第一隻 4話 冒険者?魔法陣?バツ印?
そんな訳で。
まあ、色々あった。
まず最初に質屋には行けた。
お金はなんとか手に入れられた。ダイヤの指輪を担保に、なんとか6万ゴールドを借りることができた。
(なんか足元見られてる気がする、絶対取り返す)
ニヤニヤした質屋の店員からダイヤモンドの指輪をそっと取り上げられ、代わりにお金を受け取った。
最終的に今手元にあるのは……なんかのレバーの串焼きと、ほうれん草っぽい炒め物惣菜と、あとお水。
【TIPS! 貧血とは赤血球または赤血球中のヘモグロビン濃度の減少により血液の酸素運搬能力が低下している状態だよ! 野菜に含まれる非ヘム鉄は肉類に含まれるヘム鉄よりも吸収率が低いので、アスコルビン酸(ビタミンC)を同時に摂取すると吸収率が上昇するよ!】
(応急処置でこれ食べさせればいいと思うけどさー)
私だって、ここに来るまでに色々と冷静になった。
確かにご飯を全然食べてないのはまずいけど、その前に医者……とか、祈祷師とかそういうのに見てもらうのがいいんじゃないかって。
だから食事を買う前に「怪我や不調、診ます」と書かれた町医者っぽいところにも行った。
けど、まあ、その結果が散々だったのだ。
「すみません、診て欲しい人がいて……」
「こんにちは! 何かあったの? 風邪? それとも関節の痛み?」
祈祷師……らしき女性がにこやかにやって来る。
「あーいや私じゃなくってぇ……」
あははと笑いながら山の方を指さした。
「あそこに、ちょっと……倒れてるうさぎの人が……」
そう言った瞬間にその女性の表情が変わった。
私を少し睨んだみたいに見たあと、また苦笑いに近い微笑みを向けてこう話してきた。
「ごめんなさい、あそこのラヴィは乱暴でちょっと」
「怖いし……あの人、態度も悪いでしょ?」
「それに、バツ印だし」
そんなことをまくし立てるように言われて結局追い出されてしまったのだ。
お金ならあります! と言おうとしたがどうやらそういう感じの問題でもないらしい。とにかく無理ですといった態度でドアの外に追いやられ、食事を買うしか無くなったのだ。
(すっっごい嫌われてんじゃんあいつ)
山小屋の方に歩きながら考える。そりゃそうだ、だって普通に私と会った時も身体をまさぐってたし。死体じゃないってわかった途端にナイフ向けるし脅すし助けても態度悪いし…………。
(そりゃ嫌われて当然じゃん、自業自得!)
そんなことを考えた時、
ふと思い出した。
(…………)
立ち止まる。
(バツ印ってなんだ?)
祈祷師の女性がさらりと話していた「バツ印だし」という言葉。
「そういえば」
あの男の顔をしっかり見た時、顔が傷跡だらけだった。
頬に擦り傷、首に真っ直ぐな傷。
それと、
鼻のところに……バツ印みたいな、赤い傷跡。
「…………」
あれがバツ印なのか?
そんなことを考えていると横の方で学生らしい子供たちの声が聞こえてきた。
大通りは踏み固められた土で、一部だけ石敷き。家は石造りや木骨造。家の脇には草花が咲いている。そんな景色に溶け込むように女の子たちが話していた。
「私さー魔法陣1個出せるようになったんだよ凄くない!?」
「嘘!? めっちゃ凄いんだけど!! だって訓練とか受けてないんでしょ」
「受けてないけど出せたの! 天才かもしんないマジで! もー勉強ダルいしお城の守り人になろうかなー!」
「守り人は魔法陣6個出せないと無理っていうじゃん、6倍だよ6倍! どっちにせよめっちゃ勉強させられそう!」
きゃはははと笑い声が響いた。
微笑ましいなぁ、話している内容が私の常識を超えまくってるけど。
(へー魔法陣6個が強い? って感じなんだ。そんだけ魔法使えれば苦労しないだろうな……)
魔法が使えると守り人ってやつにもなれるんだと思いながら景色を眺めていると掲示板があった。「冒険者の方! 魔獣退治求む!」とか「薬草採取を手伝ってください!」とかそういうのだ。
(もうほんとに何もかもわかんない……冒険者とかもいるんだ……)
頭が痛くなってきた。
本格的に頭がおかしくなって変なものを見てるのか、はたまた悪い夢か。
(夢だったとしても、覚めるまではここで生き残らなきゃダメじゃん……)
今後のことを考える。
身分証もない、インターネットも無さそう、どこかもわからない、親も友達もいない。
ぞわりと言い表せない恐怖が押し寄せてくる。
不安だ。
「…………」
「とりあえず……帰らないと……」
今はまず、あのうさぎ耳の男が倒れているのをなんとかしなければ。何とかしたところで、どうなるのかは分からないけど。
「…………」
山の少し上を見た。
(あいつ、なんで死体漁りとかしてるんだろう)
足を進めた。




