六十三話 恋人達との一時
エレネシア王女様がいきなり現れて混乱した俺であったが夜も遅かったので場を改めることにして一度宿に戻りマリカさんに無事四人を連れ戻したと報告した後、部屋に入ってすぐに眠りについた。
そして翌朝アレスは心地よい重みを感じて目が覚めた。
「ん、んん、、何だスカハか」
俺の胸板に頬をくっつけるように寝ているスカハが目に入った。
そして首を左右に動かすと右腕と左腕に抱き着くメリアと輝夜が居た。
俺は疲れて四人一緒に寝たことを思い出した。
「ああ、そうだ、昨日王女様と会って今日ターズの領主の館に来てくれって言われたんだったな」
俺は昨日王女様に言われたことを思い出しながら美しい肢体が見えそうな薄い下着姿で眠るメリアとスカハ、そして胸をサラシで巻いただけの輝夜に意識を奪われてないように気をつけてベッドから降りた。
「刀は……あそこか、魔導服は、ここだな」
俺は部屋の片隅にスカハの二本の槍と輝夜の刀である白夜と共に立て掛けてある龍星と龍焔を見止めてから少し血に汚れたのでマリカさんに洗濯を頼んだ魔導服が扉の近くに掛けてあるのを確認して袖に腕を通して着用した。
「あ、アレス、おはよう」
ベッドに戻ると魅惑の太腿を晒してベッドに腰掛けて足をプラプラさせているメリアが目に入った。
「ああ、おはようメリア、今日は早く起きたんだな」
「んーん、特に意識した訳じゃないけどエレンに突然再会してビックリしたからかも?」
メリアは可愛く小首を傾げて言った。
「メリア、あんまり魅力があるのは良くないと思う、正直こっちの理性が持たない」
「ええ!?、真顔で言う事なんだ、それ…」
メリアは一瞬驚いてアレスの真面目な顔を見て顔を真っ赤にした。
そして自然と二人の距離は縮まり…
「私を忘れている」
「うわ!?」「うお!?」
突然起き上がったスカハに俺とメリアは驚きの声を上げた。
「二人でイチャつくのは良い、けど目の前でやられるとむかつく」
スカハが頬を膨らませて言った。
「悪かったよ、まさか起きてるとは思わなかったんだよ」
俺はむくれたスカハの頭を撫でながら言った。
「もう少し撫でて欲しい」
スカハは自分から頭を押し付けてきた。
「分かったよ」
アレスは苦笑しながらスカハの頭を撫でで続けてその後に起きた輝夜にもすることになるのだった。
「メリアの銀色の髪は触ってて心地いいから良いんだけど、何でいつも俺がやるんだ?」
まだ空は日が出てからさほど時間が経っていなかったのだが俺は何故かメリアの髪を櫛で梳いている。
「男のアレスには分からないかもしれないけど髪は女にとっての命なんだから好きな人に梳いてもらえるのはとても嬉しいことなのよ」
メリアは綺麗な銀髪を左右に振りながら言った。
「アレスは長い髪の方が好き?」
スカハが俺の膝の上に頭を乗せて聞いてきた。
「んー、と言うよりもメリアの髪だから好きというか…」
髪の長さで言ったらメリアと輝夜が腰まで伸ばしスカハは肩口まで伸ばしているが俺にとってはメリアたちの髪の長さが変わっても気持ちは揺らがない。
「さてはアレスは天然の女たらしではござらんか?」
俺の左肩に寄りかかりながら白夜の手入れをする輝夜が背中越しに言った。
「何言ってんだよ、女たらしなんて現実には居ないと思うぞ、出会った瞬間一瞬で相手を虜にするなんて…」
俺とメリアが会ってから恋人同士になるまで一週間も経っていない、スカハや輝夜についても似たようなものだ。
自分の言葉に少し自信が無くなってきた。
「何で落ち込むのよ、普通の男なら喜ぶところよ」
「いや、だって俺が好きでもない人まで虜にすると思うとな」
俺は別に女好きでは無い、勿論人並みに欲はあるがメリア達にしかそれは感じない。
俺の中で女たらしとはどんどん女が集まるイメージがある。
