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魔龍皇将士団の紋章  作者: 尾岐多聞
第2章 見えざる悪鬼の影

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第30話 激突!聖獣師VS龍氣師⑫

『で、でかしたッ!そうやって三下に全身を纏い付かせて拘束していれば、気色悪いベタベタした馴れ合いで結びついた連中のこと、煌破弾はおろか例の切断技も使えはせんだろうッ!


 よ〜しよしよし、そのままの体勢で注意だけは怠らずに目的地まで移動するがよい……ふうむ、どうやらユゴラーザは私の深層意識を先読みして行動するという新たな進化段階に到達したものとみえるな……するとあの一見無謀な猛焔弾の乱射も敵を至近距離におびき寄せるための手段だったというわけか。


 どうやらこれで最古参龍氣師としての面目は示せたといえそうだ──かくなる上は王家の森へと一番乗りを果たし、あの広大なエリアを火の海と化してマナレックに目にもの見せてくれようかッ……のあぁッッ!?』


 一瞬勝利感に浸るものの即座に覆されるというパターンがまたも踏襲され、後生大事に聖獣を抱えていた凶霊龍どもの喉奥からギギャギャギャギャギャアァァッッッ!!!という魔界の歯車が軋んだかのごとき悲鳴が迸り、その背中から黝い血煙が噴き上がって清らかな蒼穹を醜く染め上げる──既に最初の標的を仕留め終わっていた(ミコーレが部隊の秘密兵器と期待をかける寡黙なリュガナに至っては既に2体を龍魂素界に押し戻していた)四人の聖獣師たちが猛然と襲いかかり、万一の際には全責任を負う覚悟で斬りつけたのだ!


 これはユゴラーザの散躰がべジュネオスやグローメズと異なり有翼であるから踏み切れた戦法であったが、むろん一歩間違えれば絡みつかれた部下の躰に深傷を与えてしまうことにかわりはない。

 されど細心の注意と鍛え抜かれた技倆によってそれは回避され、大量出血によって戦闘不能に陥った群龍どもは地獄の抱擁を解いて速やかに消滅するかに見えた──されど7体のそれは死力を振り絞って獲物の喉元に毒牙を立てようと試みたのである!


「させるかァッッッ!!!」


 既にこの展開を読んでいた聖獣師たちは真空の刃ではなく自らの翼を剣と化し、文字通り光の速さで散躰ユゴラーザの首を次々と刎ねてゆくのであった──そしてここでも朱色の筋肉女戦士の動きは突出しており、彼女の相棒にふさわしく部隊随一のマッチョボディを誇るバジェギオは何と3つも仕留めてしまったのだ!


『う〜む、何とも凄まじい……!

 常々部隊長(ミコーレ)が漏らしていたように、リュガナの技は1日どころか1メッツ単位で進歩しているようだ──このまま行けば、遠からずあの子が防衛隊最強者の称号を奉られることは間違いなさそうだな……尤も本人は他者からの評価など元より眼中に無く、したがって名誉欲とも無縁の存在であるからハナから関係ないのだろうが……。


 しかし、こんな感慨をかつての教え子に対して抱くのはそれこそ主任教官として失格だが、その超俗的な人格と超絶的な業前に羨望の念を禁じえん──リュガナよ、()()()()()()()()()()()()()()()()()()……!?』


 あたかも濃紺色の愛鳥デオーズンを守護するかのように眼前に君臨するバジェギオの勇姿を複雑な想いで見つめるアギム・ディークスであったが、もちろん彼はこの事実に気付いていなかった──即ち、リュガナが既婚者である彼に静かな、されど熾烈な恋心を燃やしていることを……。


           ✦


「──どうやら決着はついたようだな。

 さてイヴェロイよ、誇り高き龍氣師の名誉をこれ以上考えられぬほどに貶めた罪をどう償うつもりだ?


 むろん任務を仕損じた魔龍皇将士団員に一切の言い訳が赦されぬことは理解しておろうな……つまり、余が訊きたいのはキサマがどう身を処すつもりであるのかということだけだ──さあ答えてもらおうか、イヴェロイ・ドゥヌバよ……!?」


 ズザ・ビラドの有無を言わせぬ詰問に、全身をワナワナと震わせる隻眼の中年男は何らの言葉を返すこともできぬ──今この瞬間、彼の脳中ははじめて聖獣防衛隊に喫した完敗への衝撃と同時にある拭い難い疑念に囚われていたのだ。


『あ、あれだけオレと深い絆で結ばれていたユゴラーザがどうして土壇場で背いたのだ?

 も、もしや魔龍皇様はオレを排除するため強引に凶霊龍を乗っ取り、故意に敗北させたのではないか……!?

 そ…そうだとしたら、なぜなのだッ!?

 これほどまでに星覇獣国に尽くしてきた腹心をどうして切り捨てようとするッ!?

 それほどまでにウォセメルやニミルドが可愛いのかッ!?


 い、いずれにせよじっとしていては間違いなく殺られるッ──かくなる上は何としてもこの魔島を脱出して再び龍魂素界に参入し、今度こそ魔龍皇(こいつ)を凌駕する超龍氣師となって受けた恥辱を千倍にして返すのだッッ!!』


 全てを失い、そして狂乱したかつての龍氣師は胡座をかいたままジリジリと後退り、ふいに立ち上がると踵を返して通常の戦闘時とは異なり、()()()開け放たれたままの入り口に向かって脱兎のごとく駆け出した──そして残り1ヤーンまで迫ったところで、廊下からスッと現れて立ち塞がった緑髪の美少年がそっと突き出した右人差し指の先がまるで蛍のように(みどり)色に発光した刹那に硬直し、ゆっくりと仰向けに崩れ落ちたのである!

 

 




 


 


 



 




 


 

 

 

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