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魔龍皇将士団の紋章  作者: 尾岐多聞
第3章 王家の森に果てし者よ……

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第34話 “戦慄の凶霊龍”べジュネオス

 22体の臙脂色(飛翔中は半透明)の巨大妖蛇を彷彿させる群龍たちが戦闘許可区に侵入すると同時にミコーレ・ラワート部隊長は絶叫した。


「熱閃煌破弾発射ッ!

 撃って撃って撃ちまくれッッ!!」


 それに応えて色彩豊かな巨鳥たちのボディカラーに準ずる破壊光弾が一斉に凶霊龍へと七色の流星雨のように降り注ぎ、(いたずら)な火災を防ぐべく広大な大地剥き出しゾーンとなっている許可区が豪快に抉られてゆく!

 されど三大凶霊龍中最も俊敏なべジュネオスは、四方八方にグネグネと超高速でのたくる奇怪な舞いのごとき神業的な体移動によってそれら全てを(くぐ)り抜け、あと僅かに迫った王家の森への距離をじわじわと、だが着実に縮めてゆく……。


「ちっ、何という回避能力だッ!

 デタラメに飛び回ってやたら猛焔弾を吐き散らすだけの愚鈍な蒼龍(ユゴラーザ)とはまさに雲泥の差──このままでは森に這い込まれて姿を見失い、聖門王国の代名詞ともいうべき名所が焦土と化してしまうッ!

 されど眼下の敵に真空殲刃舞は使えない……かくなる上はッ!!」


 血筋ゆえか他メンバーよりもはるかに王家の森への愛着が強い“貴族聖獣師”ジェルマー・ゴラノは、文字通り身を挺して敵の進軍を阻止すべく地上すれすれまで急降下するが、彼直属の使役者たちも一糸乱れぬ動きで半数が聖獣師に追従し、残りは上空からの攻撃を継続する。


「よしッ、たしかにこのままじゃラチが明かんッ!

 あたしたちもゴラノ隊同様の態勢を取らせてもらおうかッ!フォートン、アンタは上から狙撃隊の指揮を頼むッ!!」


 ユゴラーザ誅滅を成し遂げて合流していた献身的なサブリーダーが「了解ッ!」と呼応し、六人の聖獣師たちも嘴と鉤爪に必殺の意志を込めて舞い降りる──そしてここでも大器・リュガナの電光石火のスピードは天才・ミコーレをも凌ぎ、いち早く降下していたジェルマーと殆ど同時に凶霊龍に襲いかかった……かに見えたが!?


「な、何ィィィッッ!?」


 七人の聖獣師が驚愕にくわっと(まなこ)を見開いたのもムリはない──見よ、窮地に陥ったかに見えた群龍どもはまるで7体の主力級巨鳥たちと入れ替わるかのように尻尾で大地を蹴って急上昇に転じたのである!


「──し、しまったッ!!」


 ミコーレらがなす術なく標的を見上げるのに符節を合わせるように滞空組も恐慌をきたし、さりとてリーダーへの誤射をおそれ煌破弾も放てずに固まってしまう。


「引っかかったわねバカ者どもがッ!

 私はひたすらこのタイミングを待っていたのよッ!!」


 勝ち誇ったウォセメル・ワノンの絶叫が龍眼の間の張り詰めた空気を揺るがし、いつの間にか戦場に移動していた漆黒の鏡晶珠によって、魔龍皇らも心眼での観戦とは比較にならぬヴィヴィッドな映像を堪能していた。


「──ふふふ、これで決まったな。

 ここから連中は骨肉相()む地獄をのた打ち回ることになる……。

 シェリスよ、よく見ておくがいい、これがまことの龍氣師の戦い方だ……!」


 傍らに立つ、念殺士を名乗る魔少年に凄みたっぷりに告げたズザ・ビラドは、侍女の酌を受けながら声色を慈父のごとく一変させてこう呼びかける。


「うむ、どうやら瓶も空になったようだな。

 テュセリーよ、ご苦労であった。もう部屋に退ってよいぞ……そこでもうすぐ大一番に臨む恋人の武運を祈ってやるがいい……!」


「はッ…はいッ!ありがとうございます……そ、それでは失礼致します……」


 一瞬電撃に打たれたかのように硬直し、そして深々と頭を下げたピンクの仮面美女は酒瓶を抱いたまましずしずと5歩ほど後ろ向きに歩み、ゆっくり踵を返して開いたままの入り口へ進むと、再び慇懃に一礼してから退出して行った。


「テュセリーさんは心からニミルド氏を愛しているようですね……結婚を許可なさるのですか?」


 取り澄ました表情でいっぱしの口を叩く小僧にしゃらくさいとばかりに「ま、奴の戦功次第だな」とそっけなく答えた絶対者は、「見よ、最強龍氣師の技の冴えを」と顎をしゃくって闘示盤への注意を促す。


「おおっ、これは凄まじいッ!

 な、なるほどッ、骨肉相食むとはこういう意味だったのですかッ!!」


 それはまさしくこの世のものならぬ魔界の戦闘風景であった──あたかも大型ミサイルが発射されたかのごとき一斉大跳躍によって狙いを定めた巨鳥に飛びかかったべジュネオスの散躰は、まるで大蛇が巨木に絡みつくかのように頸部に胴体を巻き付けて瞬時にヘシ折ると同時に猛焔弾を発射して別個体を火ダルマにし、次の刹那には第三の巨鳥へと神速で飛び移ってまたもや絞殺しつつ4体目への焼殺もやってのける……こうして無残にして効率的な連続処刑を果てしなく繰り返してゆくのであったが、この死の連鎖はまさに兄弟間で致命的な疫病が伝播するかのごとくであった!


 

 

 

 

 

 


 


 




 


 

 








 

 

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