第22話 激突!聖獣師VS龍氣師④
「……ということは、聖獣師とは謎の外星人の介入によって生み出された存在だというのですか……!?」
腰まで達する赤髪を震わせながら訊ねるウォセメルを見下ろしながら「うむ」と頷いた魔龍皇は更なる驚愕の真実?を語り始める。
「余がルヌラリアにおいても特に苛烈を極めたガドゥアの圧政を打倒するため星覇獣国の旗揚げに向けて奔走していた丁度その頃、異星人はこの惑星に到着した──されど直後に開始した入念な探査によって早々に余の存在を知り、根本から作戦計画を革めたようだ。
つまり、当初予定していた“宇宙機による上空からの威嚇と局地的破壊行為によって全面降伏を迫る”というものから、伝統的な人獣交感術をはるかに大掛かりに超進化させた、文字通りの人獣一体となったいわば“人間の意思によって駆動される巨大生物兵器”を最初は王国防衛を口実に民の意識に浸透させ、やがて支配の道具として抵抗なく君臨させるというな……。
そしてこれまで、聖門王国独自の技術として畏怖されてきた聖獣育成技術の実体もまた、外宇宙からもたらされた精緻極まる生物工学の賜物であったのだ……!」
「何と……!?であるならば、あれらの巨大生物は究極的には聖獣師抜きで自律行動が可能であるはず──されどあえて彼奴らを介在させるということは、そこに外星人の陰険極まる、そして恐るべき策謀が隠されているということに……!?」
絶対者からこれ以上の恥辱を加えられるのを怖れて発言を控えていたイヴェロイ・ドゥヌバがたまらず口走ったセリフに対し、魔龍皇は意外にも?大いに首肯したのであった。
「おお、さすが星覇獣国最古参ならではの鋭い洞察だな……まさにそのとおり、外星人どもが霊法光星支配の代理人として設定したのがまさに聖獣師なのであり、連中を通じてまずは手始めにパヅァルアを侵略の起点として確保することとしたのだ──その理由はまさしく余というルヌラリア最大の脅威から片時も目を離せぬがためであったろう……。
では何ゆえにこの方針転換がなされたのか?──それもまた侵略者どもの余への強烈なまでの恐怖ゆえと確信しておる。
事実、連中が宇宙機による暴挙を決行するようであれば、余は直ちに超凶霊龍を召喚してそれらを1機残らず撃滅するだけに留まらず、場合によっては自ら機内に侵入し、磨きに磨いた魔霊術によって彼奴らが想像することすらできぬであろう生き地獄を味わわせてやるつもりであったのだがな……くふふふッ、全く惜しいことであった。
ともあれ、結果的に聖獣師を尖兵にしての間接侵略──ここまで話せば察したであろうが、あのダゴードもまた外星人の超技術によって創造された人型兵器なのだ──という長期戦に切り替えたことで今現在の、ある意味牧歌的ともいうべき膠着的状況となっているわけだ……ま、それもガドゥアの死によってついに終わりを告げ、いよいよ余と星覇獣国がルヌラリア全体の支配に向けて進軍を開始する合図となったわけだがな」
「な、なるほど……よく分かりました。
まさにこの世の真実に対して蒙を啓かれ、栄えある星覇獣国の龍氣師としてようやく真の使命に覚醒した感が一入であります。
で、ですが、どうしても一つだけ、理解し難い事実があるのでありますが……!?」
やや気力を持ち直したイヴェロイが口ごもりながら発しようとした問いを、魔龍皇は自ら先回りして答えるのであった。
「分かっておる──キサマが問いたいのは、ガドゥアがどうして最後までゾルゲシタス制圧に乗り出さなかったのかということであろう?
だが、それは簡単なことだ──生半な攻撃をこの島に加えようものなら、それは即座に王国軍の……いやパヅァルアそのものの破滅に繋がるとあの男が理解していたからにすぎぬ……!」
「そ、それは外星人を味方に付けたという強みをも帳消しにするほどの凄まじい報復がなされるということでありましょうか……!?」
「むろんだ──余を誰だと思っておる?
全宇宙で唯一人、龍魂素界の神力を自在に駆使し得る最強存在であるぞ。
それほどの男が本陣を構える拠点に攻め入ろうとすれば、いかなる手酷い逆襲を受けるものかをいち早く看破した外星人どもはなかなかの慧眼の主であると褒めてやってもよいがな……。
おそらくガドゥアは聖獣師かあるいは外星人から直接その不都合な事実を知らされたのであろう……それで王国を滅亡させることを怖れ、あくまでも星覇獣国と正面からぶつかることなく世を去った……しかも実子の手にかかってな。
だがそれも因果というものであろう──なぜならば彼奴は逆臣によって誘拐された幼い第二王子を奪還する努力を最後まで払おうとしなかったのだからな……」
ここで驀進する漆黒の鏡晶珠群を迎え撃つかのように、はるか前方から白銀の巨鳥が猛スピードで飛来したことが闘示盤にて確認された!
「──うむ、ようやく現れたか我が親愛なる筆頭聖獣師よ。
いよいよ数年続いたオマエとの戯れも今回限りとなりそうだな。
まずは懲りずに繰り出してきた愛鳥をかつてないほど苛烈に痛ぶり尽くした上で誅戮し、もはや聖獣師として再起不能とした挙句、抜け殻となった肉体は鎧刃部隊の生贄となってもらおうか──というわけで、余とニミルドが邂逅した経緯についてはまたの機会に譲るとしよう。
ふふふ、片やイヴェロイも先ほどから巨鳥部隊の猛攻に曝されて、とても余の打ち明け話を傾聴する状況にはなさそうだからな……!」




