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魔龍皇将士団の紋章  作者: 尾岐多聞
第3章 王家の森に果てし者よ……

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第45話 龍氣師VS時計師の決闘③

 分裂流疾刃による“刺擊”が失敗に終わった段階で怨念の龍氣師は蛇擊帯を巻き戻しており、牙刻流星の細紐を首に巻かれた妖美の時計師がおよそ3ヤーン(約5m)の高さから大地に叩きつけられた瞬間には彼の背中を今度こそ刺し貫くべく既に真上にあった!


「──死ねえぃネウェスッ!

 もしもキサマがオレの読み通り人工生命体であるのならば情報収集のため頭部だけは斬り落として残し、ゼトゥス誅戮後にゾルゲシタスに持ち帰ってやるわッッ!!」


 ニミルドの喉からかくのごとき勝利の凱歌が迸った刹那、その表情が大きく歪んだ!


「なッ、何ぃッ!?この世で貫けぬモノのない流疾刃が次々と弾かれてゆくだとッッ!?」


 まさしく、獲物の躰に次々と突き立った数百の死の雨は、儚い火花を散らせたのみで標的の皮膚に毛筋ほどの爪痕も残すことが叶わなかったのであるが、それと同時に闘主の代理人の勇姿が微かな陽光が差し込む仄暗い森の底に再び露わとなった!


「キサマ、その姿は……!?」


 魔龍皇が推測したような全裸ではなかったが、躰にぴったりフィットしたメタリックな青紫の戦闘服(バトルスーツ)に頭部に至るまで覆われたレィ・ネウェスは、仮面に象嵌された白銀色の双眸(機眼)を輝かせながら素早く起き上がると見えざる細紐を両手で握りしめて思い切り手前に引く!


「──うぐわッ!?」


 さしもの龍氣師といえど所詮は生身の存在、パワーには大差があるのか一気に数ヤーン近く引きずられたものの、必死に巨木の幹にしがみついて踏み留まったニミルドは憤怒の形相となってまずは本来の姿に戻した流疾刃を大きく振りかざしながら叫ぶ。


「調子に乗るなよデク人形がッ!

 今こそ唐竹割りにしてくれるわッッ!!

 

 ──何ィィィッッ!!??」


 頭上から真っ逆さまに落ちてくる死神の鎌があと6エトス(約10cm)まで迫ったところで何とノールックにて右人差し指と中指の間に挟み込むことに成功したネウェスは、間髪入れずそれを透明紐に叩きつけて切断し、みごと拘束から脱してのける!


「それではこの物騒なオモチャは()()()にお返しするとしましょうかッ!」


 かくて首から外した牙刻流星をサイドスローの要領で投擲した紫の戦鬼は、そのまま左掌を突き出してそれに念力を送るかのようなポーズを取った。


「小賢しいマネをッ……ク、クソッ!流疾刃が全く操作できんではないかッ!?」


「このままではまずい……かくなる上はッ!」


 仲間の危機を前にして意を決した魔少年は、有効かどうかは顧みず大至急で念を集中させて闘主の使者を攻撃せんとしたものの、ギロリと絶対者に横目で睨まれたことでそれを途切れさせてしまう。


「……何をやっておるのだおまえは?

 もし()()()()()()()()()()()()()()()を救けようというのであれば、いかなる了見であるのか説明してもらおうかな……!?」


「そ、それは……」


 むろんシェリスとて周囲からそのような目で見られていることを意識せぬではなかったが、“消された王子”というあまりにも重い逆境への同情とそこからのし上がるために積み重ねられた血みどろの精進への敬意は嘘偽りの無いものであり、ニミルドの勝利に一臂の力を貸すことは決して星覇獣国にとってマイナスではなかろうと思われたのだが……。


「よいか、改めて説諭するまでもないが魔龍皇将士団とは決して巷の無力な愚人どもが組織したがる馴れ合いの運命共同体などではないのだぞ。

 あくまでも頼れるのは極限まで積み重ねられた修練によって我が物とした技倆とそれに裏打ちされた天運のみ──しかも類稀なる天分によってさしたる試練も経ることなく念殺士と成り得たおまえからの助力を受けることが()()()にとって死に勝る恥辱であろうことは首領として断言してもよいぞ……!」


 ここで久々に視線を右へと動かしたズザ・ビラドは、「見るがいい、ようやく生気を取り戻した最強龍氣師も深く頷いておるわ」と満足気に宣うが、ここまで言われてしまってはさすがに魔少年としても反論の余地はなく、「……わたくしが間違っておりました」と引きさがるしかなかったが、このやり取りの間に投げ返された牙刻流星が持ち主の右掌に無事収まったことでホッと胸を撫で下ろしたのであった。


「ふふ、()い奴め……とはいえおまえの言う通り、いよいよ本性を現しおったネウェスにいかにその技が魔性の域に達しておるとはいえ単身で抗うのはさすがに限界があるかもしれんな──だが、我が陣営にあって唯一あのひねくれ者が從容と受け入れるであろう救いの力がある……しかもどうやらそれがついに発動されたようだな……!」


 この不可解なセリフに思わず首をひねったシェリスであったが、ネウェスに動きを封じられていた流疾刃がその鋼の指を逃れて勢いよく跳ね上がったことで全てを悟った!


「ま、魔龍皇様、()()()()()()()()()()()……!?」


 片肘をつき、闘示盤に目を向けたままの仮面の絶対者は含み笑いながら小さく頷いてこう告げた。


「ふふふ、さすがに()()だけに察しがいいな……その通り、性別の相違によるものか力の性質はやや異なるようだが、これまで将士団の秘密兵器として温存してきたあの娘は決しておまえに引けを取らぬ最強クラスの念殺士であるのだ。

 即ち余が先ほど自室に下がらせたのも恋人に助力させるためであったのだが、当然ながら予め示し合わせてあったとみえてニミルドめ、敏感にそれを察知してにわかに勢いづきおったようだな……!」


 

 


 





 

 


 




 


 



 

 



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