第六隻 3.5話 ダンジョンへ行こう!
…………。
私たちが元の町を出て旅をしていると、道中には依頼に関する掲示板などがあるのだが、その中にひとつ気になるものがあった。
「……ダンジョン探索依頼?」
「あー、ダンジョンか」
「知ってるの? ツクヴァル」
「冒険者なら一回は行くからな、そこ」
どうやらツクヴァルの話によると、この世界にはダンジョンというものがあるらしい。
古代の住民が作った、お宝のある地下洞窟のような場所らしい。その中にいる魔獣を倒したり暗号を解いたりするとお宝にたどり着けるようで、ダンジョン探索を主にして稼いでいる冒険者もいるみたいだ。
「ツクヴァルは行ったことないの?」
「ねえ。文字読めねえからな」
「ツクヴァルくらい強くても行ったことないってことは、暗号を解くのもすごく重要なんだね……」
「そりゃそうだ。あれが解けねーと一生出られねーみたいなことになることもあるぞ」
「ひええ……」
ダンジョンはレベルごとに分けられているようで、最大レベルは5だ。
前までダンジョンを探すだけでも一苦労だったそうだが、最近とある魔法技術の開発によりダンジョンの位置をある程度特定できるようになったらしく、自分のレベルに合ったダンジョンを選んで行けるようだ。
「ダンジョン……」
たどり着いた先にあるお宝たちをちょっと想像してみた。
……なんか、ワクワクしてきた。
「ねねツクヴァル、私ちょっと中入ってみたいかも」
「マジでか? 魔獣はぶん殴れるけど暗号解けねーぞ俺!」
「魔獣とか出たらツクヴァルに倒してもらって……暗号は私解いてみるから! お願い!」
「結構ムズいって聞くけどな暗号……まあ、お前インテリだしやってみっか」
「やったー!!」
早速近くの宿屋に荷物を置いて地図の通りにダンジョンへと向かった。
「ここがそうだよね?」
木々の間へと進んでみると、ぽっかりと穴が空いている。ただの洞窟ではない。地面へ向かって続く石造りの階段があり、その両脇には古びた柱が立っている。
階段を降りてみるとひんやりとした空気が肌を刺激する。日の光は途中までしか届かず、その先は真っ暗だった。
「く、暗いね……」
「火ぃつけるか」
ツクヴァルが小さな青色の魔法陣を手から出すと炎が灯る。その炎を明かりにして先へと進んだ。
「相変わらず便利だな〜青魔法」
「基本だからな」
「こういう時に実感するよ……」
かつん、かつんと足音を響かせながら進んでいく。
しばらく進むと、目の前に三つの扉が現れた。
それを見たツクヴァルが小さく舌打ちをした。
「チッ、暗号型かここ」
「暗号型?」
「魔獣があんま出ねー代わりに暗号がムズいところだよ、レベル2だから迷ってもすぐ出られるんだろうけどな。クソ、だからダンジョンは苦手……」
「あ、これ一番右だ」
「は?」
そこに立っている看板を見ると、「この中で最も青い扉へ入れ」と書いてある。
一番左は赤色、真ん中は紫、右は明らかに青色。炎で灯りをつけてしっかり見ればよくわかることだ。
「一番青いドアに入れって書いてあるよ。え、こんな単純でいいの……?」
「…………お前それ読めんのか?」
「え、あ、はい、一応」
ツクヴァルの様子を見ると、多分これはただの文字じゃないっぽい。
「それ、古代暗号だぞお前」
……普通に読めてしまった。
私からしたら、古代暗号も日本語に見えている。他の言語と変わらない。
暗号って聞いたから、もっとクイズみたいに出るのかと思った。そしたらそもそも「古代の文字をなんとか解読して読む」というシステムだったようで、一瞬で読めてしまった。
「…………」
ツクヴァルの前であっさり読んでしまった。変な汗が出てくる。
「……お前、まさか」
びくりと背が震えた。
流石におかしいってバレた?
多分これって、こんなに一瞬で解読できるものじゃないんだ。読めてしまっている私がおかしいんだ。
(何かしら怪しまれても仕方な────)
「地方神殿のインテリかと思ったらマジでもっと上級の大神殿とかの娘なんじゃねえの?」
バレなかった!
そしてツクヴァルの顔を見ると、なんかちょっとキラキラしているように見えた。
「えっっと……まあ、似たような感じ……かも……」
「マジか、じゃあここのダンジョン全部回れんじゃねーの……!!」
ツクヴァルの声色が急に明るくなった。
私がおそるおそる話しているとワクワクした様子で青色のドアの方へと歩いていく。
「お前すげーな!! 青だろ青、行くぞ!!」
「な、なんか急に楽しそうになったね……?」
「そりゃ、ダンジョン全部見れんならそうなんだろ!!」
ツクヴァルが大剣を片手に持ちながらも足取り軽くそちらの方へと進んでいく。
(さっきダンジョン苦手って言ってたけど……文字読むのが嫌なだけで、もしかして入るのは憧れてたのかな?)
進んでいく。その先でもいくつか暗号はあり、やはり私から見たら読めるものばかりだった。私が解読して進む度にツクヴァルはテンションが上がって子供みたいにはしゃいでいたし、途中で出たコウモリみたいな魔獣はツクヴァルが一瞬で焼いた。
そして30分ほど経ったあと、私たちはなんか財宝を両手にヌルッと出てこれてしまった!
「せ」
「成功……したな……」
「あっさりね……」
ツクヴァルと顔を見合せて目をぱちぱちさせる。
近くの質屋へ売りに行くと、私たちがダンジョンに入るのを見ていたほかの冒険者たちが「あいつらもう出てきたのか……!?」「ダンジョンハンターに見えねーぞ……?」とざわついていた。
(な、なんか)
(思わぬ所でお金稼ぐ手段ができた!!!)
私の力が思わぬところで役に立つことになった。
お宝たちを売ると4万Gとなった。今日の宿代の元は取れたし、私たちは定期的にダンジョンに行ってみようと決めたのであった。
…………この力が後々、私の命を助けたり、首を絞めたりするとは思わなかったけど。




