二十六話 エレンとの語らい
メリア視点です。
アレスとスカハが模擬戦をしている間メリアはギルドの応接室でアドモス王国第二王女エレネシアと会話をしながら紅茶を飲んでいた。
「なるほどノイスで冒険者になったのですね」
メリアは”エレネシア、愛称はエレン"と別れた後のことを話していた。
「そうよ、あの街でアレスとも逢えたしね」
メリアはアレスとの初対面を思い出して小さく笑った。
「本当に変わりましたねメリアは」
エレンは机にカップを置き言った。
「え、そうかな?」
「ええ、学院にいた頃も今のように明るく元気に振る舞っていましたが内心何処か他人に認めて貰いたいと思っているように思えました」
「あはは、エレンにはバレてたみたいね」
メリアはイタズラが見つかった子供のように笑った。
「ですがわたくしには貴方に何もすることが出来なかった、それをずっと謝りたかった、ごめんさいメリアあの時何も出来なくて」
エレンは深く頭を下げようとした。
「待ってエレン、貴方の悪い所が出てるわよ」
私はそんなエレンが見たくなくて止めた。
「こう言っちゃ悪いけどあの国でエレンが何か言おうが行動しようが変えられることはなかったわ、確かに学院では辛かった事もあったけどエレンが居たおかげで寂しかった事なんて無かったのよ」
メリアはソファーから立ち上がりエレンの肩を持って言った。
「だから貴方が謝る必要は無いわよ」
「メリア貴方は…」
エレンは言葉を呑み込んだ。
「本当にアレスさんには感謝しなければいけませんね」
エレンはそう言って微笑んだ。
「なんでそこでアレスの名前が出てくるのよ」
メリアは自然と口調が不機嫌な感じになってしまった。
「いえ、何でもないですよー」
「明らかに誤魔化してるわよね」
メリアが問い詰めるように言った。
「メリアはいい人をつかまえたなーと思っただけですよ」
「あ、そうかエレンは王女様だもんね」
「メリアわたくしが王女だという事忘れてません?」
エレンは片目を瞑って言った。
「そ、そんなことないわよ…多分」
「多分ってあなたね」
エレンが睨んできた。
「そ、それよりも何でさっき騎士の人と喧嘩してたの?」
「露骨に誤魔化しましたね、まぁ良いですけど、私がアースドラゴン討伐に赴くのに反対されましてね」
「それで喧嘩になったと、でもエレンも一緒に討伐に行ってくれるなら百人力なのに…」
メリアは残念がるように言った。
「この国の貴族たちは臆病なもの多くて困りますわ」
「なるほどね、その意志を国王様は無視出来なくて暴風姫として周囲に轟いてるエレンと言う戦力を王都から動かせないってことね」
メリアは納得するように言った。
「まぁ、全くもってその通りですよ、そのような弱い意志ですからいつまで経っても帝国に国力が及ばないのですよ」
エレンは紅茶を再び飲んで言った。
「ははは、流石に千年前から存在するザハーク帝国に追いつくのは無理があると思うけどね」
「それは分かっていますがそんなことを言っているから何時になっても届かないのですよ」
エレンは溜息を吐くように言った。
「まぁ、エレンなりに頑張りって、私も冒険者を頑張るからね」
「ではいざという時に頼らせてもらいますね」
「いいけど私はアレスやスカハの意見も尊重しないといけないんだからね」
「あ、一つ思ったのですが…」
エレンは人差し指を立てて言った。
「スカハは魔族なのですか?」
「そうだけど何か気になることでもあるの?」
メリアは首を傾げて聞いた。
「ええ、ザハーク帝国では皇帝が代替わりしてから魔族狩りが行われているという噂を聞いた事があるのですよ」
「魔族狩りですって!?」
メリアはその物騒な単語に驚いた。
「はい、魔族は千年前の大戦時に活躍しましたが戦争の折に数を大きく減らし現在は北の通称暗黒大陸に住んでいると言われていますがこのラース大陸に全く居ない訳ではないのですよ」
「つまりそれって…」
「帝国は人間至上主義が盛んな国ですから魔族という種族を駆逐したいのかもしれませんね」
「でも魔族はとても強い種族の筈よ幾ら帝国が強くとも簡単には駆逐されないわ」
メリアは辛うじて反論した。
「昔はそうでしたが大きな戦いが無くなれば力は衰えますわ」
「そんな…」
メリアはその事実に言葉を失った。
「ですからもし帝国に行く場合は十分に気を付けてくださいね」
「ええ、分かったわ、心に留めておくわ」
メリアは応接室を出てアレスたちが居るギルドの練習場に向かっていた。
(スカハは槍が好きという事以外自分の事をあまり話してないけどもしかしたら辛い過去があったのかもしれない、けど私とスカハは会ってまだ数日、他人の懐にいきなり飛び込むのは失礼だわ、スカハが自分から話してくれるまで待つしかないわね)
メリアは内心そんなことを考えていた。
「おい、スカハ!、今のは何だ!?」
「アレスこそ!、魔眼なんてズルい!」
アレスとスカハが言い合う声が聞こえてきた。
(何やってるのかしら?)
