第24話 激突!聖獣師VS龍氣師⑥
二人の部下が下した臨機応変な判断は大いに部隊長を恥じ入らせ、彼女は慌てて副官の〈第六段階使役者〉に指示を送った。
「フォートンッ、聞いてのとおりどうやら敵の本隊は地を這うがごとき超低空飛行で進軍中らしいッ!
だから高空で錯乱中の耄碌凶霊龍退治は任せたよッ!
あたしたち三人は急降下してべジュネオスとかいう格上ドラゴン迎撃に向かうからねッ!!」
「了解です部隊長ッ!」
背中で語る、などというある意味傲慢な意図すら微塵も感じさせることなくひたすら黙々と任務を遂行するというミコーレが最も好むタイプをチームのNo.2に据えたのは、人並み外れて饒舌であるという自己認識の反動でもあったのであろうが、先ほどもついやってしまったように部隊長という重責を担う立場でありながらスタンドプレーに走りがちな未熟な自分はそもそも皆の手本になり得ぬという自覚の表れでもあったろう。
『……こう言っちゃあエラそうだけど、結局最も困難な任務は聖獣師が受け持つしかないんだから、願わくば永遠の使役者は脇目を振ることなく沈着冷静かつ質実剛健なフォートン氏を見習って身の丈に合った防衛隊ワークに邁進してほしいものねッ!
とはいっても他の六人は貴族様を除いて基本的に皆寡黙系みたいだからあたしたちが浮いてるだけか?』
事実、部隊長が三人と口にしたことで残りの聖獣師たちはユゴラーザ誅滅に専念すべしとの指令を受けたも同然であったから、誰一人無駄口を叩く者はいなかった。
『…みんなリッパだわぁ──あたしだったらすぐカッコつけて、“了解ッ!すぐに片付けて我々も続くッ!”とか何とか口走りそうだけど。
一体、お師匠も含めて、あたしのどこを評価してリーダーに推してくれたんだろう……!?』
煌破弾を食らって大いにたじろいだ群龍どもに部下たちが一斉に殺到するのを確認したミコーレ・ラワートは、本命と対決すべく聖獣師二名を従えて急降下態勢に入ったがそれは蒼穹を切り裂く巨大な稲妻を彷彿とさせた!
「──ななッ!?
た、戦いはこれからだというのに奴らどうして戦場を離れるッ!?
そ、そうかッ、ゼトゥス・マナレックを度外視して巨鳥部隊を殲滅すべしとの我が気魄に恐れをなして……」
愚かにも希望的観測を口にしてしまったのが運の尽き、即座に絶対者によって「そんなわけがなかろう」とせせら笑われ、またまた極烈集中を途切れさせてしまった老龍氣師のせいで13体の群体ユゴラーザは忽ち劣勢に陥ったのであった……。
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「……もはやドゥヌバはここまでだな。
魔龍皇様が指摘されるまでもなくここ最近の急激な実力低下は目に余るものがあったが、何らかの病に侵されている疑いも大いにあるといえよう……しかも本人に全くその自覚がないのが余計に哀れを唆るわ……。
かくなる上は彼にはせいぜい龍氣師生活の総決算として討ち死に覚悟で巨鳥ども相手に奮戦してもらうとして、ウォセメル姉と私とで王家の森を草の根一本に至るまで焼き払うしかないな……!
その後の展開としては基本的に鎧刃部隊の諸君に委ねることになるが、あのゼトゥスだけは何とか我が手によって仕留めたいものだ──ふふふッ、そうなると前王と同じ手法で地獄に送ってやるのも一興だな……しかもより苦痛を増したやり方で……!」
鎧刃部隊が去った後、断崖の森の一角に結跏趺坐し、心眼にて戦況を窺っていた紫衣の龍氣師はこう冷ややかに呟くと、一旦思考を切り替えた。
『レィ・ネウェス……ついに本性を現したな、“闘主の代理人”よ──はたして奴がこれからどう動くのか?
それによってこの戦いは単なる聖門王国対星覇獣国の抗争とは全く次元が違うものになる……つまり宇宙的規模の正邪の闘争へと。
とはいえむろん龍魂素界から無限の力を引き出し得る魔龍皇様という最強存在を戴く我らの最終的勝利は揺るがぬにしても、本質的にあのお方の手足にすぎぬ将士団としてはかつてない深刻なレベルでの返り血を浴びることであろう……また、そうであるからこそ一刻も早くゼトゥスの首を獲る必要があるのだッ!
そうともッ、それさえ達成されればもはや民を巻き込む凄惨な王国破壊などは必要ない──呪われし王族の血脈さえ絶たれさえすれば、伝統あるパヅァルアは魔龍皇様のご指導の下、ルヌラリア最高最強の超国家として全星民の心の砦となって大宇宙に打って出ることが可能となるだろうからだッ!!
──さあ来るならば来るが良いッ!闘主何するものぞッ!!
いみじくも魔龍皇様がみごとに喝破されたキサマの正体、即ち“全宇宙を蝕む見えざる悪鬼”を打ち砕き、永遠に消滅させるのは我ら星覇獣国だッッ!!!』




