閑話短編 パルヤ、一目惚れする
僕もこの町に来てから少し経った。
今のところはヴィージの逃亡兵だとバレずに過ごせている。だけど油断はしちゃいけない。
(ドゥイル店長はいい人だから今は良いとして、他の人をすぐ信用する訳にはいかねえ)
確かにこの町の人は良い人だ。だけど僕の正体がバレることについては話が別だ。
そんなことを思いながら店長の腰痛を診てもらうために施療所の扉を開けた時。
「あら、こんにちはドゥイルさん。そちらの方は?」
僕に衝撃が走った。
『私はキャッツですから、あまり身長が高くなくて不便なことが多くて……』
『そうなんですねそういえばノトヴァの平均身長は180前後らしいですよ僕もそのくらいですが』
『パルヤ!』
『ご飯屋さんって楽しそうですよね〜。なんでも食べる人って、見てて気持ち良いですし』
『あー腹減りましたねちょっと手袋食ってもいいですか?』
『パルヤ!!!』
そんな感じで。
店長の治療が終わったあと、僕は店長に半ば引っ張られるようにして店まで連れ戻された。
「パルヤ、流石に態度が露骨すぎるぞ!! 儂の治療でこれからお前も付き添って通うんだからシャキッとせい!!」
「べべべべべべ別に好きじゃねえですけど」
「無理があるわ!!」
僕は休憩中の店のソファにぐったりと腰掛けて考えていた。
知らなかった。あんなに可愛い人がいるなんて。
「ローロラさんっていうんですね」
「そうじゃな、前からこの町にいる祈祷師の人で……パルヤ!!! 茶をこぼすんじゃない!!」
茶を口に入れているかと思ったら全部入っていなかった。口の手前の方で自分の腿に茶を注ぎまくっているのに気が付きタオルを持ってくる。
(僕が? 敵国の女を?)
好きになった?
確かに見た目はドンピシャで可愛いなと思ったし、おっとりしてるし、優しいし、良い人だなと一目でわかったけど。
「いや好きとかじゃないと思うんですよね……」
「パルヤ!!! 机に茶を注ぐな!!」
店長に頭を引っ叩かれてタオルで机も拭き直す。もう全部びしゃびしゃだ。
「店長深い意味はないんですけど明日も腰痛になりませんか?」
「お前、夕方店を開けるまでその調子だったら減給するからな」
店長が前のソファにドカッと座り訝しげな目で僕のことをジロジロと見てくる。
「パルヤ、そこまで女に慣れていないか? お前は男前だし免疫くらいはあると思ったんじゃが…………」
「あーー…………」
そう言われて、思い出す。
ヴィージで徴兵していた頃を
その時付き合っていた、可愛い彼女を。
そして仕事から帰って家の中に入ったらその彼女が普通に男を連れ込んでいたトラウマを!!!
「すいません、そこらへんはあんまり触れないでください…………」
「お、おお……悪かった……」
ヴィージとか関係なく、これに関しては触れられたら僕のメンタルが崩壊しそうなのでもう話してもらわないことにした。




