無敵ぶりには大いに感銘を受けたものでした──といっても鬼兵団が決して劣弱というわけではなく、金剛神丸には当然身体増強成分も含有されているものとみえて皆一様に異常発達した筋肉に鎧われ、体格(サイズ)的にも肉薄するものがあったようでしたが、何というのか、肉体そのものが備え持つ根源的なパワーには大きな隔たりがあったようです……」


 この報告を受けた魔龍皇がギロリとシェリスを睥睨しつつ、今度は自分が得意気な口調となって決めつける。


「それは当然だ──なぜならばガデラズらはそれこそ余が人体構造について持てる知見の全てを注ぎ込んだといっても過言ではない【極剛養剤】を獣肉類主体の食事と共に日々摂取しておるのだからな……そもそもムダに甲羅を経ているだけの浅学非才の徒が苦心惨憺開発したとかいう呪(まじな)い薬などと同列に論じてもらっては困る」


「いえ、決してそのような……」


「ふふ、分かっておる。ま、ともあれ〈星の鬼兵団〉などと名称だけは大仰だが実質は王国軍に毛が生えた程度の力量しか持ち合わせぬ烏合の衆はそれこそ将士団が誇る最強白兵戦団に文字通り鎧袖一触されたというワケだな──むろんその中にはゴシュメル・ナザーグに遣わされた黒鳳帝国の武術師範連中も含まれておったのだろうが、わが手勢のあまりの猛威になす術もなく討ち取られたものだろう……さて、となると残るはヴァヅマの首というわけだが、魔導士改め幻嵐師と名乗っている手前、やはりここで例の猛風(アレ)を繰り出さんワケにはいかんかったであろうな?」


「はい、それはもちろん──ですがその前に、固く閉ざされた彼奴の居室の鉄扉の前に、〈ヴァヅマ様の眷属〉と名乗る四人の若からぬ男女が立ち塞がっていたのです……」


「んん?やけに少ないではないか──鬼兵団の総数が200名としても、二割が魔導士ならば40人弱は存在するはずであろうが?」


「我々も首を捻りましたが、隊長が組織の内情を吐かせるため確保していた鬼兵を尋問して得た情報によりますと、既に六人ほどの免許皆伝クラスの高弟は黒鳳帝国へと移住させ、残り30名の半数は世話係として彼らに同行し、更に半分はナザーグの間諜として目下パヅァルア全土に散っておると聞かされまして……話を戻しますととりあえず先手必勝とばかりに三人で穿弾を乱れ撃ちしていとも容易く奴らを屠ったまではよかったのですが、連中が倒れ伏したと同時にひとりでに扉が開くと空中で浴びたのとは比べ物にならぬ超猛風が真正面から叩きつけてきたのですッ!!!」


 



 

 

 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。