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二十五話 模擬戦

「メリア、あの…」

冒険者たちが出て行った後緑髪の人がメリアを見て呟いた。


「改めて久しぶりね、エレン」

メリアは緑髪の人の前に行き言った。


「本当にお久しぶりですメリア!」

緑髪の人はメリアに思っいっきり抱きついた。


「ふふ、相変わらずね」

メリアは優しく微笑んだ。


「水を差すようで悪いが二人はどういう知り合いなんだ?」

俺は疑問に思っていた事を聞いた。


「私達はグラト魔法学院の同級生だったのよ」

(確かグラト魔法王国の魔法師育成機関だったけか?、同期ってことは結構偉い人なのかな?)

「あ、そうでした、お初にお目にかかりますアドモス王国第二王女エレネシア・スレイ・フォン・ファウルーナ・アドモスと申します」

緑髪の少女エレネシアは佇まいを正しスカートの裾を摘み小さくお辞儀した。


「王女!?」

俺は驚き思わず後ろに下がってしまった。


「そんな固くならなくて大丈夫よアレス、エレンは良い意味で王女に見えないからね」

メリアが気にしないでといった風に言った。

(いや気にするだろこの国の最高権力者の娘だぞ?)


「私はスカハ、よろしくエレネシア」

スカハは物怖じせず手を出し握手を求めた。


「丁寧にありがとうございます、スカハ様」

「様いらない、スカハで良い」

スカハは首を横に振り言った。


「そうですか、ではよろしくお願い致しますねスカハ」

王女様はスカハの握手に応じるのだった。


「それで貴方は…」

「彼はアレスよ、私のこいび…」

メリアが王女様の遮り大きな声で余計な事を言いそうだったので口を指で塞いだ。

「むむ」

「どうも冒険者のアレス・バハムートと言います」

俺は自己紹介するのだった。


「へぇ?」

王女様は俺の事をじっと見てきた。

「な、何ですか?」

「いえなんでもないですよ、メリアを助けてくれてありがとう」

後半の言葉は俺にだけ聞こえるように言った。

「!?、何故それを?」

俺は思わず聞き返してしまった。


「メリアの纏う雰囲気と貴方を見る目を見れば一目瞭然ですわ、学院で見た時よりも美しくなっていますし」

もしかしたらこの王女様はメリアの境遇を知っていても何も出来なかった自分が許せなかったのかもしれない。


「それにしてもこの短時間でよく分かりましたね」

「あら、わたくし人を見るのは得意ですのよ」

そう言って王女様は小さく微笑んだ。


「友人を救ってくれた借りは返します、何かあったら遠慮なく()()()を頼ってくださいね」

(この国と来たか)

「機会がありましたら」

俺は小さく笑い言った。


「メリアは王女様と話したい事もあるだろうし残るか?」

俺はメリアの口から指を離し聞いた。


「ぷはぁ!、良いの?」

「もちろん王女様が良かったらだけど…」

俺は王女様を見て言った。


「構いませんわ、ギルドの応接室でお茶会でもしましょうか、ギル用意してちょうだい」

王女様は後ろの騎士に向かって言った。


「承知しました」

騎士はそう言って部屋から出て行った。


「それじゃあ俺たちは明日に向けてギルドの練習場で模擬戦でもするか?」

俺はスカハに聞いた。


「いい、賛成、大賛成!」

珍しくスカハは喜んだ。


俺とスカハは会議室を出てギルド練習場に向かっていた。

「エレネシアは強いと思う」

スカハがおもむろに言った。


「スカハもそう思ったか、確かに魔力量は常人のそれじゃなかったなどこまで操作出来るのかは流石に分からなかったけど強いのは確実だな、メリア程の魔視眼があれば属性も分かった思うけどな」


王女様の魔力量は常人を十とすると三万は軽く超えていたちなみにメリアはさらに上の四万、俺とスカハが二万といったところだ。もちろん種族によっても差があるが魔力量に個人差があるとはいえ限度というものがある。ちなみに俺が人族なのに魔力が魔族のスカハと同じくらい高いのは《神龍の加護》を受け継ぐバハムートの一族だからだ。


