二十八話 少女たちの覚悟
「総員!、魔法師を守れ!」
「炎と風の複合魔法が効いてないのか!?」
森を抜けるとアースドラゴンを囲むように騎士と魔法師が陣形を組み怒声を飛ばしながら攻撃していた。
「アレス!、アイツどうやら魔法、というより魔力そのものを弾く見たいよ」
上空からメリアの声が聞こえてきた。
「メリア!、岩が飛んでくる!」
メリアに掴まっているスカハが叫んだ。
俺の頭上高くを岩群が通り過ぎた。
前に進んでいたメリアは四枚の翼で急制動をかけて急上昇して避けた。
「ありがとうスカハ、危なかったわ」
「気にしないで」
「総員!、土魔法が来るぞ!、盾を構えろ!魔法師は防御魔法を張れ!」
騎士の声が聞こえた瞬間大地が揺れ大地が槍のように伸びて騎士団を攻撃していた。
(中々に混沌しているな)
俺は周りを見渡してそんなことを思った。
「土魔法の範囲が広くてアースドラゴン本体に近づけない」
上から降りてきたスカハが言った。
「みたいだな、魔法を弾くなら剣で直接斬るしかないが…」
『ガアアアアアアア!』
俺の声を潰すようにアースドラゴンが咆哮した。
(メリアを必要に狙ってるな、森を薙ぎ払ったしメリアを一番の脅威だと思っているのか?)
アースドラゴンは四枚の翼を巧みに操り空を飛ぶメリアを巨大な岩を飛ばして攻撃していた。
「スカハ、ヤツの鱗はおそらく並の剣や槍じゃ傷もつかないと思う」
スカハは黙って俺の言葉に耳を傾けた。
「なら、一点突破だ、同じ鱗を二人で狙うぞ」
「なるほど分かった」
スカハは二本の槍を構えた。
俺も月夜と龍星を抜いた。
「メリア!!、これから攻撃するそのまま注意を引き付けてくれ!」
俺は声を張り上げて空中のメリアに言った。
「分かったわ!」
メリアに俺の声が聞こえたのかメリアは力強く頷いた。
(変化した大地が邪魔だな)
俺は槍状に変化した大地を睨みつけた。
すると上から飛光剣が降り槍状の大地を砕いた。
俺が思わず上を見ると四枚の翼を煌めかせ銀光剣を構え五十を超える飛光剣を出したメリアが居た。
「伝説の天使のようだ」
その言葉は一体誰が呟いたのか。
「あなたの相手は私よ!」
メリアは剣をあちこちに飛ばしてアースドラゴンを攻撃した。
「スカハ行くぞ!」
「うん!」
俺とスカハは同時に地面を蹴りアースドラゴンに向かって走った。
(いくらメリアでもあの数の飛光剣を出してたら魔力が持たない、メリアの魔力が尽きる前に絶対に斬る!)
俺とスカハはアースドラゴンに取り付き巨大な足を駆け上がった。
『ガアアアアアアアア!』
アースドラゴンは足を登る俺たちに気づかずメリアに攻撃し続けていた。
俺とスカハは二本の刀と槍の先に魔力を収束させた。
「魔刀技 風魔!」「一ノ槍 螺穿!」
アースドラゴンは巨大なトカゲの姿をしており俺とスカハは顎の付け根の鱗を同時に攻撃して鱗を砕いたがスカハの二本の槍はひしゃげて折れてしまった。
『グガアアアアア!?』
アースドラゴンは先程のような咆哮ではなく明らかに悲鳴を上げた。
「冒険者が痛撃を与えたぞ!」
騎士たちの歓声が聞こえた。
『ガアアアアア!!!』
「!?、スカハ危ない!」「!?」
落下する俺たちに怒り狂ったアースドラゴン前足の爪が迫った。
「っっっ!、がはぁ!?」
俺は咄嗟にスカハを突き飛ばして月夜と龍星で受けたが純粋な質量差には耐えきれず月夜が半ばで折れ爪がアレスにめり込んで吹き飛ばした。
ドーン!!
アレスが森の彼方まで吹き飛び大きな衝撃音が響いた。
「「アレス!?」」
アースドラゴンを攻撃していたメリアと落下するスカハはアレスの名を叫んだ。
『ガアアアアアアア!』
アレスが吹き飛ばされて一瞬意識が削がれたメリアにアースドラゴンの吐息が放たれた。
(しまった!?)
