第27話 激突!聖獣師VS龍氣師⑨
「や、やったッ!
ロズガが放った何かが見る間に漆黒の鏡晶珠を破壊……いや分解してゆくではないかッ!!
さすがはナージェム師だ──なるほど、最初に敵の動きを封じておけば鋼撃闘虫を全滅させたあの魔技の態勢に入ることも叶わぬわけだからなッ!
しかもあれの有効領域は煌破弾よりもはるかに広範囲であり、何とただの一撃で半数以上の珠が黒い砂へと還元されてしまった!
となれば次で全て消滅させるに違いない……な、何ィッッ!?」
統治するパヅァルアの枠を超え、ルヌラリア屈指の超剣士として勇名を馳せる新国王が思わず驚愕したのは、白銀の巨鳥の頭上から突如として降り注いだ漆黒の焔が忽ち全身を火ダルマにしてのけたからであった!
「──くッ、一体何がッ!?
全ての鏡晶珠の焦点を戦場に合わせていたから上空は完全に意識から外れていたッ!
ハッ!?……ま、まさか超凶霊龍が早くも姿を現したというのッッ!?」
普段の可憐な妖精の面立ちを厳粛な戦士の表情に変貌させているパレル・ラツォーロの意識に連動して27個の鏡晶珠が一斉に天を仰ぐが、その映像を目の当たりにした瞬間に王と従者は同時に叫んだ──見よ、その暗黒の影があまりに高空にあり、しかも完全に召喚されきってはおらず半ば霊体であるためか輪郭はあたかも薄霧を挟んで窺うかのようにかなり曖昧であるものの、その類例を見ない巨大さと凶々しさは強烈なまでに生々しく感得されたのである!
「ついに……ついに姿を現しおったか、この大宇宙の全次元において最も存在を許されざる呪われし魔物よッ!
だがな、この神聖なる霊法光星にいかに穢らわしい爪牙を立てて荒廃させようが、我らルヌラリアの民は決してオマエなどに屈しはせんぞッ!!
そうともッ、たとえその過程でどれほど尊い犠牲を出そうとも、我々は一歩も退くことなく必ずや星覇獣国を討ち果たしてみせるだろうッッ!!!」
あたかも全星民を代表したかのごとき決死の覚悟の昂然たる宣言が耳に入ったものか、それとも最初からこの示威行為のみが目的であったのか、忌まわしき巨影はまるで天を覆う暗雲が拭い去られたかのごとく消散し、哀れにも金属的な体表面を黒焦げにされたロズガはそれを合図とするかのように生命の糸が断ち切られたとみえて、ゆっくりと螺旋を描きながら朽ち果てたその身を永遠に休ませるため、幼鳥時から慣れ親しんだ王家の森の一角目がけて落下して行ったのである……。
「ロズガ……可哀想にッ!」
国王の御前で、しかも戦闘時である今この時にそんな粗相は赦されるはずもなかったが、師父と共に誕生時から何度も世話をし、兄鳥共々その成長を見守ってきた身としては当然のことながら、止めどなく溢れる涙に視界を塞がれたパレルの胸は悲痛に張り裂けんばかりであった。
「……戦いは無情なものだ。
しかも我らの相手は既に人の心を喪失し尽くした…いやそもそも最初から持ち合わせておらぬ悪魔的存在──たしかに痛ましき犠牲ではあったが、ここで怯み、心挫けていては敵の思う壺であると同時に崇高な使命に殉じたロズガを逆に冒瀆することになるとは思わぬか……!?」
暫しの沈黙を置き、絞り出すような声でこう諭すゼトゥスに、肩を震わせ、手の甲で涙を拭いながらこくりと頷いた少女聖獣師であったが、自分以上の悲嘆に暮れているはずの師父の身を案じずにはいられなかった──なぜならば聖獣と聖獣師は文字通り人獣の絆をも超えた不即不離の関係にあり、前者がその身に負った痛みはそれ相応のダメージを後者に及ぼさずにはいなかったからである……!
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「やはり一旦は退いたか……ということは魔龍皇め、聖門王国を陥落させるには股肱の龍氣師どもに任せれば足ると踏んでいるわけかな……そして自身が前面に立つのはあくまでも闘主軍と相見える場合に限られると──しかしそれではあまりにもゼトゥス・マナレック王を侮ってはいないかな?
これはあくまで私見だが、いざ極宝剣を手にした際の彼の戦闘力は、決して貴殿に劣るものではないぞ……!」
闘神城から遠く離れ、こう呟いた妖美の時計師は、共に仄暗い山林内に身を置いた怨念の龍氣師へと悠然たる足取りで迫りつつあった……。




