閑話短編 こいつ俺のこと好きなのか?
閑話の短編です。
………。
ここ数日でなんつうか色々あった。
息止まってる女の死体漁ったら、普通に息吹き返して、どうすんだよこれと思って指輪よこせって言ったら飲み込まれて、んでまあなんやかんや一緒に冒険者やることになって…………。
で、今じゃ隣にその女の家がある。
なるべく体力使わねえように天井見て、酒買う金無くなったらスラムの方に行く生活だった。んなのがぜーんぶ変わりやがった。
(記憶喪失とか言ってたな)
正直、違和感はある。
上手く言えねえけど言葉の節々に「本当に記憶喪失か?」ってのがあるし、その割にゃ俺でもフツーに知ってることを全然知らねえし、かと思ったらどんな病気だとかなんの飯食ったら良いかだとかべらべら喋ってくる。
「マジで何もんなんだあいつ……」
くあ、と欠伸が出た。戦場いた頃の癖で、朝目覚めんのが早い。けど別にやることもねえしあいつが起きてなんか話しかけてくるのを待つだけだ。
あいつがころころ忙しそうに動いてっからあいつのことで聞きてえこともあんま聞けてねえけど、まあそれは良い。
それよりも超大事なことがある。
(あいつ…………)
(俺のこと好きなんじゃねえか!?)
ここだ。
ここが大切だ。
いや、
俺が好きな訳では無い。インテリの女とか隣にいるだけで上品が感染しそうだし、無邪気さにこの俺までつられてパァになりそうだし。
最初見たときゃ拉致られた金持ちがそのままスラムにポイされたのかと思ったけど、様子見る限りそういう感じでもねえ。そもそも拉致られて捨てられたんなら服とかも剥がされてる筈だしな。
んじゃワケありで出てきたのかって考えると、それもあんま辻褄が合わねえ。
少なくともあいつは家に帰りたがってるように見えた。
「けど」
思い出す。
『私と一緒に、ご飯を食べられるようにしよう!!』
『そんな理不尽でクソみてぇな努力を!!! これからも一緒に続けてくれませんか!!!』
で、
『貴方の名前って、なんですか』
これだ。
「…………」
(俺のこと好きだろ!!)
ほぼ確じゃねえか?
しっかしどこに惚れたんだかこの女。死体漁り好きになるとか、あんま見る目ねえな。
まあ確かに戦場いた頃は「前線最強」とか言われてたけど女は気味悪がって近寄らなかったし、女の店行った時も…………
「いやこれは思い出さねえことに決めた」
やめた。あれは俺が悪かったんじゃねえ。急に「お兄さん初めてなの?」とか聞くから間違えてデケェ声出しただけだ。まあ女にデケェ声出してビビらせたのは悪かったかもしんねえけど追い出されるまででは無かっただろ、俺は悪くねえ。
(クソッ思い出さねえようにしたら逆に思い出した。イラつくな)
酒飲むかと思って棚の方に手を伸ばす。けどそういやあいつが「朝に酒飲むな」って勝手に決めてきやがったし、まあやめておいた。
キレられて文字読まれなくなったら困るしな。
(ま、従っとくか。金なるし)
(まーそれに俺のことが好きでこれから一緒にいてえってんなら)
ま、考えてやらなくもないかと思った。
「ツクヴァルごめん!! ちょっとこれ運ぶの手伝って!!」
「あー?」
ベッドから起きて声がした方に行く。
今日もまあこんな感じで始まりだ。
「仕方ねえな」
「ありがとー……って何ニヤニヤしてんの。怖」
「別に?」
荷物を持った。