メリアは咄嗟に四枚の翼を盾にしたが全ては防げず撃ち落とされてしまった。
メリアは地面に吸い込まれるように落下した。
「メリア!」
上手く受け身を取って地上に降りていたスカハが勢いよく走り受け止めた。
「あ、ありがとう、スカハ」
メリアは辛うじて礼を言った。
「喋らないで」
スカハはボロボロのメリアを一瞥した後アースドラゴンと戦う騎士団を見た。
(アレスとメリアが吹き飛ばされて相当動揺してる)
騎士団はアレスとメリアがやられたことにより確実に足並みが乱れていた。
(私も向かいたいけど槍が無い、このままだと全滅する)
スカハは冷静に考えこの状況が非常に不味いと考えていた。
(それにメリアの状態が酷い)
メリアは魔法が解け翼が無くなりいつも着ているドレス甲冑もボロボロだ、いつもなら思わず嫉妬してしまう艶のある肌も土に汚れている。
「くっ、こんな所で諦めてられないのよ」
メリアはボロボロの体に鞭を打って起き上がった。
「メリア」
スカハは心配そうな声を出した。
「だ、大丈夫よ、コレがあるから」
メリアはスカハにそう言ってアイテムボックスから霊薬を取り出して飲み干した。
メリアの体が淡く光り傷が塞がった。
「ーーー」
スカハは霊薬の回復力に目を丸くした。
「スカハはこれを使って」
メリアはアイテムボックスから金色の槍を取り出した。
「これは魔槍?」
スカハはメリアが取り出した槍に魔力が内包されていることにすぐ気付いた。
「そうよ、迷宮で手に入れたの、槍折れちゃたでしょ使って」
メリアは立ち上がり言った。
「分かった」
スカハは金色の槍を受け取った。
(よく手に馴染む)
スカハは槍が自分の一部になったように感じた。
「凄いわね、一瞬で槍に認められたのね」
メリアが声音に驚きを乗せて言った。
「それでどうする」
スカハは難しいことは聞かず単刀直入に聞いた。
「アレスは心配よ、恋人だし誰よりも助けに向かいたい、けどひとまず騎士団を助けるわ」
メリアの瞳には絶望は浮かんでいなかった。
(凄く強い人、腕っ節だけではなく心が強い)
「メリアはアレスのことを信じてる」
スカハはメリアの根底にあるもの感じた。
「そうよ、彼はこんな所で倒れる男じゃないんだから!、"銀光剣よ”」
メリアは右手に銀光剣を出現させた。
(それにアレスの魔力は感じるわ、彼は死んでない、必ず戻ってくる)
メリアの中には確信があった。彼は戻ってくると。
「アレスのことは心配だけどメリアがそこまで言うならメリアの指示に従う」
スカハは槍を構えた。
「"我が光は我と共に・光翼”」
「"氷よ・我が身を覆え・氷鎧”」
二人は己の魔法を発動させた。
「た、隊長!どうしますか!騎士たちの足並みが乱れて」
言葉の途中で岩が降ってきた。
騎士は自分の死を感じた。
(俺もここまでか!)
だがその死は来なかった。
「はぁぁ!」
岩が四枚の翼を生やした銀髪少女に斬られたからだ。
騎士たちを攻撃していた大地が変化した槍も瞬く間に凍り付いた。
「"氷天大地”」
槍を構えた青髪の魔族の少女が現れた。
「アドモス王国騎士よ照覧なさい!、銀鉄級冒険者メリア・ファフニールが斬り込むわ!」
伝説の天使ような少女はそのまま銀色の剣を振りアースドラゴンの前足の鱗を数枚斬り裂いた。
「幻槍流に貫けないものは無い、修羅螺穿!」
魔族の少女が突っ込み金色の槍の乱れ突きで数枚の鱗を砕いた。
『ガアアアアア!?』
メリアは手応えを感じていた。
(やっぱり闘気なら魔力を弾く鱗を斬れる!)
メリアは魔力が効かないならと少しずつ使えるようになってきた闘気を銀光剣に纏い斬ったのだ。
(スカハは魔槍の効果かな?、よく分からないけど)
スカハの槍も鱗を貫いていたのだ。
「スカハ、連携するわよ!掴まって!」
「了解!」
スカハは飛び上がるメリアの手を掴んだ。
「脇の鱗を切り裂くわ」「うん!」
メリアは飛び岩を避けながら銀光剣を片手で構えた。
スカハも槍を銀光剣と同じ方向に向けた。
「「はぁぁあ!」」
二人の剣と槍がアースドラゴンの胴体の脇を横一文字に斬り裂いた。
アースドラゴンの鱗は無惨にも切り裂かれて血が吹き出た。
『ガアアアアア!』
怒り狂ったアースドラゴンは尻尾で空を飛ぶメリアたちを撃ち落とそうとした。
だがそうはならなかった。
『ガアアアア!?』
「全く危うく死にかけたぞ、この借りはきっちり返すからな」
そこには黒い魔導服の裾をはためかせ空中に浮かび背中に八つの首を持った龍の幻影を浮かべて紅色の覇気と蒼雷を纏って蒼色の刀でアースドラゴンの尻尾を八等分に切り落としたアレスが居た。
「「アレス!」」
少女たちは声音に嬉しさを多分に含んで叫んだ。




