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魔龍皇将士団の紋章  作者: 尾岐多聞
第2章 見えざる悪鬼の影

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第28話 激突!聖獣師VS龍氣師⑩

「うぐおおおおッ!……ぬはあああぁッッ!!」


 ロズガが凶々しき漆黒の焔に包まれると同時に、愛鳥との紐帯を断ち切られてしまった瞑闘室内で結跏趺坐の態勢にあった筆頭聖獣師の端正な風貌が苦悶に歪むと、あまりの激痛に前のめりとなったナージェムは全身を痙攣させつつ、既に修復し難い亀裂の入っていた自我が完全に崩壊しつつあるのを感じていた。


『はあああぁッ……たとえ相手が最強存在である敵の首魁であったとはいえ、またしても、またしても敗北の恥辱に(まみ)れようとはッ……!

 か、かくなる上は、もはや私に筆頭の冠どころか聖獣師を名乗る資格すらない……』


 聖獣から強制分離された以上、ロズガの様子を知るには小型闘示盤に送信される愛弟子(パレル)が操作する鏡晶珠の映像によるしかなかったが、焼け爛れた全身から何ヶ所も細い煙を上げる愛鳥の骸を一瞥した途端、悲痛な表情のナージェムは天を仰いで瞑目する。


『すまぬ……私の注意が行き届かなかったばかりにおまえをこのような目に遭わせてしまった……さ、されどロズガよ、()()()()()()()()()()()()()()()()……!

 

 と、とはいえまさかこの段階で魔龍皇めが切り札を投入してこようとは全くの想定外であった──超凶霊龍の登場はゾルゲシタス攻防戦まで無いと踏んでいたのだが……。


 や、やはり例の“闘主の代理人”が動き出したことに彼奴なりの危機感を覚え、何はともあれ聖門王国との決着を一気につける気になったということか……うぐッ!


 今日まで彼…レィ・ネウェスが闘主の、そしてこのルゼルク・ナージェムが聖獣防衛隊を代表して折衝役を担ってきたわけだが、私が名実共に身を退く以上、新たな人物に重責を託さねばならんが……部隊長のミコーレが未知の外星人との意思疎通に常に求められる、緻密にして臨機応変な対応能力を欠いている以上、やはり適任なのは明朗闊達にして沈着冷静な、部隊一の人格者であるヨシュアしかおらんか……ふ、ふふ……だが所詮こちらに選択権はなく、我が運命を知った闘主が私のケースと同様に、独自に後任者を指名してネウェスに接触させるのであろうな……ぐほぁッ!』


 狭い室内に仰向けとなって瞑目し、荒い呼吸を繰り返す老聖獣師の朦朧とした意識を占めているのは史上最悪の危機的状況にある王国への危惧と新国王の眼前に晒してしまった自身の不甲斐なさへの慙愧の念、そして娘同然の存在である“真の後継者”パレル・ラツォーロへの想いであった。


「は、栄えある聖門王国の守護者たる聖獣師の資格を喪失した今、私がゾルゲシタス制圧作戦に加わることはあるまいが、()()()にはその分まで粉骨砕身してもらわねばならぬ……ど、どうか…どうか姉と慕うミコーレと共に、いつまでもゼトゥス様をお支えしてくれ……た、頼んだぞパレル……そしてさらばだ……うごあぁ……がはああぁッッ!!」


 ロズガの敗北が決した瞬間にこれまで周囲にひた隠しにしてきた心身の衰弱が限界に達し、密かに覚悟していた死がついに訪れたことを自覚したナージェムであったが、最期の気力を振り絞って響鳴石を口元に運んで渾身のメッセージを遺した直後、あたかも火口から熔岩が噴き上がったかのごとき大吐血を強いられ、窒息から逃れるべく何度か力無く躰を捩ったものの好転は望むべくもなく、誰にも看取られることなく52年の生涯を閉じたのであった……。



 

 

 

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