表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
魔龍皇将士団の紋章  作者: 尾岐多聞
第3章 王家の森に果てし者よ……

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

46/48

第46話 龍氣師VS時計師の決闘④

 床も壁も天井も淡いピンクで彩られた10畳ほどの自室の中央で結跏趺坐するテュセリーは身に一糸をも纏ってはいなかった!


 20歳の女性が単身生活するには些か広すぎる室内の雰囲気は高級な家具や寝台に飾られてかなり豪奢な印象を与え、彼女が絶対者の寵愛の対象であることを窺わせるが、やはり星覇獣国という異様な集団の本拠地の一角に位置することからくる殺伐とはいえぬにしろ寂寥たる空気はいかんともし難かった。


 顔の上半分を覆っていた桃色の妖麗なマスクを取り去った彼女の可憐な美貌は輝くばかりであったが現在その双つの瞳は閉じられており、同僚念殺士とは裏腹に龍氣師に匹敵するほどの心眼力を有する彼女の瞼の裏にはありありと最愛の存在が身を置く戦場が映じていた──そればかりか精神感応(テレパシー)も単なる能力者同士によるものとは比較にならぬ精度で交わされ、目下のテュセリーはあたかも婚約者に憑依しているかのごとき感覚を味わっていたのである。


()()()()

 ここからの牙刻流星の操作は私に任せて、どうか流疾刃攻撃に専念してちょうだいッッ!!”


“了解だッ!とにかくチョコマカと動き回るアイツの動きを止めたい──まずは下半身に攻撃を集中してくれッ!!”


“分かったわッ!膝関節を狙えばいいのねッ!!”


“頼んだぞッ!オレはとことん頸部を狙うッ!!”


 かくて怨念の龍氣師の手から再び宙を舞った牙刻流星は既に20ヤーン手前まで迫ってきたレィ・ネウェス目掛けて疾り、直前で鋭くカーブを描くと左膝を切り裂くべく突っ込む!


「むっ、さっきより明らかに(はや)い!

 ──ならばッ!!」


 仮面戦士が左手を飛来物に向けた瞬間、親指を除く揃えた四指から赤紫の閃光が放たれるが、研ぎ澄まされたテュセリーの操念によって駆動する殺刃円盤は神速でそれをかわして闘主の使者の膝頭に炸裂する!


「ぐおッ!し、しまったッ!!」


 慌てて牙刻流星を掴み、これ以上の侵入を阻止しようとするネウェスだが、猛回転している上に凄まじい突進力で食い込むそれを取り外すことは容易ではなく、両手を使い、渾身のパワーを発揮してようやくそれを成し遂げるのであった!


「今だッ!ガラ空きになった素っ首を今度こそ刎ね飛ばしてやるッ!!」


 最愛の存在のサポートを得てこれまでにないほどの“殺念”が宿った蛇擊流疾刃の落下を覚ったレィが膝に食い入った凶器を黒みがかった紫色の体液?を飛び散らせながら毟り取りながら間一髪地面に倒れ込んで死の一撃をかわし、そのままゴロゴロと回転するのを執拗に追う流疾刃──そしてついに標的を捉えることに成功した!


「ぐわああああッ!」


 先端が数百本に分裂していた際にはあっさり撥ね返されてしまった戦闘服(背中側)を1エクト(約1.5cm)の深さで、右肩口から左脇腹へと大きく斬り裂いてのけた流疾刃の増力ぶりは、全体が薄っすらとテュセリーのシンボルカラーであるピンクの妖光に包まれていることからも彼女の助力あってこそであることを如実に示していた──どうやら恋人と一体化したことでニミルドの戦闘力は一気に数倍も嵩上げされた模様である。


“感謝だ、テュセリー!これで奴を仕留めるメドが立った!!

 オレは改めて奴の首を狙うッ!

 君は牙刻流星で背中の傷を更に深く抉ってくれッッ!!”


“任せてニミルドッ!ここで一気に勝負を決めましょうッッ!!”


 阿吽の呼吸によって互いの凶器に必殺の意志を込めた恋人たちは必死に状態を起こそうとする時計師を屠るべく猛襲するが、突如として獲物の全身が凄まじい紫の閃光を放射したことで悲鳴を上げる!


“くおおおおおッ……!だ、大丈夫かテュセリーッ!?”


 既に3年間もの間、肉眼に頼らぬ生活を送ってきた龍氣師はこの奇襲にも瞬間的な視界の喪失と動揺を味わっただけであったが、いかに傑出した技倆を有する念殺士とはいえ今回が事実上の初陣である乙女がこの凶悪な不意打ちを凌げたものか猛然たる不安に駆られたニミルドが必死に呼びかけ続けるものの、常に魂を奮い立たせてくれるあの美声はいくら待っても戻っては来ない──!


“どうしたんだッ!?何があったんだッ!?

 た、頼むッ!どうか応えてくれテュセリーッッ!!”

           ✦

 龍眼の間においても、闘示盤から溢れ返ったこの不吉な輝きを受け、シェリスとウォセメルから呻き声こそ漏れたもののあくまでも画面越しであったためか、視力障害は一時的なもので済んだ。


「やりおったなネウェスめ……やはり人造人間だけに様々な隠し武器を内蔵しているようですね──もしとことんまで追い詰められたなら、躊躇することなく自爆して相討ちを狙うのかも……」


 顔をしかめ、右手で翡翠色の瞳を押さえながら何度も瞬きする魔少年の怒りの呟きに「はたしてそうかな?」と冷ややかに応じた魔龍皇は、「ならばどうして攻撃を受ける度にあのような情けない叫びを上げるのだ?」と畳みかける。


「それは……」と言葉に詰まる秘蔵っ子の返事を待つことなく、首領はこう続けた。


「余の見立てでは、どうやらあやつめ、生粋の人工生命体ではないな……おそらくは元は生身の人間であったのを闘主が捕らえ、好き勝手に()()したものであろう──それこそ聖獣と同様に、な……!」


「な、なるほど……ところでニミルド氏はともかく、この強烈極まる凶光を直視させられたテュセリーさんは無事でしょうか!?

 もし戦線に復帰できないということであれば、わたくしが間接的に援護してもよろしいのですが……!?」


 てっきり先刻と同様の叱責を食らうものと覚悟していたシェリスであったが、絶対者は「そうだな、やってみよ」と小さく頷いたのであった。


「……いかに突出した資質の主とはいえ初戦の相手としては些か荷が重かったか、(あわ)れにもテュセリーは失神に追い込まれてしまったようだな。

 だが幸いにも視神経をはじめとして深刻なダメージは負っておらんようだ──まあこれも魔龍皇将士団の一員として避けては通れぬ試練であるがゆえに、貴重な経験として今後に生かせばそれでよい。


 ふふふッ、されど恋人の力をアテにしきっていたニミルドとしては思わぬ窮地に追い込まれたといえような……しかし将士団において()()最高位を占める龍氣師が、他者に縋って勝利を狙うことなどいかにしても容認しかねる余としては願ってもない展開になったといえようか……!」









 

 



 

 






 


 



 


 







評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