第14話 巨鳥部隊、出撃!──その時、闘神城では……!?
広大な中庭に整列した使役者たちを前にまずミコーレ・ラワートが簡潔な訓示を述べ、幹部たちには二度目となる〈巨鳥部隊員の誓い〉を皆で唱和した後、それぞれ帰属する聖獣師に従って【聖獣瞑闘堂】に向かう。
直径9.4×全高5ヤーン(15×8メートル)のドーム型の建屋は各聖獣師の〈シンボルカラー〉に彩られ、壁面は絵心のある所属隊員が存分に腕を振るって自由に独自の世界観を描き出している。
一方その内部構造は、まず中央部に聖獣師が着座する直径1.3×全高1.6ヤーン×厚さ0.9ミルト(2×3メートル×1.5センチ)の半透明チームカラーに染め上げられた円筒形の瞑闘室があり、ここに結跏趺坐した彼らは極限集中(龍氣師の極烈集中とほぼ同様の精神活動)によって愛鳥たちと文字通りの一体化を遂げて以降は彼らの目を借りて戦況を把握し、脳を共有して聖獣たちに自律行動を任せた場合とは比較にならぬ戦闘力を発揮させることができるのだ。
そして瞑闘室をぐるりと囲むように最も上格の使役者たちが着座し、残りの人員が各自の位階にしたがって仕切り板無しの六重の放射状に配置されるのであるが、当然ながらランクの異なるメンバーが同一円上に居並ぶことは決してない。
「──セラステラ、行くよッ!!」
およそ3メッツ(約2分間)の深い逆腹式呼吸を伴う【融魂時間】によって愛鳥と一体化したミコーレ・ラワートは部下たちもそのレベルに応じた態勢を整えたのを心眼によって確認し、万感の想いを込めて号令をかける。
「聖獣防衛隊巨鳥部隊、出撃ッッ!!!」
間髪入れず一堂が「了解ッ!!」と呼応し、中庭で翼を畳み、軍団ごとに整列していた大小さまざまな百匹近い巨鳥たち(先頭に位置する聖獣師の愛鳥は彼らの戦闘服と同じ体色を有しているが、これに人間側が合わせている)も勢いよくそれを開き、天に向かって鋭い咆哮を迸らせると、リーダーに従って一斉に舞い上がったのであった!
そして唯一残されていたナージェムのロズガも筆頭聖獣師と一心同体となり、全長23ヤーン(約35メートル)に達する白銀色の巨翼を広げてかつてない強敵との死闘に向けて飛び立ったのである──!
✦
ガドゥア・マナレックⅪ世崩御という大凶事に見舞われたにもかかわらず、闘神城は表面上平静を保っていたが、その最大の理由としては病魔に侵された彼が表舞台を去ってからのおよそ半年間というもの、王宮のみならず民もまた嫡子のゼトゥスを事実上の国王として仰ぎ見ていたことにあった。
したがって宮廷人たちの心中に穏やかならざるものがあったとすれば、それは前王の悲劇的な最期への慨嘆よりも、ついに城内にまで及んだ星覇獣国の魔手への恐怖こそが殆どであったのである……。
ともあれ、非常時における国葬に向けて人々が慌ただしく動き回る中、城門前で一人立ち尽くす若者の姿があった。
龍氣師ニミルドや聖獣師ムウェレよりは青みがかった紫色の長髪で、並々ならぬ美青年である彼らをも凌駕する美貌の主──匹敵するとすれば他ならぬゼトゥス・マナレックのみであろうが、さすがに新国王の侵し難い気品には一歩を譲るものの、あたかも魔界からただ今降臨したかのごとき妖美の佇まいは王家の権威を前にしても位負けせぬだけの威容を顕示していた。
凍てつく冬を間近に控えた現在、彼は鮮やかな赤紫色の小粋なチュニックの上に保温性には定評のある雷牛革の外套外套を羽織っていたが、その色合いもまた黒みがかった渋い紫であり、ニミルドらと同様にこの色彩に対する偏執的なまでのこだわりを感得させる。
そして奇異なことに、若者は一冊の辞典ほどの大きさの、これもまた青紫の羅紗布に覆われた包みを小脇に抱えていたが、この状況下では真っ先に番兵に見咎められて中身を検められそうなものであるのにそれを免れているのはなぜなのか?
それは彼が城内に出入りし始めてから既に1年半が経過し、その持参品が何であるかを顔馴染みである門番たちが熟知していたからであったのだ。
『密かに恐れていたこの日をついに迎えてしまったか……。
そして殺ったのは間違いなく彼だな──この国で誰よりもガドゥア王を憎悪する存在であろう“消された王子”ニミルド・マナレック。
まあ何はともあれ、これでパヅァルア聖門王国は好戦的な新王の下、“獅子身中の毒蟲”星覇獣国との直接対決に乗り出すのは確実だろうが、ひょっとするとこれが引き金となって全てが崩壊への道を辿ることになるのかもしれん──前王は結局、自分がなぜそれを避けてきたのかを後継者に明かすことなく世を去ったのであろうからな……!
そしてもう一つたしかなことは、聖門王国──いや霊法惑星全体を見渡しても最高の時計師であるこのレィ・ネウェスが最大の太客を失ってしまったということだ……』




