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三十八話 天使

「大変だ!魔物に追われた船が近づいてくるぞ!」

「なんだと!?」「どこの馬鹿がそんなこと!?」

そんなことを誰が叫ぶと誰も彼もが口々に反応した。


「メリア、スカハ」

「分かってるわよ」「うん」

俺が二人の名前を呼ぶと二人は信頼の眼差しを向けてきた。

「ありがとう」

俺は短く礼を言って港まで走り出した。



港に着くとこの港に迫る船とそれを追う魔物の水しぶきが見えた。

「メリア!、スカハ掴まれ!」

「任せて!"我が光は我と共に・光翼(ウイング)”!」

「了解」

メリアは魔法を使い翼を生やして飛びスカハは俺に抱き着いた。


「うぉ!?、なんだありゃ!?」

港にいる人たちが驚いているが気にしない、もし港に魔物が来て港が壊れたら困るのだ。


「"龍闘気解放”!」

俺は龍星を抜きその魔力を魔導服に流して龍闘気を解放した。

自分で調べて分かったことだがどうやら俺の着ている魔導服は龍闘気と龍星(オロチ)の魔力に反応して一時的に進化することが分かったのだ。

その能力は飛翔、つまり空を飛ぶことだ。


俺はスカハを強く抱いたまま空に舞い上がった。

「八頭の龍の幻影…」

スカハが腕の中で呟いた。

だが人を二人を空に飛ばしているので龍闘気の消費が尋常ではない、だから俺は《蒼の雷眼》を使って蒼雷を身に纏いメリアを追って加速した。


船が間近に見えてきた。

「アレス!、前の二匹は魔物は私がやるわ!」

「分かった!」

視界に映る魔物は魚のサメを何倍にも大きくしたような魔物だ、それが四体。

メリアは龍闘気の消費が激しい俺を気遣い前の二匹をやってくれるようだ。


「"銀光よ・我に纏え”」

メリアの全身を光が包みドレス鎧を着た瞬間、メリアの翼がより輝いた。


「うわ!?、魔力が溢れる!?」

「どうした!?、メリア大丈夫か?」

俺はいきなり慌てたメリアに驚き近づいた。


「だ、大丈夫よ、何だか鎧を召喚したらいきなり翼から魔力が流れこんできて驚いたのでも大丈夫よ、きちんと制御できるから」

「無茶はするなよ!」

俺はメリアに釘を刺して逃げている船の甲板に降り立ちスカハを丁寧に降ろした。


「船長!?、もし港に魔物を入れたら法律違反で騎士団に逮捕されますよ!?」

「ぬんなっことは分かってる、でもターズに魔物を向かわせるしか俺たちが生きる方法は…」

「魔物は俺たち《雷光》が討伐しますよ」

俺は緊迫した甲板で宣言した。

甲板にいる船員たちは時が止まったように硬直して甲板に立つ俺とスカハに視線を向けた。


光剣雨(シャインスコール)!!」

甲板が静かになったと同時に船を追う魔物たちに空から光の剣が降り注いだ。


「何だあれ!」

船員の一人が空を飛ぶメリアを指さして言った。


「お、お前らは何もんだ!」

「俺たちは銀鉄級(ミスリルランク)冒険者パーティー《雷光》だ!」

俺は銀色の冒険者カードを掲げた。


「冒険者!?」「どうやってここに…」

「質問は無しだ、訳あってお前たちを助ける、船が転覆しないように操舵してくれ、今から魔物を討伐する」

「む、無理だ!、あいつらは特級危険種ギガントデスシャークだぞ!?」

またもや船員の一人が叫んだ。


「無理じゃない、今から証明する、スカハ行くぞ!」

「うん!」

スカハは背中の鞘から二本の金と赤の槍を抜いて俺と同時に走り出した。


「よく分からねえが、今はあの冒険者を信じろ!、帆を畳め!、船が転覆しないようにするぞ!」

「「り、了解!」」

船長の言葉に船員たちは慌ただしく動いた。


俺とスカハは船尾に行き追ってくる魔物を改めて確認した、背中に傷を負っている魔物が四匹、多分メリアの魔法を受けたからだろう、メリアがそのうちの二体と肉薄している。


「シヤァァァ!」

鮫の魔物は空気を切り裂くような声で叫んだ。


「スカハ頼む!」

俺は龍闘気の使い過ぎで疲労感があるから本気が出せないのでスカハに任せた。

「うん、"氷よ・広がれ・氷歩行(ブルーウォーク)”」

スカハは船から降り海に足が触れる直前にスカハが降りた海面が凍りつき足場になった。

スカハの持つ属性は水と氷、つまり水(正確には違うが…)を凍らせることは朝飯前だ。

スカハは海面を凍らせながら走り魔物に接近した。

(アースドラゴン程ではないけど大きい…なら魔核を一撃で貫くまで)