本当にそんなことになったら俺だったら困り果ててしまう。
「モテる男の悩み」「贅沢な悩みでござるなー」
スカハと輝夜は嬉しいそうに口元を緩めて言った。
アレスがどれほど自分たちを大切にしてくれているか感じた為だ。
「そう言えばあんまり聞いた事無かったけどメリアたちは俺のことをどう思ってるんだ?」
俺は話しながらメリアの銀髪の毛先を整えるように櫛を使った。
既に何回もやってきたのでやり方が何となく分かってきたのだ。
「筆舌に尽くし難いわ、アレスの魅力を朝の一時で語ることは出来ないわね」
真面目な声で言うメリアに俺と輝夜は笑いを零した。
「メリアは少しおバカ」
スカハが呆れるように言った。
「本当のことよ!、心まで満たしてくれる人なんてアレス以外に居ないんだから」
どうやらそれが本音のようだ。メリアは髪を整えていた俺の手を押し退けて振り向き俺の方を向いて言った。
「私にとっては恩人、そしてこの世で一番愛してる人」
スカハがアレスの膝に頭を乗せながらアレスの蒼色の瞳を見て言った。
「拙者にとっては尊敬する武人であると共に最愛の人でござるよ」
輝夜は白夜を鞘を収め俺の左肩に寄りかかる度合いを高めて言った。
「三人にそう言って貰えると嬉しいな」
「「「!!」」」
本当に嬉しそうに笑みを零すアレスにメリアたちは静かに心臓を撃ち抜かれて顔を真っ赤にした。
メリアたちは口にはしなかったが確かにアレスより顔立ちが整っている者は頑張って探せば居るだろう、アレスは特段顔が良いと言う訳では無いだがそれを上回る力がある。
男として武人として他を圧倒する覇気を持ちながら決してそれを誇示しない謙虚な心、気に入らないのならメリアを追ってきた国の軍隊とも戦い、悲しい心で振るわれる君の槍が見たくないといい殺しあった相手を救う、知り合いと本気を出して斬り逢い勝利する。
アレスは他の人とは違う、そしてそんなアレスことが愛しくて堪らないというのがメリアたちの本音だった。
「「「アレスー!、大好き『でござる』」」」
三人の少女は感慨極まってアレスに抱き着くのだった。
「うお!?、ちょ!、三人共!?」
アレスは三人に同時に抱き着かれたのでベッドに押し倒されてしまった。
「うふふ、不意打ちは駄目だよ、アレスー」
メリアは俺の上に乗って淫靡な笑みを浮かべた。
「うん、私たちも女、アレスは少し油断した」
小柄なスカハが上着を脱いだ。
「アレス、覚悟するでござるよ♪」
輝夜は心底楽しそうに言った。
朝の一時は大きな多幸感に包まれてとても幸せだったと記しておく。
太陽が完全に顔を出した頃にアレスたちは部屋から出てきた。
「あ、おはようございます!」
俺が三人といちゃつきながら食堂に行くと昨日助けた四人の亜人族の人達が俺たちに頭を下げてきた。
「おはよう、俺に何か用事か?」
「はい!、王国騎士様がお見えです」
小人族の人が指さした方向を見ると俺を見て何やら悔しそうにしている男性とそれを慰めている女性の騎士が目に入った。
「失礼します、王女「殿下よ、アレス」殿下麾下の騎士ですか?」
俺は耳打ちして来たメリアの言葉に従って椅子に座る二人の騎士に話し掛けた。
「朝から美少女を侍らせやがって、痛っ!」
「黙りなさいグチグチとうるさいわね、、その通りです、王女殿下よりアレス様をターズ領主の館に案内するように仰せつかっております」
何やら呪詛のようなものを吐いていた男の騎士を叩き背筋を伸ばさせてから女性の騎士が言った。
「すぐに向かいます、と言いたいところですがまだ朝ごはんを食べていないのですが…」
「ご心配なく殿下が屋敷にて朝ごはんを用意してくださっています」
王女様が朝ごはんを用意しているという言葉に若干首を傾げた俺たちだったがとりあえず納得して騎士たちに連れられてエレネシア王女様が居るターズ領主の館に向かうのだった。




