二十九話 龍星の目覚め
アレスがアースドラゴンに吹き飛ばされた直後。
アレスは森の木々の一つに衝突していた。
(やばいな、魔導服のお陰で即死こそなかったが正直言って限界だ、内臓がダメージを受けてる)
アレスは辛うじて動く頭でアースドラゴンを見た。
銀色の天使が見えない、もしかしたらやられてしまったのか?
「メ、リア」
俺は恋人の名を呟いた。
(死ぬのか、俺は)
アレスがアースドラゴンに受けたダメージはそれ程のものだった。
(父さんの月夜を折っちまったな、父さんに知られたら拳骨一発で済むかな)
アレスは父ガランに月夜と龍星を貰った時のことを思い出した。
「父さん、月夜は名刀だって一目で分かるけどこの龍星は変な力を感じる、なんなんだコレは?」
俺は鞘から抜いた灰色の刀身の刀を見て言った。
「それは《妖刀》だ、今は眠ってるがな」
「《妖刀》?、眠ってる?」
俺はよく分からなかった。
「俺たちが敬愛する初代バハムート、メビウス様が使っていた刀らしいぞ」
父さんはなんでもないように言った。
「はぁ!?、何でそんな物を俺に?」
「その刀は持ち主を選ぶのだが初代様以降誰も目覚めさせられなかった、もちろん俺も含めてだ」
「父さんが目覚めされられなかったのに何で俺に?」
俺はますます分からなくなった。
「お前は今こそ俺より弱いが外の世界に行き十年も経験を積めば俺を抜くだろう、簡単に言うと俺は息子のお前に期待してるのさ」
そう言って父さんは俺の頭を乱暴に撫でた。
俺はそれがこそばゆかった。
「大切な人を作り、龍星に認められる男になれ、アレス」
父さんは優しくそう言った。
(大切な人、メリア、誰よりも好きだ)
俺の脳裏に銀髪の少女が浮かび上がった。
(大事な仲間、スカハ、槍が誰よりも好きな奴)
俺は捻れた二本の角を持つ魔族の少女を思い出した。
(死ねない、こんな所で俺は死ねない!)
だが俺の心に反して体は鎖に繋がれたように動かない。
(おい、龍星お前は何で眠っているんだ?)
俺はこんな時でもうんともスンとも言わない左手の灰色の刀を思わず見た。
(お前は初代バハムート様と一緒に戦った刀なんだろ?、俺に一欠片でも初代様ような力があるなら、今だけでいいから力を貸してくれ!)
俺は龍星の柄を握りしめた。
(今だけでいいんだ!、俺はメリアたちを助けたい!こんな所で伸びてる場合じゃないんだよ!)
俺は心の中で叫んだ
『仲間を思う心』『その為なら自らを顧みない』
『瀕死の状態で微塵も諦めない』『強欲な人間だ』
『だがそれも面白い』『メビウスのような男』
『流石は神に気に入られただけはある』
(!?)
突然八つの声が頭の中に響いた。
気づくと白い世界におり目の前には八つの頭を持った蛇のような生き物が居た。
(精神世界か、お前は何者だ?)
俺は目の前の生き物に問うた。
『我?』『我らは大和の神獣』
『タケルの盟友、メビウスの刀』
『メビウス以外に使わせる気は無い』
『だがその心メビウスに似ている』
『どん底に落ちても諦めない心』
『『『『『『我らはヤマタノオロチ』』』』』』
八つの声が同時に喋った。
(ヤマタノオロチ?、お前は龍なのか?)
『その通りだ』『あっているぞメビウスの子孫』
『龍の力を持つだけはある』
『流石は暴天龍の加護を受け継ぐ者』
『それでこそメビウスの子孫だ』
(それで俺を認めたのかヤマタノオロチ?)
なんかいろいろ喋ってた見たいだが俺は聞いた。
『まだ分からんから貴様を試そう』
『これを抜いてみよ』
『耐えられなかった死ぬだけ』
『コレは試練だ、メビウスの子孫よ』
『貴様が我らを使うに相応しいかどうか』
目の前に鞘に収まった刀が現れた。
(これを抜くのか、どうせ死ぬなら全てやり尽くした後だ!)
俺は迷わず刀を掴み抜こうとした。
(!!!!!???)
瞬間全身を想像を絶する痛みが貫いた。
今まで受けたどんな傷より痛い。
まるで体が作り替えられるような感覚。
(意識が遠のきそうだ)
俺という存在を塗りつぶすそんな感覚。
最後に思ったのは美しい銀髪の少女、メリアだった。
(俺は死ねない!)
俺は必死に意識を繋ぎ止め己を叱咤し痛みに耐えた。
(こんな所で倒れる訳には行かないんだ!)
