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魔龍皇将士団の紋章  作者: 尾岐多聞
第3章 王家の森に果てし者よ……

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第43話 龍氣師VS時計師の決闘①

 15年前、4歳の自分を棄てたガドゥア・マナレックを血反吐を吐きながら習得した操龍術によって焼殺し、積年の怨念を晴らした“消された王子”ニミルドは、次なる標的である元兄(ゼトゥス)を葬るべく進軍中の19体のグローメズ散躰が()()()()()()()()()()()()()のを悟った。


 パヅァルア王家を誅戮できる唯一の存在にして恩人であるズザ・ビラドの覇業に参画するべく、何としても就かねばならなかった龍氣師となるための酸鼻を極めた修行の過程で失った光──それは晴れて星覇獣国三人目のその座を得た褒賞の一つとして魔龍皇から授けられた天地徹鏡(ロペール)の、網膜を介することなく脳内の視覚野に直接映像を届けるという妖力によって充分埋め合わせられていたが、仮にそれを失ったとしても龍氣師の異能の一つである〈心眼力〉によって行動に不自由を覚えることは些かもなかったのである。


『──ぬう、グローメズを魔龍皇様が……!?

 ということは……我が身辺に闘主からの刺客、つまりレィ・ネウェスが迫っているということかッ!?

(ここで意識を周囲の森に向けたニミルドは、背後からひたひたと接近して来る気配を察して不敵な笑みを浮かべる)

 ……ふふふッ、オレがガドゥア処刑の際に仕掛けたちょっとした悪戯は楽しんでもらえたかな?

 ま、そもそも侍医に成りすましたワドロウに因果を含められた無能な王宮死守兵団ごときが“闘主の代理人”を止められるはずもなかったが、操龍術と並行して磨きに磨いてきた【影陣殺闘法】をもってすれば必ず地獄に叩き落とすことができよう──さて、それではまずは小手調べ、いや歓迎の証として【舞烈蛇擊帯】をお見舞いしてやるか……!」


 こう独語してローブの懐に右手を突っ込み、幅2cmほどのメタリックな紫の光沢の薄布?が分厚く巻かれた直径6cmほどの金属円盤を取り出した龍氣師は、真ん中に開けられた穴に左人差し指を挿し込んで眼前に翳すと低く解読不能の呪文を唱え始める──すると数秒後、円盤が回転を開始して(あやかし)の布がシュルシュルと解き放たれ、あたかも蛇が水面を泳ぎ渡るかのように空中を疾走し始めたのだ!


「さあて、我が()()()たるレィ・ネウェスよ、いわば道糸と釣り針が一体化したこの魔布から逃れることができるかな?

 くっくくく、一旦蛇擊帯(こいつ)に睨まれたが最後、獲物たるキサマは釣師であるオレの下へと有無を言わせぬ力によって引き寄せられる運命なのだ……!」


 黒みがかった渋い紫色の雷牛製コートのポケットに両手を突っ込んで歩を進めていた妖美の時計師は、前方からひらひらと接近してきた奇怪な長布を一瞥すると目を丸くして立ち止まる。


「こりゃまた変わった技を繰り出してきたものだ──しかもあの不吉な光沢からして、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()……!」


 微笑しながらこう呟いたレィ・ネウェスは、両手で手刀を形作ると胸前に掲げ、両足を軽く開いて迎撃態勢を取った──。

           ✦

「……いよいよ始まったな。

 しかしあの〈特殊暗器〉に徒手空拳で立ち向かおうとは、はたして闘主軍には武器不使用令でも発布されておるのであろうかな?」


 こう冗談めかす魔龍皇に、気を取り直した?少年念殺士も含み笑いながら応じる。


「ふふふッ…さすがにそのようなことはありますまいが、これまで確認された十数件の実戦譜において、たしかに奴が何らかの凶器を使用した形跡は見受けられぬようです。

 ま、そもそも相手が魔薬中毒のゴロツキや物取り強盗の三流剣士、少し格が上がって傭兵崩れの酒場の用心棒や王宮死守兵団長あたりにすぎんワケですから当然と言えば当然ですが。

 されど私の見立てでは、彼奴めが本気になればあのダゴードとも五分にやり合えるのではないかと睨んでいる次第でして……!」


「ほほう、それは興味深いな。

 ということは、おまえは()()()()()()()()()()()()()()()()と踏んでおるというわけか?」


「──おそらくは。

 ですがその真相もこの戦いによって明らかになろうかと……おお、やはりこの動きを見る限り、少なくともネウェスが何らかの生体強化措置を施されていることだけは確かなようですね……!」


 漆黒の鏡晶珠からリアルタイム送信される、やや上方の角度(アングル)から妖美の時計師を捉えた映像によって魔少年シェリスの持論は早くも証明されたかに見えた──なぜならば()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()蛇擊帯を、闘主の使者はそれ以上のスピードでかわしながら左右の手刀で瞬く間に数十片の切れ端へと刻んでしまったからである!

 

 


 



 




  


    





 

 


 

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