魔物を魔物たらしめているのは体のどこかにある魔力を生み出す魔核という人間でいう心臓のような部位がある、それを貫かれればどんな魔物だって死ぬ、だがそれを壊すのは困難を極める何故なら強い魔物程魔核は硬く大きくなるからだ。だがそれは相対するものがスカハ・レヴィアタンでは無かったらの話だ。


スカハは力をより乗せる為に走りながら赤色の槍を背中の鞘に戻し金色の槍を両手に持った。

「幻槍流…」

スカハの槍に氷の粒を含んだ膨大な魔力が螺旋状に収斂された。

(この魔槍の力は恐らく《貫通》なら方法は簡単、魔槍の魔力を引き出し突く、力を貸して)

スカハは魔槍を握り締めた。


《承知した、我が主よ》

そんな声が響いた瞬間槍に纏ったスカハの魔力に金色の魔力が混ざったのを感じた。


「氷穿」

スカハが突いた槍の延長線上に氷が伸びて二体の魔物の魚でいう胸の部分を貫いた。


「「シャァ!?」」

二体の魔物は僅かな悲鳴を上げて沈黙した。

それと同時に空が輝いた。





(何故か翼からの魔力が止まらないだけど!?)

スカハが海に降り立った瞬間メリアも銀光剣を握り締めて大きいサメの魔物と戦いながら内心混乱してた。


鎧をつけてから背中の翼からの魔力供給が止まらないのだ、既に自分の体内魔力の倍は供給されている。

(この鎧が理由?、分からないけど状況的にそうとしか考えられないわね、魔力を供給してくれるのは助かるんだけど制御が大変!)

際限なく流れこんでくる魔力は常人なら死んでしまう程だ幼い頃から鍛えてきた魔力操作技術がなかったらとうに死んでいる。


(冷静に考えるのよメリア・ファフニール、この鎧の名前は何?、銀光装ルナリア、私の前世は記憶は無いけど天使のラミエル様)

天使の象徴はなんと言っても背中に生える翼だ、今の私は人間、天使では無いけれど魔法で擬似的に再現しているのだ。


(まさか天使に近づいているとか?、でも鎧を着けただけよね?、ん?、待って)

メリアは戦いながらふと銀光剣を見た。


(銀光剣は元はラミエル様の武器、もしかしたらこの剣を使ってラミエル様が自分の力を取り戻そうとしたとか、いや前世の自分なんだろうけど、試してみるか)

メリアは飛光剣を数本召喚してサメの魔物に突き刺し真上に飛び上がった。


("私の中の《光》よ・広がれ・集え・翼となれ・血となれ肉となれ・私だけの魔法・輝銀天使(ラミエル)”)

自分の内の光を見る内に自然と詠唱していた。



「な、なんだあれ?」「ーーー」

甲板の船員が空を見て作業も忘れて呆然と呟いた。俺も驚いている。


そこには頭の上に銀の輪っかを付け背中から三対六翼を生やして全身が銀色に輝くメリアがいた。


「"光よ”」

メリアが呟くと光の巨大な線がメリアの両脇から撃たれ海面にいた魔物を貫いた。


「天使様が降臨なさったのか?」

誰かが呟いた。


「よっと!、討伐完了よアレス」

メリアは全身を銀光で輝かせながら甲板まで降り立ちいつものような笑みを浮かべて言った。


「メリアだよな?」

俺は先程の光景からついそうなことを言ってしまった。


「魔法使ったら何か凄い事になったけど正真正銘あなたのメリアよ」

「ーーー」

銀色に輝くメリアは現実感を失わせる程の美しさがあっただからかメリアが遠い存在になったように感じた。


「ん、その顔は信用してないわね、私はラミエル様じゃなくてメリアなんだから」

「!?」

メリアは船員たちが見ている前で俺にキスしてきた、それもいつものような唇と唇を合わせるキスでは無く舌を絡める濃厚なやつだ。

「私はメリア・ファフニール、アレスの恋人よ、何処にも行かないわよ」

「ごめん、そんな当たり前のことを忘れるなんて俺はダメな奴だな」

俺は情けなくなりメリアの顔が見れなかった。


「ダメ、なんかじゃないわよ」

「え?」

「アレスはかっこいいんだから」

若干顔を赤くして言うメリアは先程の美しさとは打って変わってとても可愛く見えた。


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