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魔龍皇将士団の紋章  作者: 尾岐多聞
第1章 王国は誰のものか?

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第13話 巨鳥部隊スタンバイ!

「──というわけで星覇獣国はガドゥア様に続きゼトゥス新国王のお命をも奪うべく凶霊龍を王家の森に差し向ける公算が大だが、むろん臣民としてこのような狼藉を断じて許すわけにはいかず、我らの身命に代えても阻止せねばならん。


 まさに今こそリュシオーク中心部から森へのほぼ中間地点に位置する【アリョーカ丘陵】に訓練所を構える君たち巨鳥部隊の出番だ。


 むろん私もそこに預けてあるかつての愛鳥の弟・ロズガと共に参戦するつもりだが、迎撃目標は魔龍皇(ズザ・ビラド)が駆使する鏡晶珠に絞るつもりだ──したがって敵の侵攻を阻止できるか否かは諸君らの奮戦ぶりにかかっている。


 そして今回の局地戦後、新国王のご英断により我々聖獣防衛隊は王国海軍に帯同していよいよ星覇獣国の本拠に乗り込むことになるッ!


 だが全てはこの戦いを制してからのことだ──頼むぞラワート部隊長、防衛隊最強軍団の威光を満天下に示してくれることを信じているッ!!」


「師よ、お任せ下さいッ!

 まさにこの日のために我々は苛烈な鍛錬を重ねてきたのでありますから、必ずやその成果を国王陛下のご覧に入れてみせますッッ!!」


 腕に巻いた黄色い響鳴石に浮かび上がるルゼルク・ナージェムに向かってレモンイエローのショートヘアが目に眩しい琥珀色の革製戦闘服に身を包んだ若い女性が昂然と宣言し、直径2.5ヤーン(4メートル)の円卓にズラリと着座して自身の響鳴石を覗き込んでいた6人の精鋭陣(纏っているのは色こそ違えど部隊長と同素材の戦闘服)も力強く頷く。


「うむっ、任せたぞッ!」


 こう言い残して筆頭聖獣師の(ヴィジョン)は消滅し、訓練生も含めて総勢142名の隊員を束ねるミコーレ・ラワートは「はッ!」と返答して顔を上げる。


 その美貌は防衛隊内でも八歳下のパレル・ラツォーロと双璧を成すものといえたが、可憐そのものの戦景眺映士とは対照的に妖艶さと厳しさが渾然となった、いわば〈凄艶〉という形容がふさわしい、明らかに年齢以上の風格を体現していた──尤もそれは彼女が担う重責からもたらされる当然の佇まいであったかもしれぬが。


 一方その戦績に目を向けると、凶霊龍相手の勝ち星こそ未得であるものの王国各地に出没する悪鬼獣と既に二十数回もの対戦経験を持ち、単独・集団戦共に十回以上の勝利を飾っているばかりか愛鳥セラステラに深傷を負ったことはただの一度もなかった──したがってごく自然に周囲はもとより自身も恩師であるナージェムの後継者を自任しており、彼の養女であるパレルとは姉妹のごとき絆で結ばれていたのである。


「聞いてのとおり、我々にとっても正念場となる今回の決戦だが、ここは互いのライバル心を越えて部隊の総力を結集して当たる必要がある。


 パレルがこちらの闘示盤にも戦場の様子を投影してくれたおかげで市街地に襲来した凶霊龍がナージェム師の愛鳥(オズガ)を斃した個体であることが分かったが、私見では霊的結界が張り巡らされた闘神城に使い魔を潜り込ませてガドゥア様を暗殺するという離れ業をやってのけたのは別の龍氣師であると思う──いかに奴らが傑出した魔導士であろうとも、さすがにこの二つの難事を一日でやってのけるわけにはいかんだろうからな……。


 だが既に前王崩御からかなりの時間が経過しているゆえ、憎むべき下手人(げしゅにん)も心力を回復して王家の森に襲来する可能性が高い。

 更に龍氣師はもう一人いるはずであるから、合計三体の凶霊龍がはじめて共闘するのではないかと予想できるわけだ……!」


 部隊長の言に一同が頷き、右隣に陣取ったクールな容貌の黒髪の青年──引き締まった筋肉質の長身で漆黒の戦闘服を着用している副官=スレイツ・オルツァーが口を開く。


「ついにこの日が来たか──これまで同時に3ヶ所を攻撃することはあっても一度も共同で動くことのなかったアイツらが……!