俺は鞘から完全に刀を抜いた。
『耐えたぞ』『予想外』『真に人族は面白い』
『認めよう』『歓迎するぞ新たなる使い手』
『『『龍星を使いこなして見せよ、アレス』』』
ヤマタノオロチたちの声が聞こえ俺の意識は先程の森に戻ってきた。
俺の全身を貫いた痛みは消え去りアースドラゴンから受けた傷も塞がっていた。
「コレは一体?」
(闘気と魔力が漲る、まるで生まれ変わった見たいだ)
俺の左手には蒼色の刀が握られていた。
「なるほどな、認めてくれたのか龍星」
俺は全てを理解した。
「悪い父さん、月夜を折っちまった、絶対に直すから勘弁してくれ」
俺は地面に落ちた折れた月夜を鞘に収めた。
『ガアアアアア!』
「さてと、行くか、"龍闘気解放”」
俺は《神龍の加護》を使い視界に銀色の天使と青髪の槍使いとアースドラゴンが映った。
(どうやら魔導服も進化したみたいだな、今ならずっと思ってた事が出来そうだ)
俺は魔導服の裾から魔力を吹き上げて飛び上がった。
ちょうどアースドラゴンが尻尾でメリアたちを攻撃しようとしていた。
俺は《蒼の雷眼》を使い蒼雷を全身に纏って加速し龍星を両手で構えた。
(八つの頭を持つ龍か、その力試してみるか!)
俺は闘気と龍星の魔力を刀に纏い振り下ろした。
(闘魔抜刀 龍閃!)
八つの巨大な斬撃が飛びアースドラゴンの尻尾を八等分にして斬り落とした。
『ガアアアアアアア!?』
「全く危うく死にかけたぞ、この借りはきっちり返すからな」
俺は初めて受けたであろう想像絶する痛みにもがくアースドラゴンを見下ろしながら言った。
「「アレス!」」
二人の少女が俺に抱き着いてきた。
「おわっと!」
メリアはともかくスカハは飛べないので咄嗟に腰に腕を回した。
「本当に心配したんだから!」
メリアは今にも泣きそうだ、俺はゆっくり地面降りた。
「てっきり死んだかと思った」
スカハは珍しく少し声が震えている。
「悪かったよ」
俺は龍星を地面に刺し二人の頭を撫でた。
「全然足りない!もっと撫でて」
「私も」
二人が中々離してくれない。
(騎士団の人達が呆然としてるぞ)
騎士たちは目の前の光景に思わず目を擦った。
(((あの冒険者、アースドラゴンの尻尾を斬った!!?)))
全く歯が立たなかったアースドラゴンの肉体を成人してまもない青年が斬ったのだ、思わず呆然としても仕方ない。
「二人共まだアースドラゴンが残ってるぞ」
「そうだったわ」
「うん、忘れてた」
二人は顔を上げ思い出すように言った。
(おいおい)
俺は思わず苦笑した。
「一気にぶっ飛ばすわ」
「同意」
二人は翼を広げ氷を纏い魔力を吹き上げた。
「賛成だ」
俺は龍星を左腰に移した蒼色の鞘に仕舞い抜刀姿勢で構えた。
三人の魔力で周囲の地面が揺れ空気が震えた。
「「「ふっ!」」」
三人は同時に地面を蹴り飛び上がった。
「闘魔抜刀…」
アレスの龍星の鞘に膨大な闘気と魔力が収束した。
「”我が光は銀の光なり・全てを斬る銀の剣なり…」
メリアの銀光剣がより一層銀色に光った。
「”幻槍に貫けぬもの無し・我が槍は万物を貫く…」
スカハの金色の槍に氷と水が螺旋状にまとわりついた。
「龍閃!!」
「極大白金大剣”!!」
「幻槍流奥義 霞の槍”!!」
三人の最大の攻撃がアースドラゴンの顎の付け根に当たった。
先程アレスとスカハが鱗を砕いた為肉が露出していたからだ。
『ガアアアアアアアアアア!』
アースドラゴンは迎え撃とうしたが到底間に合わなかった。
「「「はぁぁあ!」」」
そのまま三人の攻撃はアースドラゴンの首を斬り進みそのまま斬り落とした。
「討伐完了だな」
俺は二人の手を掴み地面に向かってゆっくり降りながら言った。
「ふふ、そうね」
メリアは俺の手をギュッと握った。
「私の槍が一番♪」
スカハはなんだかとても満足そうだ。
「「「!!!!」」」
アースドラゴンの首が地面に落ちる音ともに下の方から騎士たちの歓声が聞こえた。




