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魔龍皇将士団の紋章  作者: 尾岐多聞
第3章 王家の森に果てし者よ……

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第36話 戦景眺映士の覚醒

「な、何ということだ……!

 総勢百数十体も出動していた巨鳥たちが瞬く間に10分の1以下にまで激減するとは……!!

 し、しかもこの凶霊龍が放ったのは魔龍皇が鏡晶珠を使って披露してみせたのと同様の大技──そ、そして絶大なパワーを誇る巨大な凶霊龍によって発生した死の渦は、あたかも海洋におけるそれが堅牢な船舶を吸い込むかのように屈強な巨鳥たちをその内部へと吸収してしまった……!!」


 新国王が怒りよりも呆然たる表情となって闘示盤に向かって呟いた時、彼の右手首に巻いた白い響鳴石が小さく振動して〈着信〉を告げた──視線を落として確認すると楕円形の画面に映っているのは予想通り守護隊長を務める真紅の魔人・ダゴードである。


「……」


 無言で横に首を振る沈痛な表情によって不吉な予感が的中したことを知ったゼトゥス・マナレックは、これも無言で頷くと石を軽くタップして接続を断つ。


()()()()()()()()()()()()()……」


 背後からの小さな呟きに無言を貫くことで返答に代えたゼトゥスは、長年王国を支え続けてくれた筆頭聖獣師への深い哀悼の念と精神的支柱を失った聖獣防衛隊の今後に対する危惧、そして全ての元凶たる魔龍皇への凄まじい怒りに激動する胸中を鎮めかね、両腕を組んだまま背中を丸める。


 一方、主君以上の悲嘆に打ちひしがれているはずの少女聖獣師はひたすら鏡晶珠操作に集中することで辛うじて精神の崩壊を押し留めていたのであった。


『もうこれ以上、大切な人たちが犠牲になるのを見ていられない……こんなことあるはずがないと信じていたけれど、最も偉大な聖獣師である師父様が斃れた以上、()()()の身にも何が起きるか分からない……!

 でも…でもそんなことがあっちゃならないのよッ!

 もしそうなったらあたし、ほんとうに独りぼっちになっちゃう……いやッ!それだけは絶対にイヤッ!!

 だからこそ……そうならないために、あたしも戦うッッ!!!』


 固く決意したパレル・ラツォーロは、震える声音ながらも断固とした口調で若き王にこう言上する。


「……国王様、かくなる非常事態に見舞われましたからにはこのわたくしも一聖獣師として戦列に加わりたく存じます。


 さりとて未だ未熟者の域を脱せぬ身と致しましては、戦景眺映士として任務を果たしつつ光線攻撃を駆使するのは至難でございまして、その際における画像にかなりの乱れが生じますことは避けられぬと推測されます……いかがでございましょう?あくまでも眺映士の本分を全うせよと仰るのであれば当然ながらそれに専念する所存でございますけれども……」


 この命懸けの具申に対し、ゼトゥスは即答した。


「よろしい、直ちにラワート部隊長に対し、私の許可を得ていることを告げた上で参戦せよ──なお、それによる画面の乱れについては何ら斟酌する必要はない。

 実は私も君に攻撃命令を下すべく機を窺っていたところなのだ……さあ、戦景眺映士のみならず聖獣師としての端倪すべからざる技倆を今こそ王国のために役立てておくれ……!」


 数年来の燃えるような思慕を寄せる天上人からかくのごとき熱い激励を賜った銀髪の美少女は、両掌を床に着けて叩頭しつつ、「か、かしこまりましたッ!」と叫ぶのだった。


           ✦


 戦場に散開する王国側の無色透明な鏡晶珠の気配に微妙な変化が生じたのを魔龍皇は見逃さなかった。


「ふふん、あの目障りな石塊(いしくれ)ども、どうやら中継係は一旦棚上げにして攻撃に転じるつもりだな……尤も大したことはできまいが、ウォセメルよ、一応注意せよ」


「──はっ、承知しております」


 満腔の自信を込めて頷く愛弟子に、ズザ・ビラドは重ねてこう助言する。


「さしものべジュネオスも必殺奥義を行使したからには龍魂素界からの新たな精力注入が必要だ──したがって巨鳥部隊(れんちゅう)との決着はグローメズが到着してからでよかろう……それまではこのバチ当たりな森の中を優雅に散策でもしながらじっくりと鋭気を養うがいい……」


「はい、そうさせて頂きます──」


 かくて非情で鳴る絶対者から温情指令?を受けた群龍どもは敵への威嚇のためであろう、互いの尻尾を噛み合う“ウロボロス状態”を維持したまま、あたかも魔神が御する巨大な馬車の車輪のごとく高速回転しながら目と鼻の先にまで迫った王家の森へと降下してゆく……!


『師父様が常々仰っていた──あの魔技を破る方法がただ一つだけあるッ!

 そしてそれは、闘神が放つ光の矢に喩えられる鏡晶珠の穿孔光線を凶霊龍の眼球へと精確に撃ち込むことであるとッ!!

 さあ覚悟して受けるがいい呪われし魔物どもよッ!筆頭聖獣師の薫陶を受けて磨きに磨き抜いたこのパレル・ラツォーロの渾身の一撃をッッ!!!』


 現在稼働中の渦呪螺は11組だが、パレルは操る27個の鏡晶珠を9等分して3個ずつのそれを超高速で回転させつつ敵と同じ面積の円を描くと同時に穿孔光線を一斉乱射する!


 ただでさえ困難なこの狙撃を成し遂げるには標的に可能な限り接近する必要があり、そしてそれは脱出不可能な魔性の渦巻へと呑み込まれるリスクを踏み越える勇気が必要であったが覚悟を決めたパレルはみごとに心理的障壁をクリアし、まずは2組の結合解除に成功したのであったが、それを待っていたかのように間髪入れずミコーレ&ジェルマー、リュガナ&ヨシュアが真上から神速で急降下し、その鋭利極まる翼刃によって群龍どもの首を刎ね飛ばしたのであった!


 


 




 



 




 


 



 

 

 

 





 

 

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