 

 しかもここに魔龍皇が加わるということは、ついにズザ・ビラド自身の凶霊龍も姿を現すことになるのか……!?」


「いや、あの強力な鏡晶珠群が健在である限りは、魔龍皇が別の手駒を繰り出す可能性は低かろう──何せ凶霊龍は連中の最終兵器、それを集中して投入するからには当の三人の龍氣師が面子にかけても首領が本気を出すのを阻止しようとするはずだからな……」


 こう口を挟んだのは部隊長の右側に座すスレイツと同期にして親友であるアギム・ディークス主任教官で、前者より更にがっしりとした横幅の短躯を濃紺の戦闘服で覆い隠した彼の眼光はその場にいる誰よりも猛々しかった。


「同感です。ましてや凶霊龍には〈実体分身能力〉があり、それがフルに発揮された場合文字通りの一大群龍陣が来襲することになるのですから、魔龍皇としても当面は静観を決め込む公算が大と言えましょう……。


 ということは、我々も入門者(何年修行を重ねようとも、訓練所が定めた力量基準を満たさぬ者はこの位階に留まるものとされる)以上の使役者(この位階は七層に分かれ、全てクリアすれば晴れて聖獣師となるが、その確率は3%未満に留まるという)は残らず駆り出して後方支援に当たらせる必要があるのでは?」


 まるで歌うがごとき爽やかな口調でこう述べたのは、ミコーレの対面に着席した空色の髪とスカイブルーの戦闘服姿のヨシュア・カナムで、〈博士〉の異名を奉られる部隊中随一の聖獣知識の持ち主である彼女は、自身のみならず他隊員の愛鳥の体調や栄養面、そして意識状態のケアに至るまで、あたかも掌を指すかのように的確なアドバイスを与えることができる一方、戦闘時の果敢さにおいても三本指に数えられるほどの勇者なのであった。


「ということは、いよいよ史上初の【総員出撃作戦】発動となるわけだな。

 リュシオークの地形を知り尽くした我々七人の幹部がそれぞれ十数名の隊員を率いて張る【殲敵決死線】──いかに凶霊龍といえど、これを突破するのは並大抵ではあるまい。


 とはいえ一抹の不安材料としては今回が初の実戦となるということだが、演習にはない危機感が必ずや期待以上の結果をもたらすと確信している……!」


 ヨシュアの左側に位置するウエーブのかかった青髪の美青年=ジェルマー・ゴラノの年齢に比して不遜ともいえる語り口は彼が部隊のエースともいうべき実力者であることもあったが、何よりもその出自が聖門王国屈指の有力貴族である事実に由来していた。


 代々熱烈な愛国者で、その守護を担うという高邁な使命を託された聖獣にも旺盛な関心を抱くゴラノ公爵は筆頭聖獣師とも昵懇の間柄であり、ただ運営面においてのみ防衛隊に関与する者が殆どである貴族階級には珍しく各訓練所に頻繁に足を運び、その際常に帯同していた末子が並々ならぬ〈対獣感応力〉の保持者であることに気付いて一念発起したことが史上初の“貴族聖獣師”誕生に繋がったのである。


 もちろんその気位の高さは戦闘中はもとより日常の口調や素振りに垣間見えるものの、決して()()()()とのコミュニケーションに支障をきたすものではなく、むしろその侠気溢れる戦いぶりやリーダーシップは隊員たちの敬愛の的となっており、彼自身が熱烈にミコーレを推挽しなければ部隊長の座に就いていたのは確実であった。


 残る出席者は腰まで届く赤紫色の長髪と青紫色の服装が印象的な、中性的な細身の若者であるムウェレ・ケイノスと対照的に男顔負けのパンプアップされた筋肉を襟元を大きく開き、肘の辺りまで袖を捲り上げたオレンジ色の戦闘服から覗かせるリュガナ・メレイルは共に寡黙な性格ゆえか、今回も発言を求めることはなかった。


「──では時間もないし、そろそろ行きましょうか。

 使役者たちとその相棒らも中庭に集合済みのようだしね」


 こう言いながら立ち上がり、レモンイエローのマニキュアが煌めく右手を卓の中央に向けて突き出したミコーレ・ラワート部隊長に起立した皆が呼応する。

 そして放たれた彼女の裂帛の叫びを全員が復唱したのであった。


「──パヅァルア聖門王国に栄光あれッ!

 我ら聖獣防衛隊はすべからくその身魂を崇高なる任務に捧げ、その勇名を国史に刻むことをここに誓うッッ!!」

 



 

 


 


 


 


 







 





 





 


 

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