メリアが不思議に思って練習場に入った。
練習場では氷と蒼雷がぶつかり合い衝撃波が飛び交っていた。
「えー、どういうことなのこれ?」
メリアは目の前の光景の非常識さに呆然と呟いた。
(よく見るとスカハって氷を纏って戦えるんだ)
メリアは逃避気味にそんなことを思った。
「お、おい、あんたあの二人のパーティーメンバーだろ、止めてくれアースドラゴンに挑む前に死ぬわ!」
練習場の横で腰を抜かしていた冒険者が私に向かって叫んだ。
「あ、そうね確かにこのまま放置は駄目か、二人とも!、帰るわよ!」
私は大声で二人を呼んだ。
「ん?、メリアか?」
「そうみたい」
二人は同時に動きを止め反応した。
アレスの刀がスカハの頭の上、スカハの槍がアレスの喉元でギリギリ止まっていたが。
「二人ともなんで本気になって戦ってるのよ」
メリアは呆れを込めて言った。
「いや、《蒼の雷眼》しか使ってないし全然本気じゃないぞ」
「私も氷鎧を使っただけ」
二人は魔力を使っていないので本気では無いと言い張った。
(確かに使ってなかったけどね、この二人は変な所で似た者同士ね)
メリアはその事実に嬉しくなった。
「はぁ、とにかく帰るわよ」
「王女様とはもういいのか?」
アレスが月夜を鞘に収めながら言った。
「ええ、中々楽しかったわ、けど…」
メリアはスカハの捻れた二本の角を見てさっきの話を思い出してしまった。
「ん?、私の顔に何か付いてる?、しまった、ローブが!?」
スカハが自分の顔を触り途中でローブが外れていることに気付きローブを被り直そうとした。
「ちょっと待て、スカハ」
それをアレスが止めた。
「アレス?」
スカハがアレスのことを不思議そうに見た。
「スカハの青髪にはこれが似合うんじゃないか?」
アレスはアイテムボックスから水色の髪飾りを出してスカハの前髪に付けた。
(あれは確か宝箱に入っていた物ね、髪飾りなんてよく覚えてたわね)
宝箱には細かい魔装具や魔道具から大きな物まであったので流石のメリアも全部は覚えていない。
「これは?」
スカハは髪飾りを指して言った。
「迷宮で手に入れた魔装具だけどスカハに似合うと思ってな」
確かにメリアの目から見てもスカハの青色の髪にとても合っているように思える。
(アレスって意外と女心が分かるのかも?)
「ん、ありがとう嬉しい」
スカハは髪飾りを触り嬉しそうに言った。
「それじゃあやりたい事も出来たし明日に備えて宿を探して寝るか」
アレスは歩き出して言った。
「賛成よ、スカハ行きましょう」
「うん、今行く」
スカハはローブを被らず歩き出した。
ちなみにアレスにどうしていきなり髪飾りなんてプレゼントしたのか聞いたら
「女の子は可愛く着飾るのが普通だって母さんが言ってたし、スカハに似合う髪飾りをたまたま持ったしな」
「なんで私にはないの?」
思わず拗ねるような口調になってしまった。
「え?、メリアはなくても可愛いだろ?」
アレスが恥ずかしからずに言ったので私は思わず顔が熱くなってしまった。




