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魔龍皇将士団の紋章  作者: 尾岐多聞
第2章 星覇獣国の秘密

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第15話 魔龍皇将士団鎧刃部隊、出陣す

 悲願のガドゥア暗殺を果たした“怨念の龍氣師”が踵を返して陽光もまばらな鬱蒼たる森に足を踏み入れると、そこには星覇獣国が独自に鍛造した【超玄鋼】製の魁偉な意匠(デザイン)の漆黒の鎧に全身を固めた1.4ヤーン(約220センチ)に優に達するであろう巨体の騎士たちが十数名、これも(ことごと)く艷やかにして逞しい黒毛の愛馬を伴って集結していた──魔龍皇将士団における最強の白兵戦スペシャリスト・鎧刃(がいじん)部隊の最精鋭陣である。

 

 星覇獣国において重要視される戦獣操作能力こそその道の達者に譲るものの、こと五体を武器とする剣技や格闘戦において彼らの右に出る者は存在せず、さりとて単なる猪突猛進の脳筋集団と思いきやさにあらず、あらゆる状況下においても必ずや活路を見出すための高度の知識と運用に必須の情報処理能力及び精神力を有し、まさに単身で大国の根幹を揺るがしてのけるほどの諜報戦の真髄を会得した文字通りの“インテリジェンス・モンスター”なのであった。


 ()けても最強者であるガデラズ・バドオ隊長の戦歴には赫々たるものがあり、魔龍皇の直命として下された部隊の主任務である〈英傑抹殺計画〉においても最高の達成率を誇っているのであるが、近々の戦果としては史上屈指にして現役最強の剣豪と衆目が一致していたリジェドク・ゾフェルを長らく彼が筆頭師範を務める国営の王都道場の帰路に用心のため甲冑に身を固め、更に10名近い門弟を従えているのを承知の上で()()襲撃し、従者どもは難なく蹴散らしたものの、名剣士の神技によって愛剣を両断されながら些かも怯むことなく剣技以上の自信を誇る格闘術によって応戦し、実に20メッツ(約40分間)に及ぶ死闘の末についに路上に押し倒すと、凄まじいまでの鉄拳連打によって兜を叩き割り、露出した顔面をなおも撃ち続けて無残な肉塊に変わり果てさせた〈宵闇十字路の決闘〉が挙げられるであろう。


 されどガデラズとしてはゼトゥス守護隊長を拝命するあの謎めいた真紅の魔人を討ち果たさぬ限り決して満足することはできず、今回の陣営の存亡を賭した決戦における主目的として新国王誅殺と並んで“打倒ダゴード”を掲げていたのであった。

 

「龍氣師殿、みごとに宿願を果たされたご様子とお見受けしますが、であるならばまことにおめでとうございます。

 

 かくなる上は我ら鎧刃部隊一同、新王ゼトゥスの首級(しるし)を挙げるべくこれより王家の森へと直行致しますが、先ほどお託しになられた貴方様直筆の【呪言状】は必ずや彼奴の目に入りますよう諮ることをお約束致します。

 ──それでは」

 

 ガデラズの祝福の言葉に右手を挙げて小さく頷くニミルドだが、その表情に微塵の緩みを表すことはなく、まるで鉄筆の様な硬く尖った口調で今後の方針を伝達する。


「──うむ、しかと頼んだぞ。

 たしかにあの史上空前の愚王めは我が凶霊龍によって冥府に下った──むろん生前に累積せし巨山のごとき罪科によって最下層の地獄に叩き落とされることは確実であろうが、承知のとおり将士団(われわれ)の戦いはここからが本番だ。


 つまり、今回の戦いはこれまでの局地戦とは根本的に異なる──なぜならば前王(ガドゥア)という長年の(くびき)が断たれた今、浅薄な新王(ゼトゥス)は直ちに我らが本拠地(ゾルゲシタス)を攻め落とさんとの邪心に燃えて準備を進めるであろうから、王権が彼奴めに完全集中する寸前のこの段階で一気に誅滅する必要があるのだッ!


 されど聖門王国を制圧したところで霊法光星(ルヌラリア)征服という大望を掲げる星覇獣国にとってはようやく第一歩を踏み出したにすぎん──即ち、より強大なる黒鳳帝国侵攻に向けてのなッッ!!」


「はっ、心得ておりますッ!」


「よし、行けッ!

 私もイヴェロイ&ウォセメル両先輩と力を結集させ、怯懦なゼトゥスめが隠れ潜む地下要塞陥落を速やかにそして確実に成し遂げるつもりだが、万に一つも瑕疵の無きよう今一度龍魂素界へ参入し、闘龍帝に増援を要請してから諸君の後を追うことにするッッ!!」


 こう言い放って鎧騎士とガッチリ握手を交わした盲目の龍氣師は、さすがに手が届かぬため(とはいえニミルドの身長も1.16ヤーン=約185センチあるのだが)、右肘辺りを軽く左掌で叩いて激励の意を示す。


「はっ、了解でありますッ!

 魔龍皇将士団鎧刃部隊の誇りにかけて、必ずやご期待に応えてみせましょうぞッッ!!」


 かくて深く(こうべ)を垂れた暗黒の騎士団は信じられぬほどの身軽さを見せて瞬時に騎乗してのけると、紫の天地徹鏡(ロペーレ)越しに見送る龍氣師の面前を通る度に慇懃に一礼しつつ、彼らにとっても未曾有の大一番となる“王家の森決戦”に向けて冬を控えて徐々に色褪せつつある森の奥へと消えて行った──。






 


     


 

 


 

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