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魔龍皇将士団の紋章  作者: 尾岐多聞
第3章 王家の森に果てし者よ……

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第44話 龍氣師VS時計師の決闘②

「──ほほう、なかなかやるではないか。

 もとよりあの〈蛇擊流疾刃(りゅうしつじん)〉は厚さ2エクト(約3cm)の鋼板をもあっさり断ち割る切断力を秘めておるにもかかわらず、何もさせることなく逆に手刀で寸断してしまうとはな……!」


 右頬肘をつきつつ、悪魔のように尖った爪を黒マニキュアで染めた左人差し指でコリコリと漆黒の龍面を掻きながら愉快そうに宣う首領とは対照的に表情を引きしめた魔少年は、「あっ、駆け出したッ!」と短く叫ぶ。


「ネウェスめ、どうやら一気に距離を詰めて得意の接近戦に持ち込む算段のようですね──しかもとんでもないスピードだッ!

 ですが手刀による反撃が無い分、却ってこの方が流疾刃をヒットさせやすいのでは……!?」


「たしかにな──ま、奴の挙動はニミルドも当然把握しておるであろうから、ここは自身が編み出した影陣殺闘法とやらの真髄を見せる好機といえよう……おっ、早速蛇擊帯に変化が生じたぞッ」


 まさしく紫の妖刃はまるでそれ自体が意思を有しているかのようにグワッと突然急上昇すると同時に()()()()()()()、その極細の1本1本が“死の雨”と化して猛突進するネウェスの頭上から降り注ぐ!


「や、やったッ!奴のコートがおそるべき紫の凶針によって文字通りメッタ刺しにッ!!

 更に体内に潜り込んで散々掻きむしった後に再び流疾刃となって内部機構をズタズタに切り裂けば、いかに人工生命体といえど機能停止は免れぬはずッ……なッ、何ィッ!?」


 さしもの念殺士シェリス・エルアーにとってもこの光景には意表をつかれた──みごとに妖美の時計師に致命傷を与えたと思われた数百に分裂した蛇擊帯が刺し貫いたのは彼の抜け殻(コート)のみであったからである!


「──き、消えたッ!?

 そんなバカなッ……しかし現実に透明化能力を備えているとしたら、やはり奴は闘主軍の人造人間であることが完全に証明されたワケだッ!」


 されど今まさに自身が戦っているかのごときシェリスの動揺をも嘲笑うかのようなズザ・ビラドの一言が挟まれ、緑衣の魔少年は思わず瞠目させられるのであった。


「くくく、よもや闘主の代理人ともあろう者がかくのごとき子供騙しの策に打って出ようとはな──ということは、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()というわけか……ま、そんなことはどうでもいいが、シェリスよ、よく見ているがいい──我が将士団に犇めく能力者たちの誰よりも強力な龍氣師の〈心眼〉の威力をな……!」


 その時彼我の距離は125ヤーン(約200m)ほどに縮まっていたが、たとえ透明化せずとも巨樹に遮られてネウェスの姿は捉えられぬはずであった──されどまるでその瞬間を目撃したかのようにニヤリと不敵な笑みを浮かべたニミルドは、左人差し指で蛇擊帯をキープしながらまたもや右手を懐に突っ込んで()()を掴み出したのであるが、それは完全に透明な物体であっておよそ掌サイズであろうということ以外判然としない……。


「──魔龍皇様、あれは?」


 2等分された闘示盤のうち右半分を更に2つに割って両雄の姿が克明に映し出されていることでシェリスのこの問いが発せられたわけだが、仮面の首領は「まあ自分で確かめるがいい」と返したのみで彼自身の心眼の行使を促す。


「……」念殺士を名乗っているにもかかわらず、自身が有する幾多の異能においてもなぜか〈心眼透視〉を不得手とするシェリスにとって、ニミルドが手にした武器の形状そのものを正確に見抜くことは困難であったが、それが(予め予想した通り)水晶製?の円盤であることだけは朧げに掴めた。


『ということは、あれは投擲用の殺人カッターか?だが高速移動力を誇る相手に投げつけたところであっさりかわされてしまうのでは?──それとも念殺士(われわれ)並みの念動力を発動させて自在に操ってみせるというのか?』


 このような詮索を巡らしているうちに、怨念の龍氣師はあたかもアンダースローの投手を彷彿とさせるフォームで素早く右手を振り出していた!


『やはり投げたな──はたしてネウェスの反応は!?』


 されど残念ながら彼の透視力では妖美の時計師の現状を捉えることができぬ……ニミルドが放った凶器がみごと命中し、敵の透明化が解けぬ限りは!


 次の刹那、全ての現象を()()に収めているのであろう魔龍皇が呟いた──「ほうニミルドめ、また一段と腕を上げおったな……やはり余が睨んだとおり、奴の適性は殺闘法(こちら)にあったようだわ……!

(()()を哀願するかのようなシェリスの視線に苦笑しつつ)

 ふふふ、栄えある魔龍皇将士団の大幹部ともあろう者が間違ってもそのような物乞いめいた目つきをするものではない──つまりだな、ニミルドの(ほう)った二十角形の【牙刻流星】には伸縮自在にして鉄鎖をはるかに超える剛性を備えた見えざる細紐が結び付けられており、加えて奴の手を離れると同時に猛回転しつつ短いながらも蛇擊流疾刃に匹敵する切れ味を誇る鋭刃を屹立させて獲物に襲いかかるのだが、それを察したネウェスが上方へ跳躍したのを逃すことなくその首っ玉に紐を絡みつけたのだ──さて、どうやら奴め、とりあえず地面に叩き付けてのけた相手を今度こそ流疾刃で八つ裂きにしてやる腹積りのようだな……!」










 

 

 


 






 

 


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