三十九話 亜人の宿屋
三十四話でメリアが手に入れた国宝を翼型のブローチではなく額当てに変更しました。
アレスたちが船に乗り港に戻ると多くの人から歓声を浴びた、そして現在ターズの冒険者ギルドのギルド長室に通されていた。
「王都での活躍は聞き及んでいたが君たちは規格外だな」
そう言ったのは筋骨隆々のギルド長メルクだ。
魔物騒ぎを聞き付けて港にやってきたメルクさんに連れられ俺たちは街の混乱から逃れる為一時的にここに居た。
ちなみに何故メルクさんが俺たちのことを知っているかと言うと各街のギルド長は通信魔道具と言う遠距離間で連絡する魔道具を持っていてそれでファリスや王都のギルド長から聞いたからだとか。
「俺たちは冒険者だ、魔物討伐するのは当たり前だけど派手にやり過ぎたのは自覚してるよ」
「自覚はあったか、今街では天使様が降臨したぞ!って大騒ぎだからな」
メルクさんはメリアを見て言った。
「私も驚いた」
スカハがメルクに同意するように頷いた。
「あれは私としても予想外だったのよ」
メリアは拗ねるように言った。
メリアの話を聞くに翼の魔力を制御するために《光》の扱い方を身に纏うでは無く周囲に広げるように拡散させようとしたらあの魔法が発動してまるで本物の天使のような姿になったらしい、ギルド長に言う気は無いが。
「天使のような姿になれる、ファフニールは何者だ?」
メルクは両手を組んで言った。
「何故メリアが伝説の天使ような姿になれるのか?、その疑問にはターズ冒険者ギルドのギルド長とはいえ答えられない、あえて言うなら魔法だ」
「そんな魔法は聞いた事ないな、ババムートお前は頑固だな、あくまでファフニールの力については話さないと?」
「ああ」
「どんなに圧力をかけられてもか?」
「ああ、メリアの力はメリアのだ、他人に話す利も無い」
俺はあくまで拒否を示した。
「はぁーー、冒険者ギルドとしては優秀な冒険者を手放す訳にはいかないからな、覚悟はあるんだな?」
メルクの姿が大きくなったように感じた、それ程の威圧だ、常人なら気絶してしまうだろう。
「当たり前だ」
俺は自然と声が低くなり剣気を飛ばして威圧し返した。
「!?、お前凄いな、どれだけの勢力がファフニールを狙うか分からないぞ、もちろん冒険者ギルドだってな」
メルクさんは額から冷や汗を流して言った。
「敵対するなら潰す、メリアは俺のだからな」
俺は堂々と宣言した。
「アレス♡♡」
メリアの目がハートに見える気がするが今はスルーだ。
「お前の覚悟は理解した、すまんな、試すようなを真似してしまって」
「いや、気にしないでくれ、メルクさんは随分と優しいんだな」
「お前らは冒険者になってからまだ一ヶ月だ、お前らの味方は多くはないからな、お前らが冒険者で居続けるなら支持ぐらいはするさ」
「ありがとう、それと話は変わるだけど大和の国へ行く船はいつ頃出港するんだ?」
俺はこの際目の前のターズの重鎮に聞いてみることにした。
「大和の国?、また遠い所にいくんだな、確か次の貿易船はナンキ商会の船だから四日後だな」
「四日後だな、分かった助かったよ」
そう言って俺は立ち上がった。
「もう行くのか?、ならファフニールは外套を被った方がいいぞ、銀色の髪は目立つからな」
「そうするよ、適当に宿を探して、体を休めるさ」
「うちのギルドにもいくつか魔物の討伐依頼があるんだが受けてくれるか?」
「ん?、まぁ、暇を見つけてギルドに来るよ」
そう言って俺たちは冒険者ギルドを出るのだった。
◆◆◆◆
「アレスごめんなさい私のせいで…」
宿を探している最中外套越しにメリアが言った。
「いや、俺もメリアの力の注目度を考えるべきだったよ」
俺はいきなり魔物が現れて焦っていたのだろう、今考えれば無理にメリアに翼を出させる必要は無かったのだ、よく考えれば他にも方法があったはずだ、まぁさすがに本当に天使のような姿になった時は驚いたけど。
「天使は千年前の大戦以降降臨していない、けどメリアは本物の天使の転生体?、なんだよね?」
