第46話 祝われぬ少将
謹慎が解けて間もない夜、ドエゴン・プライデルは王都の夜会へ出た。
伯爵位も、少将の地位も失っていない。王が下したのは謹慎だけだ。ドエゴンは仕立て直した礼服の襟を正し、会場の扉をくぐった。
楽団の音と、幾つもの話し声が重なる。以前なら、姿を見せただけで挨拶に来る者がいた。今夜もそうなるはずだった。
見知った貴族と目が合う。ドエゴンが片手を上げると、男は会釈して、隣の者との話を続けた。
話の途中なのだろう。ドエゴンは自分から近づく。
「久しぶりだな。どうしている?」
「プライデル伯爵。お戻りになったのですね」
男は微笑んだが、それ以上話さない。ドエゴンが戦の話を始める前に、「失礼」と頭を下げ、別の輪へ入っていった。
次に声をかけた相手は、以前、軍での役職を得ようと何度もドエゴンの屋敷を訪ねてきた男だった。だが今夜は、新しい杯を取ってくると言って離れたきり戻ってこない。
ドエゴンは空いた場所を見つめ、眉を寄せた。
「王命がなければ、軍にも残れなかったそうだ」
少し離れた場所で声がした。第一王子派の貴族が、仲間と顔を寄せている。ドエゴンが振り向くと、男たちは何事もなかったように杯を持ち上げた。
言い返そうと足を踏み出したとき、ドエゴンと同じ第二王妃派の貴族が近づいてきた。ドエゴンは口元を緩める。
「見たか、あの連中の態度を。陛下は私の位を守られたというのに」
「ええ。殿下が陛下にお願いくださったからです」
男はドエゴンを会場の隅にある柱の陰へ促した。話を聞かれるのを避けるように、声を落とす。
「殿下は、我々の派閥から将を一人失わぬよう動かれました。閣下が命令を破って越境したことまで、認められたわけではありません」
ドエゴンの顔から笑みが消えた。
「白狼騎士団を全滅させたのは、私の左軍だぞ」
「その戦功は記録に残っています。戦いを招いた経緯も」
ドエゴンが言い返す前に、男は一礼して人の輪へ戻っていった。
ドエゴンは会場を見回した。先ほどの男は、輪に戻るとすぐ仲間に迎えられた。こちらへ来る者はいない。軍にも貴族社会にも居場所は残っているはずなのに、親しげに迎える顔が一つもなかった。
杯を置き、夜会を出る。馬車の中では、扉が閉まっても人々の話し声が耳から離れなかった。
「もうお戻りですか」
向かいに座る家の者が尋ねた。ドエゴンは答えず、膝の上で握った拳を見た。
王は自分の功を認めた。白狼騎士団を滅ぼしたのも左軍だ。それなのに、あの貴族たちは敗者を見るような目を向けてきた。
ドエゴンの脳裏に、ペドルの顔が浮かぶ。公爵に越境の経緯を報告した男だ。あの報告がなければ、責任を問われることもなかった。
続いて、ルクシオン。そもそも若造の策がなければ、国境に兵を並べて待つようなこともなかったのだ。
「ペドル・クレイルとルクシオン・フラグナについて調べろ」
「お二人を、ですか」
「家のことでも、軍でのことでもいい。奴らの弱みを探せ」
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