↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
20/72

第19話 大曲剣の騎士

 基地へ入って二日目の朝、夜の間に打ち直した柵の向こうへ、またツヴェリア兵が集まった。


 正面から、盾を構えた兵が進んでくる。ユリスが弓兵に射かけさせると、敵は盾を掲げて矢を防ぎ、柵へ届く前に引いた。


「また出てくるぞ。矢を無駄にするな」


 ユリスの言葉が終わらないうちに、別の敵兵が前へ出た。昨日と同じだ。攻める気配を見せて正面の兵を動けなくし、その間に別の場所を狙う。


 ユリスはほかの柵へ目を向けた。


 木の割れる音が、基地の反対側から響いた。


「裏手です!黒い鎧の騎士が柵を破って入りました!エドラス殿が止めていますが……!」


 駆けてきた兵が、息を切らして伝えた。


「エドラスが?ドルグ、正面は任せる。敵が引いても追うなよ」


「承知しました」


 ドルグが答えると、ユリスは、次の指示を待っていたライコへ向き直った。


「第十小隊を連れて裏手へ行け。エドラスを助けろ。後続まで入られたら守りきれない」


「分かった!」


 ライコが走りだし、第十小隊の兵も後を追った。


     ◇


 その少し前、裏手の柵では、エドラスが近づいてくる黒い鎧の男を見据えていた。


 背丈はエドラスとさほど変わらない。だが、首が太く、肩から腰まで横幅がある。その頑丈な身体を覆う全身鎧には、蛇の鱗(うろこ)のような模様が刻まれていた。


 兜(かぶと)の前面は、大蛇が口を開いた形をしている。鉄の牙が上顎(うわあご)と下顎(したあご)を縁取り、その奥から男がこちらを見ていた。


 両手で握っているのは、弧を描く大きな剣だった。


 男が大曲剣を振り上げ、柵へ叩きつける。夜の間に打ち足した板が砕け、木片が内側へ飛んだ。


 守備兵が槍を突き出したが、男は大曲剣で払いのけた。割れ目を蹴り広げ、柵の内側へ足を踏み入れる。後ろの敵兵も続こうとした。


 エドラスが、男の前へ出た。


「ここは通さん」


 男は大曲剣を引き上げ、エドラスの頭へ振り下ろした。


 エドラスは剣を斜めに合わせ、刃を横へ滑らせた。軌道を外しても、腕がしびれる。大曲剣は隣の板へ食い込み、乾いた音を立てた。


 男が剣を引き抜こうとする。その脇へ、エドラスが斬り込んだ。


 男は身体をひねり、引き戻した大曲剣の根元で受けた。ぶつかった刃が押し返され、エドラスの腕が外へ開く。


 男はそのまま剣を横へ振った。


 エドラスは剣を立てて受けた。重い。踏ん張った足が土を削り、身体が後ろへ押される。


 それでも、ここを退けば男を奥へ通してしまう。エドラスは足を踏み直し、大曲剣を押し返した。空いた首元へ、自分の剣を突き出す。


 男は大曲剣を胸元へ戻して突きを弾くと、そのまま踏み込んだ。柄でエドラスの剣を押し上げ、がら空きになった胸へ、鎧に覆われた肩を叩き込む。


 まるで、疾走する馬に跳ね飛ばされたような衝撃だった。


 エドラスの両足が地面を離れた。踏ん張る間もなく後方へ吹き飛ばされ、積み上げられた土嚢(どのう)へ背中から激突する。袋が崩れ、身体ごと地面へ投げ出された。


 息ができない。胸から脇腹(わきばら)へ鋭い痛みが走った。剣を地面に突いて起き上がろうとしたが、片膝をつくのが精いっぱいだった。


 柵の割れ目では、守備兵が後続の敵へ槍を向けていた。だが、その内側へ入った男を止める者はいない。


 男がエドラスへ歩み寄り、大曲剣を振り上げた。


「エドラス!」


 駆けつけたライコが、二人の間へ入った。


 振り下ろされる大曲剣を、両手で握った剣で受ける。鉄の鳴る音が響き、腕へ衝撃が走った。ライコの足元で土がえぐれる。


 それでも、ライコは退かなかった。踏ん張って剣を押し上げると、男の大曲剣が浮いた。


 その下へ踏み込み、胴を狙って剣を振るう。男は大曲剣を引き寄せ、刃を受けた。


 今度は男が、ライコの胴へ剣を横に振った。ライコは一歩下がってかわし、剣を構え直す。


「エドラス、立てる?」


「ぐっ……俺に構うな。奴から目を離すな!」


 男が間合いを詰めた。引き上げた大曲剣を、ライコの頭へ叩き下ろす。


 ライコは剣で刃を横へ弾き、すぐに男の腕へ斬り返した。黒い鎧に火花が散る。


 男は引かなかった。大曲剣を横から打ちつけ、ライコの剣を押しのける。続けて振り上げた刃が、守りの空いた頭へ落ちた。


 ライコはとっさに体を反らせた。鼻先を大曲剣がかすめ、切られた前髪が数本、宙に舞う。


 地を蹴って後ろへ跳ぶ。背筋に冷たいものが走った。それでも、男へ目を戻すと、思わず笑みがこぼれた。


 目の前の男は、もう次の一撃に備えている。


「強いな、あんた!」


 男は大曲剣を構え、ライコの足運びを見ていた。


 ライコとともに来た第十小隊は、守備兵に加わって柵の割れ目を押さえていた。その向こうの敵兵も、二人へ目を向けている。


 互いに槍を向けたまま、どちらの兵も二人の間へ入ろうとしない。ほかの柵からは、まだ戦いの声が届いていた。


 ライコは剣を構え直し、ふと思い出した。アインゼルで戦った強い騎士の名前を、結局聞けずじまいだった。


「名前、教えてよ!」


「……名前?」


 男が、わずかに首を傾けた。


「前は聞きそびれた。強い奴の名前は覚えておきたいんだ」


 男はライコを見たまま、口を開いた。


「黒海蛇騎士団(サーペントナイツ)のロッコ・アナコンダだ。お前は?」


「俺はライコ!ロッコか、覚えた!」


 ロッコが大曲剣を肩の横へ引く。ライコも剣先を向けた。


 今度は、ライコが先に踏み込んだ。


ここまで読んでくださり、ありがとうございます!


久しぶりの小説執筆なので、誤字脱字や「ここが分かりにくい」「こうした方が読みやすい」と感じたところがあれば、気軽に教えていただけるとうれしいです。

「この部分が分からなかった」の一言だけでも、とても助かります!


また、本作を読んで少しでも


・面白かった!

・続きが気になる!


と思っていただけたら、ページ下の☆から評価していただけると励みになります。

★の数は、率直に感じたままで大丈夫です!


皆さまの反応が、続きを書く大きな力になります。

いつもありがとうございます!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。