第29話 激突!聖獣師VS龍氣師⑪
白銀の巨鳥によって30個近い鏡晶珠が粉砕されたものの、最も高空に位置していた6個がしぶとく生き残り、魔龍皇は会心の勝利を堪能しつつ自ら祝杯を挙げる。
「ふっふふふ、狙い通りとはいえ何とも呆気ない……しかし既に我々を取り巻く状況はキサマと遊んでおられるほど悠長なものではないのでな、早々に切り上げさせてもらったぞ。
更にこれは言わずもがなの指摘かもしれんが、巨鳥に施された魔改造とやらもたしかに対鏡晶珠に関する限りでは見るものがあったとはいえ、決してそれ以上のものはなかったようだ──ここから判断するに、パヅァルア王室の背後に潜む外星人どもはもはや老残のオマエに何らの期待をも寄せてはおらなんだということであろう……。
さて、成長著しいニミルドも地中から新国王に迫るという奇手を披露して頼もしい限りだが、父に続き兄への報復に夢中になるあまり、不吉な影がひたひたと忍び寄っているのに全く気付いておらぬ模様だな……しかし闘主の使いっ走りにすぎぬ時計師ごときに後れを取るようでは、とても真の龍氣師とはいえんぞ──はたして一廉の相手との初の近接戦闘においていかなる技の冴えを見せてくれるものか、我が心眼にてじっくりと観せてもらうとしようか……!」
共に巨鳥部隊との戦闘中であっても実力のピークに達しつつあるウォセメルはしっかりと闘示盤を視界に捉えていたが、一方のイヴェロイはそれどころではなく、龍氣師となって初めて完全なる敗北──そしてその向こうに待ち受ける〈死〉を明瞭に意識し始めていたのである……。
追い詰められた13体の群龍どもは操者の精神の混乱を忠実に反映したかのように天空を狂ったように乱舞し、大量のエネルギーを消費する究極猛焔弾を惜しげもなく連発していたが、実はこれは龍氣師の意思ではなかったのであった!
『な、何ということだ……あのように途切れることなく猛焔弾を乱発していては、本来の属性に相反する散躰となっている現状では半日もせぬ内に実体化を維持する基礎体力すら喪失してしまう──だ、だが私が連続発射中止を試みようとしてもユゴラーザ自身がまったく受け容れようとせぬ……こ、このような事態は全く前代未聞、はたして一体何が起きたというのか──!?』
文字通り進退極まり、あたかも石像のごとく固まってしまった古参幹部を横目でジロリと一瞥したズザ・ビラドであったがそれも一瞬のことで、画面に向き直ると残った6個の漆黒の怪球を急降下させて王家の森にまんまと潜り込ませたのであった。
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部隊長が身をもって手本を示してくれたように真空刃殲舞の有効性は明らかであったため、四人の聖獣師たちはエネルギー効率も考えてこの技に絞って“蒼き凶霊龍”を屠ることを決定したが、破壊力の高低はともかく(聖獣師と第六段階使役者においてすら倍以上の威力差があるとされる)熱閃煌破弾よりもはるかに高難度のこの切断技を単独でこなすのは聖獣師以外不可能であるため、スレイツ&アギム&ムウェレ&リュガナ以外は彼らに続く位階の使役者たちが指揮を執る形で集団アタックをかけることになったのである。
そして“天才”ミコーレほど鮮烈な技のキレではないにせよ各聖獣師たちは順調に荒れ狂う凶霊龍どもを斬り刻んでいったのであるが、正規の指揮官である彼らがローンバトルに転じたことで隊の足並みに乱れが生じた──これまでは第四段階使役者(彼ら以下の位階ではそもそも聖獣と一体化すら不可能であるため当然出動していない)でさえも容易にかわしていた猛焔弾に、直撃こそ免れているものの被弾する巨鳥たちが現れたのである。
「や、やったッ!
バカめッ、庇うべき手下どもを見捨てて勝手な行動を取るからだッ!
見るがいい、連中のアタフタしたブザマな挙動こそがキサマら聖獣師の指導力の拙さの無残なまでの証明だわッ!!
──お、おおッ!?」
イヴェロイが発した驚愕の叫びこそが凶霊龍がもはや彼の支配下にないことを何よりも雄弁に物語っていたが、現在生き残っている7体は殺到してくる巨鳥群を飛び道具を駆使して巧みに牽制しつつ、最も未熟な使役者によって駆動する聖獣を精確に見極めて絡みつくや、渾身の力で絞め上げたのであった!