スカハはメリアに確認するように言った。
「うん、そうらしいけど、分からないわ記憶は無いし前世がラミエル様!、って言われてもピンと来ないのよ」
メリアは腕を組んで首を傾げながら言った。
「メリア、天使について調べるならイグザード聖王国に行く必要がある」
イグザード聖王国はラース大陸の北東にある国で簡単に言えば宗教国家だ、創世神キリアを崇める創世教会が治め神龍様を崇める神龍教団が総本山を置いている国だ、天使について調べるなら行かないといけないだろうと思う。
「聖王国かー、王都でもそんなに分からなかったし帝国での用事が一段落したらにしましょうか」
「賛成だ、お、あの宿にするか」
俺は足を止めて二階建ての建物を見た、看板には"癒しの泉”と書かれていた。
中に入ると受付とテーブルが幾つかあったがやはり人が居なかった、既に日が傾き皆が宿をとり始める時間帯なのにだ。
(まぁ、人が居ないのは好都合だな)
「あ!?、お客様ですか!?」
俺の腰辺りから声がした。
「小人族?」
スカハが呟いた、目の前の人は背が低く俺の腰辺りしかなかったのだ。背が低いのは亜人族の一つ、小人族の特徴の一つであった。
「ああ、そうだ…」
「女将を呼んできます!」
俺が何か言う前に小人族の女の子は奥に走っていってしまった。
「お客様を放っといて来てはダメでしょう!」
仕方ないので椅子に座って待ってると奥から給仕服を着て顔や腕に鱗を持っている女性が出てきた。
(海人族だよな?、鱗あるし王都だと亜人族は見なかったから新鮮な感じだな)
「申し訳ありませんお客様」
俺たちが居るテーブルにやってきていきなり頭を下げてきた。
「えーと、宿には泊まれるんですよね?」
「あ、はい、一人一泊銅貨六枚です」
女性はキョトンした表情を浮かべたもののスラスラと答えてくれた。
「三人部屋を三泊でお願い出来ますか?」
俺は金貨を一枚だして言った。
「え、お客様、金貨ですと少し多いですよ」
女性は金貨を若干呆然と見て言った。
「知ってますよ、その代わり部屋でうるさくかったりするかもしれないのでその迷惑料ってことでお願いします」
俺はこの宿は何やら内装は良いのに繁盛してなさそうだったので理由をつけて金額を上乗せした。
◆◆◆◆
「さて寝る前にメリアの力について考えよう」
俺は部屋に入り一段落したところで口火を切った。
「確認だけどメリアはもう一度あの姿になれるか?」
「銀光剣と鎧を召喚して、翼を出せば多分発動すると思うわ」
メリアの言葉には確信のようなものがあった。
「翼から流れる魔力を抑えることは出来るのか?」
「無理よ、あの魔法を使わなかったら魔力暴走に陥ったかもしれないぐらいヤバかったのは事実なのよ」
「魔力暴走か」
もしメリアが持っている魔力が暴走して爆発したらターズは多分跡形もなく消し飛ぶだろう。
「そもそも天使の翼はどんなもの?」
スカハは疑問に思ったことを聞いた。
「普通に考えれば空を飛ぶ為だよな?」とアレス。
「でもアレスは翼が無くても飛んでた」と反論したのはスカハだ。
「魔法を使うのを補助する為とか?、今までも翼の数が増えると光魔法の威力が上がったりより使いやすくなったりしたし」
「六枚であの威力、更に上がある?」
スカハは若干慄いているようだ。
(もしかしたら光盾ムーンがあればどうにかできるかもな、まぁその情報も集めてみるか)
「うーん、私《光》の使い方をもう少し考えてみるから二人は夜も遅いし先に寝てていいわよ」
メリアはベッドに座って腕を組み考え込みながら言った。
「そうか?、ならスカハ二人で魔力操作鍛錬しないか?」
俺はベッドの上であぐらをかいてスカハに聞いた。
「魔力を送り合うやつ?、構わない」
スカハは俺の前に小さく正座をして座って言った。
俺たちは両手を合わせて魔力を流し合った。
《ほう、魔王の末裔ですか、まだ残っていたんですね》
(ーーー)
なんか神龍様の声が聞こえた気がしたが俺は無心を貫くのだった。




