第四隻 1話 前線最強の伝説 白銀の残光って結局何!?
「ねえパルヤさん………」
「別に呼び捨てでいいよ」
内心呼び捨てにしていたから助かった。まあそれは置いておいて、私たちは山小屋の方にパルヤを招いて魔獣の解体練習をしていた。
パルヤが口頭で教えて、それにツクヴァルが従って、私は手順書とかそういうのを書いてまとめて何か忘れた時にいつでも確認できるようにと分担作業をしていた。
現在は解体作業をある程度終えたツクヴァルが「血ついて気持ちわりぃ」と言って水浴びをしているところである。
だからこそ、今聞くチャンスだと思ったのだ。
「白銀の残光ってさ……結局、何?」
これだ。
夜の山で待ち伏せした時、パルヤはツクヴァルのことを「白銀の残光」と呼んでいた。これが結局なんなのか分かっていないのだ。
本人に聞くのが良いだろうか悩んだが、こういうのは逆にまず第三者から聞いてみようと思った。より正確な情報を得られるかもしれないし。
「…………」
訝しげな目を向けながらパルヤが腕を組む。
「ヒロコって記憶喪失なんだっけ?」
「あはは……実はそうで……」
「知らないで一緒にいたのかよって思うけどさ、まあそれなら仕方ないのか……」
で、ここからはパルヤが丁寧に説明をしてくれた。
「まずそもそも魔法ってのは……」
魔法陣というのはまず、灰色から使えるようになるのが基本らしい。
そこから特訓して色を付与していき、ようやく立派な魔法使いとなれるらしい。付与できる色は全部で八種類あるようだ。
「ピンク、緑、黄色。この辺は基本魔法。青になると中級だな」
「基本が三色。中級が青。この四色くらいが一般的な冒険者の範囲」
メモしていく。
「じゃあピンク、緑、黄色を覚えてから青になるってこと?」
「いや、そこはそうでもない。僕みたいなアノトはピンクとか飛ばして最初っから青使えるやついるし。ラヴィとかキャッツはピンクから入るやつ多い。ノトヴァは黄色とか緑から入るのが多いな」
「種族ごとに色々違うってことか〜……」
「それもあるし、個人差だな」
「じゃあ四色全部使える人ってすごい?」
「すごいはすごい。ただ、色増やすことしか考えてねえやつもいる」
「増やすだけじゃダメってことか……」
「青まで使えます、緑も使えます、黄色も使えますって自慢してんのに、全部中途半端なやつ。実戦じゃ普通に弱い」
なんとなく想像ができる。量も大切だが、質を磨かなければ戦場じゃ通用しないのだろう。
「じゃあその四種類以外の色っていうのは……どういうやつなの?」
手を挙げてそう聞くと、パルヤの表情が変わる。
「紫からは上級。ここまで来ると努力すれば誰でもって話じゃなくなる」
「そ、そんなにすごいものなの……?」
「紫の次が赤。その次が金。そこまで行くともう、町の冒険者で見かけるようなもんじゃない。紫使える時点でかなり珍しいし、赤になったら軍とか大きいギルドでも上澄み。金なんて名前知られててもおかしくねえよ」
ゴクリと息を飲む。
「じゃ、じゃあ、白銀って……」
パルヤが目を細める。
「国家級」
国家級。
全然「お城の守り人」レベルじゃなかった。
というかそもそも、ツクヴァルはファイアベア討伐した時に金色も普通に使っていたように見える。
「そんな国家級のやつポンポン使っちゃダメじゃないの!?!?」
「本当だよ!! こんな小さい町にそんなのいるわけないから周りにあいつの成果だって信じて貰えなかったんだろ!! そもそも紫以上を見たことあるやつなんて少ないんだって!!」
「白銀とか金使ってたのに灰色とか黄色と間違われてたってこと!?」
信じられなさすぎる。
当たり前だ、ここの町はたしかに小さいながらも色々な冒険者がいるけど金色とか使っている人を見たことがない。
そんな中でスラムに通ってたバツ印の男が急に白銀と金を使って依頼達成して歩いているとか、周りから正しく認識されるはずがない。
「……昔、前線でぜーんぶ一瞬で崩してくるやつがいるって言われてた」
パルヤがぼそりと言う。
「敵国にいる前線最強の戦士。一瞬で崩して、一瞬で帰っていく」
「だから、白銀の残光」
ぞっとした。
ツクヴァルってそんなに強かったんだ。
(私とんでもない人と一緒にいるんじゃ)
恐ろしくなってきたが、首を振って一旦話を戻す。
「パ、パルヤはよく気がついたね?」
おそるおそる聞く。
パルヤはあの時、ツクヴァルの魔法を見て一瞬で「白銀だ」と気がついていた。依頼をこなしている中で他の冒険者からそんなことを言われたことが無かったのに、パルヤだけ正しく認識していたのだ。
ツクヴァルがあの時パルヤに言っていた「お前も結構やるな」という言葉にも納得がいった。
(見る目がある、ってことか)
「まあパッと気がついたのも理由があって……僕は青とピンク使えるんだけど、それとは別にちょっと特殊なんだよ」
「特殊?」
「錬金術できるんだ」
そういえばパルヤは青い魔法を使いながら斧を作って戦っていたような気がする。
「錬金術って青い魔法陣なの?青って、炎とか水とかそこらへんだった気がするんだけど……」
「そもそも、錬金術ってのは火、空気、水、土の4つを組み合わせてできるもんなんだよ。だから器用なやつはちょっとずつ火魔法、風魔法、水魔法、土魔法を使って武器とか作れるようになるんだよ」
「よ、四大魔法って大体その中のひとつしか使えないって聞いたけど。じゃあ錬金術師って凄いんだね」
「まーな。ま、僕はその上で土魔法を結構使えるから戦場にいた」
パルヤもかなりの実力者であることがわかった。つまり、四大魔法を本当にちょっとずつ使って物を作るのが錬金術師。四大魔法の中で特にひとつ長けているものがあれば戦場に行ったり特殊な資格を取る人が出てくるみたいだ。
戦場にも行けて、錬金術もできるパルヤはかなり凄いのだろう。
「軍でも習うけど、錬金術師は特にそういう魔法への対策とか叩き込まれるんだよ……だからあいつが白銀だって気がつけた」
「なるほどね……」
上級錬金術師はツクヴァルみたいに時を戻してくる魔法を対策してくると聞いていたし、そういうことなんだろう。
「あーさっぱりしたわ」
話しているとツクヴァルが水浴びから帰ってきた。上裸で濡れた髪の毛をブルブルと振って水を落としている。
「風邪ひくよちゃんと拭かないと」
「ひかねーよこんぐらいじゃ」
タオルで頭を拭いてやろうとすると、ツクヴァルがしゃがんで頭を下げてきた。拭かれているツクヴァルを横目にパルヤが解体された肉の方を見る。
「結構上手くできてんだろ?」
「できてる。肝臓も完璧に取れてんな」
「へへん」
ツクヴァルが拭かれながら得意げにする。前々から思っていたがやっぱり器用なやつだ。
「短期間しか教わってないのにもうできるってすごいね……」
「だろ!? じゃあこれであとは食えんだろ!」
「いや」
パルヤがそれに対して制止するように言う。
「まだ問題はある」
「そうだね、見た目は完璧とはいえ……もしも知らないうちに目視できないくらいの小さな傷ができていたり、元々毒が体内に漏れ出していたりしたら大変だから……」
「「本当に食べられるかの確認が必要だな/だね」」
私とパルヤの声が被った。