「でも強い人は好き」

「そうなのか?」

「うん、魔族には強者を尊ぶ人が多い、私もその一人」

スカハは背中の槍を揺らしながら言った。


「へぇー、魔族にはそんな風習があるのか」

「だからアレスの事も好き」

スカハは紫紺の瞳で俺の目を見て言った。


「そ、そうか、ありがとうな」

俺は動揺して思わずそんな言葉しか出てこなかった。


その後は無言で練習場に向かったがよく冷静に考えたらスカハは強い人が好きと言う意味で俺自身が好きではないということで俺は内心自己完結させた。



練習場に向かうと先程会議室に居た冒険者たちをチラホラと見かけた。

「流石に本気じゃやらないけど寸止めで身体強化無しって事でいいんだな?」

俺は月夜を抜き確認を込めて言った。


「うん、それでいい」

スカハは自分の槍を抜き言った。


「ーー」「ーー」

俺は月夜を正眼に構えスカハは槍を両手で持ち俺の心臓を狙う位置の中段に構えた。


周囲に緊迫した空気が張り詰めた。


「おい、あれ」「ああ、凄い集中力だな」

周りの冒険者達もアレスたちに注目し始めた。


「はぁ!」「ふっ!」

二人は同時に地面を蹴りアレスは月夜を袈裟斬りに振り下ろしスカハは身を屈め月夜の一撃を槍の先で受けた。


耳を(つんざ)くような金属音が響いた。


「!?」

俺はスカハの神業のような受けに驚いたが頭を切り替え月夜を振り連撃を繰り出した。


「ふっ、ふっ!」

スカハをそれを全て槍の刺突で防いだ。


「おいおい、何者だあの槍使い?」

「連撃を全て槍の先で受けやがったぞ」

周りの冒険者たちも騒いでる。


「凄い動体視力だな」

俺は一度下がり呼吸を整えながら言った。


「そういう訓練をしただけ、アレスももっと()()()でしょ?」

「言ってくれるな」

俺はそう言ってゆっくり歩き出した。


先程のような素早い踏み込みではなくまるで地面を滑るような歩き方だ。


「?、!?」

スカハが戸惑いを感じた瞬間アレスが視界から消えたように見え左側から殺気を感じ反射的に槍の柄で受けた。


「流石」

アレスが一瞬で移動し月夜を袈裟斬りに振り下ろしたのだ。

(どういうこと?確かにアレスは視界に捉えていたはず)

スカハの内心の疑問を他所にアレスの連撃が襲いかかって来た。


「くっ!」

スカハは後ろに下がりながら槍を巧みに操りアレスの連撃を防いだ。


「バハムート流体術 幽玄の歩法」

アレスが連撃を繰り出す中呟いた。


「体の力を極限まで抜く事で急激な移動を可能にして相手の目を騙す技さ」

(なるほど、そういう事)

スカハはアレスの説明に納得した。


「やっぱりアレスは凄い!」

スカハは地面に槍を突き立て棒飛びの要領で飛び俺の後ろにまわり刺突を繰り出してきた。


「そっちこそ!」

俺はつま先で回転し月夜で槍を打ち払った。


「はぁ!」

スカハは打ち払われた勢いのまま回転し刺突を繰り出してきた。


「ふっ!」

俺は身を屈め月夜を鞘に収め勢いよく抜刀した。


激突の勢いで土埃が舞った。


「俺の勝ちだな」

不意にアレスの声が聞こえた。


「うん、完敗でも次は勝つ」

土埃が晴れるとスカハの首に月夜の刃が寸止めで止まっていた。


アレスはスカハの刺突を紙一重で躱しスカハの懐に飛び込み抜刀したのだ。


「いや、次も俺が勝つ」

俺は月夜を鞘に収めて言った。


「アレスは負けず嫌い」

スカハは槍を背中に戻しながら言った。


「そうか?、普通だと思うが?」

俺は飛んだ時にはだけたローブをスカハの頭に被せながら言った。

「でもそこも好き」

スカハは笑顔で言った。

「お、おう、ありがとう」

俺はスカハの顔が至近距離で映ったので思わず声がどもってしまった。


「それはそうと…」「うん」

周りを見渡すと冒険者たちが口を半開きにしながら固まっていた。


「気にせずもう一回模擬戦やるか」

「うん、賛成」

俺とスカハはとりあえず冒険者たちから目を背けるのだった。

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