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物語のかけらを集めて  作者: 駒野沙月


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13/15

冬の公園

 買い出し帰りに近所の公園の傍を通ると、そこは一面雪に覆われていた。


 足跡ひとつない、綺麗でまっさらな雪の世界。幼い頃の自分であれば今頃足跡をつけに駆け出していたに違いない光景だが、もう大人なので外から眺めるだけに留めておく。雪に覆われた公園なんて今更珍しくもなんともないはずなのだが、いざ目の前にあるとついつい足を止めてしまうのは、雪国であっても──いやむしろ雪国だからこそ──誰も足を踏み入れたことのない綺麗な雪が少ないからだろうか。


 そうやってぼんやり眺めていると、ふと視界の端で何かが動いた。改めて見てみれば、まっさらかと思われた雪の上には、小さな足跡が一本伸びていた。

 どうやら、この場所に辿り着いたのは俺が最初ではなかったらしい。


「何してんの、かくれんぼ?」


 その足跡を辿った先にいたのは、小さな子供。生憎と言うか幸いと言うか、そいつの顔はよく知っている。数年くらい前にこの辺に越してきた家の子供だ。

 あえて普段通りのトーンで声をかけたが、小さな肩はびくりと跳ね上がった。おそるおそる、といった面持ちで振り返ったその顔は、鼻の頭と頬が真っ赤に染まっていた。


「おにいちゃん……?」

「雪の上でかくれんぼは無理だろ。目立ちまくりじゃねえか」


 子供用の小さなダウンに手袋、子供っぽい柄の長靴。子供向け商品にありがちなカラフルな色彩は雪の上でなくてもよく目立つ。公園の隅の方で死角に入ってさえいなければ、外からだって簡単に見つけられただろう。


「かくれんぼじゃ、ない……」

「んじゃなんだ、家出か」

「……こうくんは、わるくないもん」

「そういうのはパパとママに言えよ。俺に言われても困る」


 ほれ、と両手を広げてみせれば、そいつは素直にこちらへやってきた。おそらく、家に帰る気まずさよりも寒さと寂しさが勝ったのだと思う。抱き上げた小さな体からは子供らしい熱を感じたけれど、その表面は触ったこちらまでもが凍えそうになるくらいに冷え切っていた。


「うわ、靴下まで濡れてるじゃんか。お前ここに何時間いたんだよ」


 先俺の家な、乾かしてから送ってってやるから。

 そう言えば、流石に今回はちょっと躊躇ったようだけれど、やはり素直にこくりと頷く。


「とりあえずうちで体温めろ。コーヒー……は無理か、温かいお茶でも飲ませてやるから」

「ココアがいい……」

「ねえよんなもん。贅沢言うな」


 小さな体はまた少し、熱を取り戻したようだ。

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